昨日、KSR110のエンジンのかかりが悪くなっている事を書いたが、そのエンジンのかかりの悪さの原因は相変わらず特定できないでいる。
ただ、エンジンが回ったときの異音(といっても壊れそうな感じではない)やその時の周辺条件を考えたとき、エンジンが冷えている事は当然としても、その結果オイルに問題があるのではないか? という予測をした。
もし本当にオイルが原因ならば、オイル交換すれば改善するだろうが、果たして本当にオイルが原因なのだろうか?
まずはバイクに使われているオイルを知る事から始めようと思い、ちょっと調べてみた。
オイルで最も広く使われている規格は、米国石油協会のAPIと言える。
このAPIによって定められたグレードにはSA、SB、SC、SD、SE、SF、SG、SH、SJ、SLの10グレードがあるが、これは大凡にして4輪の自動車を主として考えられているグレード。
つまり、エンジンの常用回転域が高く、しかもクラッチやミッションも同じオイルで潤滑するバイクの場合は、その潤滑性から合わないグレードが存在する。
それでもSGくらいまでであれば使用できると言えるそうだが、それ以上となるSH、SJ、SLになると、その用途が省燃費性に向っていて、5w-30や0w-30(数字は粘度指数)といった低粘度オイルになり、クラッチやミッションも同じオイルで潤滑するバイクで使用すると、クラッチが滑ってしまったり、ミッションの潤滑不良を起こしたりする可能性が出てしまう。
そこで1998年に日本で新たにバイクへの適合性を考慮した、JASO(自動車技術協会)規格が設定され、MA、MBの2グレードが生まれたそうである。
つまり、バイクに入れるオイルのグレードはMA、もしくはMBを入れておけばほぼ間違いない、という事である。
ちなみにMAはせん断安定性に優れるオイルであり、MBはバイク版の省燃費オイルという位置づけになっていて、特にどちらのグレードが優れているという事ではないらしい。
簡単に言えば、ミッションに力の掛かる大排気量車にはMA、フリクションロスを低減したい中小排気量車にはMBが合っている、と考えた方がいいかもしれない。
KSR110なら…MBグレードが適している、という事になるだろう。
次にそうしたグレードに付いて回る粘度指数(粘度グレード。APIが定めるグレードとは別物)だが、前述したように5w-30といった感じで2つの数字が並べられたものが一般的。
wが付いている数字が冬季(winter)の指数で、後ろの数字が夏季の指数になる。
この2つの指数が設定されているものをマルチグレードといい、昔は数字1つのシングルグレードが普通だったらしい。
シングルグレードの時は、冬場には5wとか10wのオイルを使い、夏場には30とか40などのオイルを使うといった具合に使い分けていたらしい。
今はマルチグレードが普通であるため、冬場から夏場まで1年を通して使用できるものがほとんど。楽にはなったが、そこで問題となるのが、冬場の設定と夏場の設定をどう考えるか? という事である。
冬季の指数で一般的なのは10wくらい。これは-25℃でも凍らないという意味。5wなら-30℃、0wなら-35℃まで凍らない。
夏季の指数はそれとはちょっと違っていて、100℃の時の動粘度の指数となっている。数字が大きいほど粘度が高くなり(サラサラではなくドロドロしている)、高温時でも油膜が切れにくくなる。
あれ? サラサラしてる方がエンジンかかり易いのでは? と思った人は正しい…が、オイルはもともと高温時にはサラサラするものであり、数字が低いほどサラサラするなら、夏季指数も小さい方がいい…と考えがちだが、それは間違い。サラサラしていて欲しいのは始動時であり、高温時はいかに粘りのあるオイルで居続けるかが、オイルに求められる性能である。
だから冬季指数が小さく、夏季指数が高いものが高性能オイルと言える。
が、実はこの考え方も正しいとは言い切れない。
レースなどの場合はそれでもいいのかもしれないが、一般用途の場合はそこに耐久性というものが必要になる。
冬季指数が小さく、夏季指数が高いオイルというのは、ベースオイルに相当量の添加剤が含まれていて、添加剤はオイルそのものの性質を高めるが、オイルの耐久力は低くなってしまう(そう考えたほうがいい)。
オイルが最も嫌うのは水分だが、添加剤には当然ながらそうした水分も含まれる事も多々あるため、劣化が激しいのである。
つまり、常用するオイルは求める帯域を考えた上で、選択した方がいいという事になる。
ちなみにほとんどのメーカー純正オイルは、10w-40らしい。おそらくそれは日本という環境のバランスを考えた上での選択なのだろう。
と、ここまで調べていて気がついた。
おそらく私のKSR110に入っているオイルも、多分10w-40のものだろうと思われる(カワサキ純正の可能性大)。
冬季指数から考えれば-25℃まで凍らないオイルだが…これでも不足だというのだろうか?
とりあえずオイルが原因だとするならば、今のオイルを10w-40と仮定して、次はグレードMBの5w-30ないし5w-40くらいで検討すればいいのかもしれない。
しかし…5wという低粘度でクラッチ滑ったりしないのだろうか?
ちょっとそれが気になるところといえば気になるところである。
えーと、一応エンジンオイルの目視もしてみては如何でしょうか?
取り敢えず見てみない事にはわかりませんしね。
オイルレベルゲージで適量かどうか。
バイクを傾けてみてスポイトやストローで少量エンジンオイルを
採取してみて色や粘度を触って確かめてみる等。
オイルはバイクの使い方によっては乳化してる場合もあるので
これらの確認が重要かと。
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オイルの乳化…
全く知らない言葉なので調べてみた。
…エンジン内部の結露とオイルが混ざって白色化する事だそうな。
で、オイル点検窓に白いものが付いて中が見えない事が…
まぢ?
先日見たとき、点検窓が白っぽいなぁってな事に。
こりゃ、オイルが原因だな。
短距離を走って止めるを繰り返すと起きやすいとからしいが、通勤バイクの場合はどうかんがえてもそんな乗り方にしかならないんだけど…
はてさて、困ったなぁ。
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島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑の原理をついに解明。名称は炭素結晶の競合モデル/CCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象にかかわる広い説明が可能な本質的理論で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後48Vハイブリッドエンジンのコンパクト化(ピストンピンなど)の開発指針となってゆくことも期待されている。
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貴重な情報をありがとうございます。
たしかに摺動性を上げる事がオイルの目的でもあるわけで、この分野の研究がもっと行われれば、さらに摺動性を上げる事やそもそもオイルの必要性を著しく買えてしまう可能性もありそうですね。
具体的な製品とかはまだまだ先かもしれませんが、期待できる結果が出てくる事を期待しましょう。
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EHL理論よりも合理的ですね。オイルが固化するのだったらなぜコールドスタートなる現象が、エンジンにダメージあたえんねん。CCSCモデルの開発者、久保田博士の境界潤滑現象の本性に引用されている。C.C.Yangの論文に生成するナノレベルのダイヤモンドの粒径がでかくなり、ダメージがよりすすむのはあきらか。このモデル、すぐれもの。
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ナノダイヤモンド理論、初めて聞いた時にはただうなずくだけでしたが、よくよく調べて見ると、確かにと思える理論だな、と。
これから先、こういう理論から新たな製品が開発され、便利になっていくといいなとホントに思います。
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EHL理論の専門家であれば、油膜は絶対に切れないというでしょうね。しかし境界潤滑状態というのもうすでに油膜は切れています。電気抵抗を計った実験が調べればたくさん出てきます。しかし問題は「油膜が切れる」と言いたくなるような突然死(サドンデス)が起こるのはなぜかということです。それに明確な答えを出したのが久保田博士のCCSCモデル。なんと潤滑油由来の表面に張り付いたグラファイト膜(トライボフィルム)がナノメートルのダイヤモンドになるというものです。詳しくは「境界潤滑現象の本性」で検索してみてください。
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なんかもう、こんな私のBlog程度でこんな高度な話が成されていていいのだろうか? と思えてきた(爆)
http://j.mp/370x7KU
「境界潤滑現象の本性」という語句で検索した結果、上記の論文に到達。
もうね…専門的すぎて付いていけないwww
でも、確かな実験の元に言われている事で、そこに理論があるのだから、間違ってはいないはず。
このような研究から、より良いモノが生み出されていくことを切に願ってます。
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CCSCモデルの熱力学的考えはコールドスタートのエンジンの焼付きなんかにも使えそう。
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コールドスタート時はオイルが完全に落ちてしまっている状態からの始動となると考えれば、金属同士の摩耗から発生するトラブルがいろいろと考えられるので、その原因特定は一筋縄ではいかないようですね。
新しい理論とか考え方というのは、従来からある考え方を変化させるものなので、時に受け入れられがたく、また受け入れられたとしてもそこから派生するいろんな問題を紐解いていく事になるので、いろいろと複雑になるのでしょう。
そうした積み重ねの先に、現実的に起きている問題の解決があれば、新たな問題特定と解決が見えてくる…その繰り返しだと思います。
私には随分と高度な話すぎて、付いていくのが大変ですw
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