Windows PC向けのArmプロセッサ廉価版、としているが…。
廉価版でも速い
QualcommがWindows PC向けのArm不プロセッサ「Snapdragon X Plus」を発表した。
これは以前発表した「Snapdragon X Elite」の下位モデルという位置付けになるもので、2024年半ばより出荷されるとしている。
4nmプロセスで製造され、最大3.4GHzで駆動するOryon CPUを10コア内蔵している。上位のEliteは12コアなので、2コア少ない事を考えると、おそらくEliteを製造する中で歩留りの悪い10コアが生きているコアを再利用する目的で「Snapdragon X Plus」が設定されたのではないか、と予測する。
Snapdragon X Plusは性能的には、Apple M3より10%高速としており、同Eliteは28%高速とされているところを見て2コアで18%差となるようだ。
またSnapdragon X Plusは、同じ消費電力下では競合のIntel Core Ultra 7 155Hより37%高速で、同じ性能では54%少ない表皮電力で動作するとしている。
内蔵するGPUは最大3.8TFLOPSのAdrenoを内蔵しており、同等のIntel Core Ultra 155Hより36%高速かつ同等の性能であれば50%少ない消費電力だとする。
これに加えNPUが搭載されるわけだが、その性能は45TOPSを実現しているという。この数値は、以前Snapdragon X Eliteで公開された数値と同じであるため、Snapdragon X Plusは同EliteとNPUに関しては同等のものを内蔵しているものと思われる。
その他、メモリはLPDDR5xの最大転送速度8,448MT/s、バス幅135GB/s、最大容量64GBを搭載可能とし、PCI Express4.0のNXMe SSD、UFS4.0、SD3.0、USB4をサポートするとしている。
また特5Gセルラーモデムとして性能下り最大10Gbps、上り最大3.5GbpsのSnapdragon X65 5G Modem-RF Systemを搭載している。その他、Qualcomm FastConnect 7800によるWi-Fi 7/6E/6や、Bluetooth 5.4をサポートする。
通信系機能をも内蔵したSoCとして製造されているところがApple M3とは異なるところで、おそらく差別化が図れる部分と言える。
これでライセンスが下りるか?
Windows PC用のArmアーキテクチャコアとして、QualcommがSnapdragon X Elite及びSnapdragon X Plusを発表した事で、残すはMicrosoftがArm版Windowsのライセンスを正式に発売するだけとなったのではないかと思われる。
おそらくだが、Microsoft自身がSurfaceにSnapdragon X Plus等を搭載した製品を発売し、それを皮切りにライセンスを出すのではないかと思われるが、現時点では何とも言えないところがある。
MacがMシリーズに切り替わる時に、仮想化ソフトのParallels Desktopが暫定敵にArm版Windowsで利用可能になった事があるが、この時でさえ、エミュレーションで動作しているのか? と思われるほど、高速処理を実現していた。
こういった背景があるので、正式なWindowsのArm版環境が整えば、Microsoftとしても早々にプラットフォームを拡大するのではないか、とも思われるが、Intelとの兼ね合いもあるので、政治的判断としてどうなるのかが気になる所である。
x86の生き残り戦略
Windowsのハードウェアアーキテクチャとして、未だにx86が利用されているのは、もちろんその環境しかない、という今の理由はあるのだが、もしArmアーキテクチャが進出してきたとしたならば、x86アーキテクチャの利点はゲームしか残らない可能性がある。
もちろん、Armアーキテクチャでもゲームの制作は可能である。それは今のスマホを見ていればよく分かる。
だが、x86を利用したゲームは歴史が長く、開発ライブラリも非常に多いという事もあり、早々Armアーキテクチャに切り替わるというものでもない事は想像に難くない。
開発メーカーとしては、従来の枯れた技術を利用する方がより安全かつできることの安定税が高まるのは言う迄も無い。
なので、今後x86アーキテクチャが生き残るとしたら、ゲームがメインになるのではないか、と予想できてしまう…が、今はクロス開発が当たり前になっているので、x86の生き残りはもっと険しい未来が待っているように思える。
ま、実際は言うほどの事でもないだろうし、私が予想する事など、IntelやMicrosoftの偉い人はもっと判っているハズだし、違う未来が用意されているのかもしれない。
ただ、素人が考えた時、Armアーキテクチャの凄いヤツがやってきたら、今後はそれがメインでよくね? と考えるだろう事は、簡単に予想できる事である。
なのでちょっと考えてしまうのは、省電力でなく、x86系コアの上位コアと同じだけの規模で動作させたArmコアが、どの程度の性能を出すのか、或いはそういう大電力を消費するコアになれるのか? というのが個人的に思うところである。
あと5年…あと5年経てば、今と状況は結構変わってくるのかもしれない。
思うに、ノートPCはArmコア搭載が加速し、デスクトップPCは省スペース型とミドルタワー型で搭載するアーキテクチャが違う製品で混在するような気がする。
拡張性を考えると、やはりx86コアが優勢かもしれないといったところか?