Ryzen 7000シリーズのX3Dモデルのレビューを見て思うこと。
あまりにもピーキー
Ryzen9 7950X3DとRyzen9 7900X3Dが3月3日11時より発売開始となる事が発表され、情報解禁が始まったようである。
各テック系サイトではレビュー記事がバンバン出始めているので、詳細情報はそういったサイトを見ていただきたい。私もそれらのレビューを見たのだが、結果としては思った通りの傾向となっていて、強烈なまでの驚きはなかった感じである。
ただ、事前に分かっていた事だが、2CCD搭載のRyzen9で、L3キャッシュを増量しているのが片方のCCDのみだという事が、どういう影響をもたらすのか? というところが気になっていた。
Intelのように、ハードウェア的に処理スレッドを操作する仕組みを持たないAMDが、BIOSとOSドライバのみで処理の傾向を制御できるのかも気になっていたし、TDPがぐっと抑えられた状況がどのような影響を与えるのかも気になっていた。
そうした気になっていた傾向がレビューで調査された結果、私がX3Dモデルを見た時、出てきた言葉がコレである。
「やはりゲーム番長か」
想像から逸脱していない結果。
キャッシュメモリが効くゲームとメディア系アプリケーションにだけ強いという何ともピーキーな特性。
実にAMDらしい、面白いハードウェアである。
ゲームでも高負荷だと…
ただ、個人的にちょっと残念な部分もないわけではない。
それはゲームのキャッシュメモリの効果が出やすいベンチマークであっても、4Kのような高負荷状況でIntel Core i9-13900Kあたりと比較した時、性能差がほとんどない、という事である。
唯一の救いは、その性能差の少ない状況であっても消費電力や発熱量はぐっと小さくなるという事なので、それがより高性能である、と言えるという事なのかもしれない。
また、今回は特性の異なるCCDが2個搭載されているRyzen9なので、X3Dコアと高クロックコアの使い分けというところで全般的な性能に落ち込みが許容値だったわけだが、これがRyzen7 7800X3Dとなった時どうなるのか? というのも気になる。
純粋にX3Dコアだけの時、そのクロック低下から性能がどこに落ち着くのか?
とても興味深いとこである。
ハイエンドなのにフルHD
今回のレビューを見ていて、違和感を感じるのは、ほとんどのゲーム性能を推し量るレビューで、フルHDによる解像度でスコアを稼いでいる事を強調している事である。
レビュー対象がRyzen9 7950X3Dという、AMDからすれば最上位Ryzenであるにも関わらず、その解像度がフルHDというのは、実用途として考えた時、不自然極まりない。
もともと、フルHDで高リフレッシュレートという環境でゲームプレイする層は、もっと使用するコアは低価格なものを使用している事が圧倒的に多いといえる。GPUもまた然りである。CPUならIntelのCore i3やCore i5、AMDならRyzen7やRyzen5など、GPUならGeForce RTX 3060や3050、Radeon RX 6600や6500といったところではないかと思う。
レビュー自体はそうした環境でのテストではないのだから、より上位で使用する事前提なら、内容としてWQHDや4K、時にウルトラワイドモニタの解像度なんかが一番使用例に近いレビューになるはずである。
頑なにフルHDのガンガン伸びるスコアばかりを比べているのは、何が理由なのだろうか?
また、これを考えると、そもそもAMDのX3Dコア搭載製品にも、一定のミスマッチが考えられる。
前述したように、ゲームで利用されるRyzenはRyzen5や7、場合によってはRyzen3である。L3キャッシュを増量すべきは本来ならRyzen9といった上位製品ではなく、Ryzen7、5、3ではないかと思う。
AMDとすれば、付加価値の高い製品を下位製品に展開すると上位製品の出荷に影響が出てしまう恐れがあるため、下位製品での展開は想定していないのかもしれないが、Intelのコア i5やi3への対抗馬として考えるだけの余地はあるのではないかと思う。
X3Dコアを搭載したRyzenの性能は、大凡予想通りの結果ではあったが、ゲームやマルチメディア系ソフトに強いという事を改めて再確認できるものであった。
個人的にはRyzen7 7800X3Dが汎用的にどのような性能になるのかがとても気になる。クロックが落ちる分、どの程度の性能なのか?
製品登場まで今しばらく待とう。