シリコンによる半導体は7nmが限界だといっていた過去はどこに行ったのか?
2021年にリスク生産開始
台湾TSMCが、半導体の3nmプロセス製造について、2021年にもリスク生産を開始し、2022年の第2四半期に量産を開始する予定だと、台湾DIGITIMES誌が報じた。
今現在PS5等の半導体製造は7nmプロセスによる製造で、AppleのM1は5nmプロセスによる製造であるが、それよりもさらに微細な3nmプロセスに関して、もうすぐそこまで来ているという事にまず驚く。
実際問題として、7nmプロセス製造のPS5等の生産に遅れが出ているという事実が有る事を考えると、最先端プロセスの研究も良いが、もっと生産してくれよ、と言いたい人も多いだろうと思う。
だが、半導体という世界は、この先端プロセスの製造にどれだけ早く着手できるか、という事がとても大きな意味を持つ。これに乗り遅れると、顧客を一気に失う可能性もあるので、TSMCからしてみれば、既存ラインの拡大は別で対応するとしても、基礎となる最先端製造にコストをかけるのは、むしろ当然の結果である。
という事で、TSMCはまだしばらく半導体製造業界ではトップ企業に君臨し続けるだろう事は想像に難くない。
微細化の問題
昨今の半導体製造は、以前よりもずっと微細製造にコストが架かるため、以前のように製造プロセスを小さくすれば、製造数でコストを相殺させ、逆に利益を増大させる事ができる、というものとは全く異なる。
なので、GPUはCPUから比べると微細化が進む速度は以前から遅かった。配線層の微細が困難だったという事と、コストに見合わないと判断された為だ。
ただ、大きなダイサイズは面積あたりのコストも嵩むがそれ以上に消費電力のメリットを享受できないため、、今のNVIDIAのGeForce RTX 3080を初めとした3000系は、SamsungのN8プロセスにて製造されている。またAMDのRadeon RX 6000系もTSMCのN7で製造されているので、GPUもプロセス微細化の道を昨年から歩んだ形になった。
残念なのは、これらが一度に全部動いた、という事である。
これによって、もともと限られていた生産ラインが全て逼迫し、生産に遅れが出ているという事である。
この半導体の全体的な品不足は、元々想定されていたところはある。
TSMCは、2020年5月に2021年に建設を開始する5nm生産が可能な半導体生産工場を米国アリゾナ州に建設する計画を発表している。ただ、こうした工場の建設には数年単位の時間がかかるので、この工場の稼働は2024年からと計画しており、今の品不足そのものに関与する事はないのだが、産業の多くで半導体が使われる今の時代によって、全体的な品不足が起きている事そのものは、あらゆる想定を超えたものになっている側面があるように思える。
今だ抽選販売のPS5
こうしたTSMCの動向は、一般人レベルではあまり関心事として受入れられていないが、もっと身近なものに置き換えると実感しやすい。
一番体感できるのは、PS5の品不足だろう。
7nmプロセス製造で作られるPS5のコア半導体は、まさしくTSMC製である。この半導体の遅れがPS5の生産に大きく関与する事は間違いが無い。今だ抽選販売になっているのは、全体的な品不足のためでもある。
転売屋の暗躍によって品不足になっている、という認識もあるかもしれないが、今現在はどちらかというと全体的な生産数の方が大きな問題になっていると言える。
TSMCという一社で全世界のPS5の生産を請け負っているのだから、数が出ない事には普及しようがないわけで、それが原因で今だ抽選販売になっているわけである。
この慢性的な品不足は、しばらく続くだろうと思う。理由はPS5だけを生産しているわけではないからだ。同じAMDの7nm製造となるCPUのRyzenや、GPUのRadeon RX 6000シリーズもN7製造なので、こちらを生産しようと思えば当然ラインは限定されてしまう。
今は何をどうしても全てがこのようにドン詰まっている感じなので、何かをとれば何かが影響を受ける…そんな感じだと言える。
世界的に半導体不足なのは、他にも日本の味の素が開発製造している素材に関係があるという話もある。
高精度高密度になればなるほど、そこに使われる素材も限定されるわけで、コストは増大する。今後、製造プロセスが進むからと言って、価格据え置きで性能が上がる、という事はそうそうないかもしれない。