弱点を克服したアイディアPC
VAIO A12
2in1のノートPCの弱点と言えば、液晶部の重量がキーボード部の重量を上回り、結果クラムシェル形態の時に本体を開くと、後ろ側に液晶部が倒れるという、重量バランスが悪い事であった。
私はそうした問題を考えた上で、以前にVAIO Duo13を購入した事もあるのだが、VAIO Duo13は開いた液晶の角度を変えられないという問題もあり、使い勝手という意味では2in1というジャンルは実に扱いが難しいジャンルのPCという認識がある。
しかし、各メーカーはいろいろなアイディアを出して、倒れない2in1ノートPCを次々と発表していくのだが、個人的にはどれも決定打に欠ける感じがして、自分の中では先日発売されたMacBook Airであったり、MacBook Proであったり、場合によってはiPad Proという選択肢の方が扱いとしてはいいのかな、という受け止め方をしていた。
しかし、昨日国内のVAIOから、ついに決定打とも思える新型が発表された。
「Stabilizer Flap」と呼ばれる、閉じた状態では本体に密着し、開いた段階でキーボード後方の足になるフラップを追加する事で、開いても後ろに倒れない構造を取り入れた「VAIO A12」である。広開本と呼ばれる製本からヒントを得たそうだが、マグネシウム合金製の一枚板を曲加工でフラップとして採用した事で、それが液晶の開閉に伴って可動する事で、後ろに倒れない支えになり、またキーボードを立たせてパームレスト不要の傾きを与える部材になるという。
よくこういう構造を考え出したな、と思う反面、この構造を取り入れた事で液晶部を取り外す邪魔にならないのかとも思うが、このVAIO A12はさらに液晶部を切り離すリリーススイッチがキーボード側と背面側の両面にあり、開いた状態だけでなく閉じた状態でも液晶部だけを切り離す事が可能だというから驚きである。
企業向けを意識したI/F
VAIO A12は、キーボード側に多様なインターフェースを装備している。
いや、VAIO A12は、というよりはVAIOから発売される製品そのものが、最近の国産ノートPCでは珍しいくらいに多様なインターフェースを備えていると言える。
VAIOは、企業で使われる事を想定したPCを設計する事に注力しているという事で、事実VAIOはそれで企業の売上を伸ばしてきている。
そうした中で、最近他メーカーではあまりみなくなったVGA端子(D-sub15ピン)もVAIO製品ではほぼ搭載されている事に気付く。これは企業が導入PCを選定する上で重要な要素らしく、VGAがあるから導入するという企業が未だに多いという。
その他、VAIO A12ではUSB3.0端子がキーボード部では1つしか装備されていないのだが、これはさらなる多機能を追加する為のドッキングステーションとの接続にUSB3.0インターフェースを1つ使用しているからで、致し方ない部分だという。その代わり、USB2.0端子が2つ、HDMI端子が1つ、有線LANが1つ、SDXCカードスロットがキーボード部側面に装備され、液晶部の側面にはUSB3.0 Type-Cが1つ用意される。前述の別売りとなるドッキングステーションと接続すれば、4Kディスプレーなどとの接続も可能になる。
その他のインターフェース関係としては、IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth4.1、207万画素のWindows Hello対応前面カメラ、799万画素背面カメラ(オプション)、指紋認証センサー(オプション)、音声入出力、加速度&ジャイロセンサーが用意される。さらにWAN搭載モデルではGPSも用意され、Micro SIMカードスロットに対応するSIMとしては、国内の通信バンドはほぼカバーされる。
プロセッサはYシリーズ
このVAIO A12だが、CPUコアは第8世代Coreプロセッサーを採用し、その中でも省電力性に優れたYシリーズを搭載する。ラインナップとしてはCore i7、i5、m3、Celeronと選択肢は広いのだが、Yシリーズなので基本的なベースクロックは高くない。
搭載するメモリもLPDDR3を4~16GB搭載可能で、ストレージとしてもNVMe SSDを256GB~1TB、もしくはSATA SSDを128~256GB搭載できる。
処理能力という面では多少心許ない感じがしないでもないが、ビジネスシーンで使用する上では困らないスペックとも言える。
クリエイティブな業務では明らかにパワー不足を感じるとは思うが、そもそも想定していない感じである。
それと、タブレット操作を意識しているので、別売だがデジタイザペンが利用できる。
このデジタイザペンはワコム製のもので、4096階調の筆圧に対応したものになる。
このあたりはiPad Pro対抗の機能と言えるが、WindowsというOSの上で動作するアプリケーションがどこまで手書きを意識した作りになっているかで使いやすさが決まる。
Windowsに傾倒するなら
ざっとVAIO A12を見てみたが、正直、MacBook AirとiPad Proを足して2で割った感じの個体という感じがしている。
もちろん、特化した使い方を突き詰めれば、MacBook Airの方が便利だったり、あるいはiPad Proの方が便利だったりするのかもしれないが、そもそもWindowsというOSで利用するという面で特化して考えればVAIO A12の方が使い勝手が良いのは言う迄も無い。
このVAIO A12と真っ向勝負する個体があるとすれば、Surface Book2が該当するのかもしれないが、マシンパワーとしてはSurface Book2の方が上に来るだろうし、そもそも価格帯がバッティングしない。
企業が導入しやすく、パワーよりも利便性を追求となれば、自ずとVAIO A12を選択肢とする、といったところではないだろうか?