タッチパネルの延長上。
静電容量式ガラス指紋センサー
株式会社ジャパンディスプレイ(以下JDIと略)が透明な静電容量式ガラス指紋センサーを開発した。
これはJDIがスマホやデジカメ向け液晶ディスプレイで展開している「Pixel Eyes」搭載の静電容量式タッチ入力技術を応用した技術で、「Pixel Eyes」ではガラス基板上で静電容量の変化が起きている場所を特定してタッチ操作を認識、処理しているところ、これをさらに進化させ指紋の凹凸による静電容量の変化を検出できるように改良し、その凹凸を高精度に読み取る事で、特定の指紋パターンの識別を可能にし、センサーを実現した。
言葉で言うとものすごく簡単に言えてしまうが、実際にはものすごい高精度かつ高速な処理を行わないと、この技術を指紋認識技術として使用できないのだが、今回それを実現した、という事である。
一般的に指紋センサーはシリコン製が主流なのだが、ガラスを使用する事で高い透明度を活かす事が可能になる。
液晶のバックライトやディスプレイなどと組み合わせて使うことで、液晶ディスプレイ上に指紋センサーを搭載する事も可能になると考えられる。
今回開発したセンサーは、0.45型の8mm角サイズで、階調数は256、解像度は160×160ドット、精細度は508dpiになる。
今後は別のサイズも拡充し、2018年度中には量産出荷可能になる見込みらしい。
これがもし…
このJDIが開発した静電容量式ガラス指紋センサーが昨年中に量産されていたならば、AppleはFace IDではなく、液晶表面にTouch IDを搭載して認証させていただろうか?
そもそも、AppleがiPhone10周年記念モデルを計画した時は、指紋センサーが液晶内部に搭載されるかも…という話があった。結局、その技術が遅れてしまったため、Appleは指紋認証をやめ、顔認証へと進んでいったのだろうが、時期的に間に合っていたならば顔認証ではなく、指紋認証にしていた可能性はあったはずである。
結局、顔認証にした事でアニ文字などという機能も追加する事が出来たのだが、結果から言えば認証精度が悪いとか、マスクをしていたらロックを外せないとか、そういう問題に発展していく事になった。
これがもし、指紋認証のままだったら、きっと今よりは売上台数も伸びたのではないかと思う。
進化した技術は魅力はあるかもしれないが、既存の技術を利用レベルで超えないとなかなか浸透しない。
今回JDIがこのセンサーを開発、生産する事で2018年モデルの新型iPhoneに搭載されるだろうか?
あくまでもFace IDに固執して、指紋認証は淘汰されるのだろうか?
個人的には指紋認証に戻ってくれた方が有り難いのだが。
もちろん他企業も…
今回はJDIの静電容量式ガラス指紋センサーの話をしているが、もちろん海外では他企業もディスプレイに埋め込む事ができるセンサーを開発している。
米Synapticsが昨年末に量産を開始した「Clear ID」という指紋認証センサーがあるが、これにしても昨年末に量産だったため、iPhone Xには間に合わなかった形になる。
先行して量産している事から、Appleがこの「Clear ID」を次期iPhoneに採用する可能性だってある。
既に中国のスマホメーカーが採用した例があるが、必要な時に画面上に指を置く場所を表示して、そこで認証するようなスタイルになるという。それで何ら問題なく認証が出来ているのだから「Clear ID」そのものの認証精度は決して悪いものではないと言える。
JDIの静電容量式ガラス指紋センサーは「Clear ID」と比較してどれぐらいメリットがあるのかが気になる所だが、Appleが採用するとなれば、それなりのメリットがないと意味がない。
JDIは次期iPhoneの廉価版のディスプレイに採用されるパネルを製造するかもしれないと言われている為、それと合わせて採用されたいところではないかと思う。
ま、こんな事を私も書いているが何か確証があって書いているわけではない。
恐ろしいのは、Appleの製品は何の情報も出てきていないところからでも予想されて広まるところにある。
日本企業もこれぐらい影響力のある製品を発売できる企業がもっと増えてくれればいいのだが…。