遂にNikonからもフルサイズミラーレス。
Zマウント
Nikonがフルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラを計画しているという話はかなり前から出ていた。
しかし、その姿に関する噂はなかなかリークされる事もなく時が過ぎていたのだが、この夏にいよいよかという噂が出てきて、8月23日に遂にその発表会にて公開された。
Zシリーズという、今までのDシリーズとは異なるシリーズ名を与えられたNikonのフルサイズセンサーミラーレスカメラは、搭載するマウントもZマウントという新規のマウントが与えられ、マウント内径55mmというとても大きな口径を持つマウントを採用した。
フランジバックは16mmと非常に短く、カメラ本体はとても小さくコンパクトに収まるデザインを採用している。
また、マウント内径55mmという大口径化で、開放F値F0.95のレンズ開発が可能になり、システムとしては今後発売するレンズに大いに期待出来る。発売されるカメラとしてはハイエンドの「Z7」と「Z6」の2機種が用意され、Z7は有効画素数4,575万画素、常用感度ISO64~25600といったセンサーを搭載する。Z6は有効画素数2,450万画素、常用感度ISO100~51200といったセンサーを搭載し、感度だけで見ればZ6が上回るが総合画質でZ7が上回るといった構成にしている。
両モデルとも、ファインダーは369万ドットの有機ELパネルを採用した電子ビューファインダーを搭載し、視野率100%、ファインダー倍率0.8倍、対角視野角37℃となっている。
またNikonとしては珍しく、カメラ内手ブレ補正(VR)を搭載し、シャッタースピード最大5段分の補正が得られる機構を内蔵している。この手ブレ補正だが、当然変換マウントを使う事で従来のFマウントレンズでも利用できるようになっていて、レンズ内手ブレ補正機能を持つレンズを繋げた場合は本体の機構と協調して動作するようになっているという。
価格はZ7のボディで44万円ほど。Z6のボディは27万円ほどで、今後さらなる低価格機を予定しているような動きもあるようである。
impress デジカメWatch
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1138249.html
個人的見解
詳細スペックなどは他でもいろいろ詳細が語られているので、そちらを見てもらうとして、今回のNikon Zシリーズを個人的にどう考えるか書いてみたい。
全体的なスタイルとしては、個人的にはあまり好きなスタイルではない、と思っている。
まぁ、最近のデジタルカメラ全体がそうなのだが、どうも昔からのカメラというスタイルからかけ離れてきているように見えていたので、今回のNikonミラーレスには原点回帰を願っていたのだが、中途半端にイマドキなデザインに纏められたスタイルで登場となってしまった。
昔ながらのスタイルとなると、もはやオリンパスしかそのスタイルを望めなくなっているのではないかとすら思えて、とても残念である。そういう意味ではオリンパスには今後もこのスタイルを貫き通して欲しいと思っている。
また、採用した記録メディアがXQDカードのみというのも戴けない。
プロが使用するものとしてはXQDカードでも問題はないのかもしれないが、ハイアマチュアやアマチュア向けを考えると、やはり入手製のよいSDカードの方が利便性は高い。メモリスロットがシングル仕様なので、それならばXQDカードスロットとSDカードスロットを設けるという手法もあったように思うのだが…。
それと、このZシリーズは純粋にSonyのαシリーズと真っ向勝負する機種として登場していると思うが、その割に価格的には不利で性能的にもどっこいというのが現時点での状態。未来を見据えたシステムとして考えているにしても、打倒Sonyという旗印の下で発表された製品としては、今一つ弱いように思えてならない。
これらを考えると、今回のZ7とZ6は何となく実験的要素を多分に含んだ、世間の反応を見るための製品という感じがしてならない。
もちろん、Nikonはそんな事絶対に認めないだろうし、Nikonが本気で取り組んだ新製品だと言えばそれが絶対的に正になるのだが。
スペックだけでは語れない
ただ、そうは言いながら「やはりNikonか」とも思える部分もある。
カメラはスペックだけでは語れない部分があり、Nikonはそういった部分は非常に好感度が高い。
今後のレンズの出来映え次第かも知れないが、最終的なアウトプットである撮影物の善し悪しで言えばNikonらしい良さが際立つ可能性がある。
このあたりは、使う人が増え、満足度がどのアタリにくるかで決まってくる話ではあるが、全てをスペックで判断してしまうと、それは最終的な出力と必ずしもイコールにならない現状を切り捨てる事になる。
カメラは撮影してナンボという製品である以上、スペックが最終要求仕様ではない、という事である。
この考え方は何もカメラだけの話ではない。音響製品だって同じである。どんなにノイズが少ない製品だとスペックで謳っていても、録音した音に味がなければ「クリアである」という評価しか貰えない。
デジタル製品は内部的にはデジタル処理でも、インプット情報とアウトプット情報を比較評価するのはアナログの塊である人間である。
なので、こうしたスペックからは見えない部分が最終的に大きな意味を持つ。
Nikon Zシリーズは、そうしたアナログ的観点から見たときに評価される製品なのかもしれない。
スペック偏重主義の人からするともどかしい製品になるかもしれないが、カメラの本質を考えれば、使用して結果として残ったものの評価こそが重要というのは、決して間違ってはいないと思う。
Zシリーズに集中
今回のZシリーズの開発で、Nikon1は完全に開発中止となった事が判明している。ミラーレスカメラにおいて、Zシリーズに全てのリソースを集中するという事になる。
Nikon1は、あれはアレで良いフォーマットだったと私は思うのだが、1代目、2代目、3代目と次々とスタンスが変わっていった事を考えると、Nikonそのものがミラーレスカメラをどう捉えるかという事がまだ明確に掴み切れていなかった時代の製品なのかな、とも思う。
PENTAX Qシリーズと共に、スマホよりは大きなイメージセンサーを持ちつつ、それでいてレンズ交換式という小型軽量カメラは、完全に沈黙した形となる。
という事は、現行機種で一番小さなイメージセンサーを搭載したレンズ交換式カメラは、マイクロフォーサーズという事になる。
時代はまさに35mmフルサイズセンサーの時代に突入したという事を今更ながら思い知る。
マイクロフォーサーズを押すオリンパスからすれば、先日、E-M1 mk2より上位の高級機を2019年に発売すると言っていたのは、まさに今の現状を反映し、製品を投入しようという動きの表れだとよく分かる。
とりあえず、Nikonも新たな道を示した。
次はキャノンだと思うが、キャノンはどんなスタンスでフルサイズを投入してくるのか?
実に興味深い。