PS4、Ustream配信終了へ

全く使わなかった機能だが、終了するとの事。

最近のUstreamはどうよ?

数年前まで、ネット配信といえばUstreamというぐらい、Ustreamの存在感はとても大きかったが、最近になって配信という世界ではUstreamという声をあまり聞かなくなっていた。
私自身、Ustreamで放送を観るという事があまりなかったので、意識していなかったのだが、ここ最近で生配信というと大体がニコニコ生放送かYouTubeかtwitchか、という声を聞くようになっていて、いつの間にかUstreamという言葉自体をあまり聞かなくなっていた。
正直、私もPS4がUstream配信を終了するという記事が出るまで、Ustreamそのものがどうなったのか? という事すら知らなかったのだが、こういう話題が出たのでちょっと調べてみた。
すると…なんか結構悲惨な状況になってたりするんですけど(-_-;)

簡単に時系列を説明すると…

  1. 革新的なサービスで台頭
  2. ものすごい勢いでユーザー拡大
  3. ニコニコ生放送、YouTube等、動画配信サイトの配信サービスが追撃
  4. 逃げ切ろうとしたのだろうが、結局ユーザーはニコ生、YouTube等へ
  5. 2014年、twitchをAmazonが買収、一気に拡大
  6. Ustream、一気にユーザー数が転落し、2015年に日本法人撤退
  7. 2016年、Ustreamを米国IBMが買収
  8. IBMがエンタープライズ向けクラウド・ビデオ事業部を新設
    ⇒ 今ココ

Ustreamは、全世界的に拡大したサービスだけに、ユーザー数を激減させたのが日本だけの話なのか、それとも世界的に波及しているのかは定かではないが、少なくとも日本法人は撤退、その権利を本国へ返還している。
たしか日本法人はSoftBank子会社だったと思うのだが、要するにSoftBankから切り捨てられた…と言ってしまえばそれまでな展開という事になる。
一時期、孫社長は相当入れ込んでいたハズだが…3年ほどの間に飽きられたという事になる。

失敗の原因は諸々あるが…

Ustreamがわずか5~6年の間に隆盛と転落を一気に駆け抜けたのにはいろいろ理由はあるだろう。
まず登場して早々、Ustreamはアメリカ大統領選挙に利用された。これは言うまでもなく米国では非常に大きな影響力がある。
そこで米国内での知名度を上げれば、当然日本でもある程度の注目は浴びる事になる。それが加速するのが2009年で、Twitterと連動した事で放送側に視聴者側の意見が直接伝わるという双方向性を手に入れた。要するに、今までニコニコ動画が当たり前にやっていた、動画にコメントという機能が生放送でできたというワケである。
しかもTwitterを利用していた事から拡散速度も早く、一気にUstreamは拡大する事になる。
これに目を付けたのがSoftBankの孫社長である。2009年末に出資する事を決定し、2010年5月には日本法人でのサービス開始と一気に加速。
各種メディアがUstreamを取り上げ、2011年の東日本大震災のもっとも早い情報配信という所でもその存在を大きくアピールした。
しかし…実はこの時点で僅かな陰りは見え始めていたと私は考える。
ブロードキャストの在り方が従来と明らかに変化を見せ始めていたときから、ある一定の方向はどうしても避けて通れない道になっていた、と私はみている。

ブロードキャスター

従来、放送というと、ラジオ、テレビなど放送局を必要としていた分野である。
しかし、これが放送からブロードキャストになった時、それは送受信機能を持つデバイスのある場所すべてが放送局になる事を意味する。
つまり、放送者が特定の企業や組織から一般人に拡大するという事であり、それは即ちブロードキャストする際の敷居は一気に低くならなければ意味がないという事である。
もし、テレビで放送しているような内容と同じものをネットで放送したとしても、そこに人々は新鮮さを感じることはあまりない。せいぜいタイムシフトできる事を便利に感じるぐらいである。
しかし、ブロードキャストによって、ラジオやテレビでは放送しないような、一般の人々の放送内容が見られるとしたら、そこに新たな価値が生まれる。
ブロードキャストはまさに限られた世界をオープンな世界へと変える手段だったと言える。
そうなると、問題となるのはそのコストである。ブロードキャストのためのコストをどこに求めるのか?
残念ながら、Ustreamはココを間違えた…というか、従来の放送と同じ感覚でいたのかもしれない。
Ustreamは配信者にそのコストを求めたのである。
しかし、同じようにブロードキャストサービスを開始していたニコニコ生放送はというと、もちろん配信者にもコストを求めたが、そのコストは視聴者と同じ額しか求めなかった。つまり、ニコ生は極端な事を言えば視聴者からそのコストを求め、それが月額課金という形である程度予測のできる纏まったコストを収入源としたのである。
またYouTubeは全くブレず、動画配信と同じく広告収入にコストを求めた。
このコストの徴収方法に3社は大きな差があり、それがサービスへの差を生み出したと言える。

コストのかけ方

ここで明確な差が出てしまった。
ニコ生はとにかくコンテンツに力を入れることになる。視聴者が利用したい土壌を用意しないことには拡大しないのだから当然だが、配信者として有り難いのは月額課金以上の金額を掛けなくてもブロードキャストできる事である。もちろん、特定の放送枠を獲得するためには追加料金がかかるが、そうでなければ月額課金額以上の費用が発生しない。だから気軽に配信できるのである。
こうなると面白いかどうかは別にしてコンテンツ数は無限。もちろんそこには一個人もいれば一企業もいる。すべての参加者が低い敷居でブロードキャストできる土壌がそこには存在していたと言える。
YouTubeはというと、これはもう動画配信とあまり変わらないとしか言いようがない。もともとコストを求める先も全く同じなのだが、YouTube側はインフラを維持し続けるだけでほぼ問題なく運用できる構造と言える。
ではUstreamは? というと、これが些か問題だった。
配信者にコストを求めた結果、配信者側はコンテンツを制作するコストだけでなく、ブロードキャストのためのコストも追加で支払っていく事になる。しかも、Ustreamはプラットフォームを常に最良のものとして、配信の質を向上させる事にすべてを費やしたため、配信者側のコストに何か関与していくという事をしなかった。
この取組の差で、徐々に差がつき始めたとき、流石にUstream側もこのままではマズイと感じたのではないかと思う。
徐々にコンテンツに対してコストをかけるようになり、あらゆる手段でユーザーの囲い込みを始めたが、時既に遅し。一度離れたユーザーは中々簡単には戻らず、結果、運営が難しくなり、今度は利用ユーザー側からもコストを徴収するようになっていった。
こうなると、もう復帰の道は閉ざされたと言っても過言ではない。

誰がために

Ustreamが国内ユーザーから見放された最大の理由は、配信者に優しくなかったという事である。
コンテンツをつくる側を保護せずして、どうしてプラットフォームを維持できようか?
良いプラットフォームを作ったならば、コンテンツを作ってくれる所が無制限に付いてくると思ったのだろうか?
コンシューマゲーム機の世界を見れば、プラットフォームを用意したメーカーがコンテンツベンダー(ソフト開発メーカー)に出資して自社プラットフォームを拡大しようという動きが当たり前のようにある事を知らなかった…という事はないだろうに、それと同じことだという事が見えなかったのだろうか?
配信者がいなければ視聴者は見る番組を得られない。
ある意味、ものすごく単純な構造である。
ただ、卵が先か、ニワトリが先か、という論争に近い部分もあるにはある。
視聴者がいなければ配信者は参加しない。
これもまた真実である。
しかし、ネットの世界でのブロードキャストにおいて、視聴者はコストを意識しなくてもある程度は番組を見ることができる。そこのさじ加減は、まさにブロードキャストする側とそのプラットフォームを用意する側でコントロールができる部分でもある。
残念ながら、ここの舵取りを間違った、としか言いようがないのがUstreamの経緯だと私は見ている。

とりあえず、今後のUstreamがどうなるのかは定かではない。
米国ではエンタープライズ向け、つまり企業向けのサービスを展開していく事を示唆するように、IBMが事業部を立ち上げたのだから、多分一般向けにおける新しい動きはもう考えていない可能性は高い。
少なくとも日本国内では確実に縮小傾向に進んで行くであろう事は予測できるが、PS4での配信サービスが8月1日をもって終了する事は決定事項である。
おそらく、ほとんどの人が何の影響も受けずにこの決定事項は流れていくだろう。
今だ配信先をUstreamのみに固定している人はそうそういないと思う。
私など、ニコ生しか視野にいれていないぐらいである。
まぁ、そのニコニコ動画にしても、最近は動画離れが進んでいると言われている。生放送が簡単にできるようになってから、動画公開数が激減しているという話もある。
どこまでがホントかはわからないが、人々のブロードキャストに関しての認識が変わってきた、という事かもしれない。
かつて、テレビという媒体では録画ができなかったために生放送が当たり前だったが、そろが録画放送可能となり、現在は再び生放送へと回帰している。
ネットにおけるブロードキャストは録画媒体(動画ファイル)から始まったが、技術の進歩で生放送が主体になってきた。
視聴者サイドがライブ感を求めた結果がちょうど交差したとも採れるが、これが社会の流れである。
この流れに密着するのが情報メディアであり、それ故に時として姿を変えていく。
Ustreamは残念ながら姿を変えきれなかった。多分そういう事ではないのかな、と感じる次第である。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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