今日はちょっと真面目な話。
いつもがおちゃらけているというワケではないが、今日は仕事…というより自分の仕事にまつわる日本のこれからみたいなものを考えてみる。
私みたいなのですら危機感を感じるのだから、日本の偉い人達はもっと危機感を持ってもらいたいという趣旨の元、不確定情報や予測を交えて書いてみたい。
なので信憑性は低い、という事を先に言っておくし、登場する企業等についても憶測の域を出ない事を明言しておく。
先日、とある顧客企業の人がウチの会社に訪問してきた。
そのとある企業…仮にF社とするが、そのF社の人が深刻な面持ちで来社した。
顧客であるから、この顔はよろしくない話、つまりコストダウンの話なんじゃないかなと予測した。多分、ウチの会社の殆どの人がそう感じたんじゃないかと思う。
ところが、いざ話が始まってみると、それはある意味コストダウンどころの話ではない展開を見せた。
このF社のエンドユーザーは自動車産業のT社なのだが、そのT社からF社が主力展開している商品を完全公開入札に切り替えるような話を切り出されたそうである。
通常、こういう展開になるとコストダウン幅は30%を下らない。製造業においてコストダウン幅は通例では10~15%を頭に、落し所として5~7もしくは8%というところで落ち着く事が多い。
このF社の製品は研究用として使用される消耗品で、民生用として使用される類似品は別の企業が製造しているのだが、なぜその別の企業が研究用で使用される消耗品を製造しないのかというと、研究用は数量が少ない為。研究用と民生用の違いは、製品に開けられている穴径が研究用がより小さく、製造技術レベルが多少高いところにある。だから歩留まりが悪い研究用は製造していないと考えられる。
これが公開入札となると関係企業全てが全製品に関して一律にコストダウン要請を受けたのと同じ事を意味するだけでなく、従来のバランスが崩れる為、同じ事を言っていられなくなるのである。
つまりはこうである。
今まで民生品を製造してきた企業は、自分達の部品も当然公開入札となり「ライバル企業と熾烈なコストダウンを余儀なくされる → そしてそうなると売り上げ額を確保するため、従来手を出さなかった類似品も視野に入れざるを得なくなり、多少歩留まりが悪くても類似品製造に名乗りを上げる → 元々民生品で大量生産していたため、類似品の価格は民生品ベースとなり、F社の従来価格を大きく割り込む → F社涙目」という図式が成り立つのである。
F社が研究用として提供している製品の技術は、ウチの会社(と関連協力会社)の技術であり、F社がT社から閉め出されるという事は、同時にウチの会社がその仕事を失うという事。
T社のやり方は従来の実績を完全に無視し、ひたすらコスト最優先で取引をするという、ある種「粗悪品を掴むかも知れない」やり方である。
ちょっと脱線するが、これを知っていると話が早い。
SCMという言葉がある。これは「supply chain management(サプライチェーンマネジメント)」の略だが、サプライチェーンの鎖の1つ1つ(サプライヤ)の個別最適ではなく、“全体最適”を図るという意味であり、要するに最終的なコストダウンを図るために全体の最適化を行い無駄を無くすことで最終原価を下げるという意味である。だから品質は維持される事が最優先となる。
ところがここ数年の大企業が掲げるSCMというのは、製造元に過剰なコストダウンを要求し最終的な原価下落を行うという、到底本来のSCMとはかけ離れたやり方をSCMと呼んでいるケースが見受けられる。こうなると品質は粗悪に向かうのは言うまでもない。
今回のT社も同じようなもので、多分T社の経営陣ではSCMを敢行しているつもりなのではないかと思う。
話を戻そう。
T社はコスト最優先で公開入札という方向を打ち立てた。
これは、場合によれば中国製品でも安ければ買うという意味であり、一説によると「価格が安ければ粗悪品であっても買う」という言葉が出たとか出なかったとか…。
そうなると品質などお構いなしである。
少なくとも末端にいる我々からすればこれはSCMとは到底呼べるものではない。
品質を度外視しコストのみで取引をする。
たしかに安い製品は出来るかもしれないが、そこから生み出された製品をMADE IN JAPANと呼ばせていいのだろうか?
少なくとも、日本製という言葉はワールドワイドで安全で高品質でなければならないと私は思っている。
そこにこそ付加価値があるのであり、日本ならではのモノ作りだと思う。
だが、世界的に日本の品質は過剰品質だと言われているのも事実だ。
とある製造装置の話だが、日本製の製造装置は10年は間違いなく使えるが、5年で新しい製造装置が生まれる業界ではコスト的に見合わない、などと言われる事がある。
たしかに高品質でありすぎる事のコスト問題はあるかもしれない。
だが、だからといって粗悪品を作って日本製と言っていい事にはならないハズである。
T社は最近、米国で重大なリコール問題を起こしたと報じられている。
その事と品質とが一致するとは言い切れないが、コスト最優先とする事で同じ事を繰り返す可能性は否定できない。
何をもって高品質とするか? という問題はあるにせよ、コスト最優先で安定を切り新たに仕切り直すという事がすべて正しいのか? という疑問は残る。
一方、私は技術者ではないので、T社のコスト見直しという部分が間違っているとも思っていない。この見直しをしない事が、御役所仕事に繋がる事を知っているからだ。
コストに見合った品質というものがある、という事が理解されていれば、SCMが本来どういうものであるかは理解できるハズであり、そうなると販売チャネルの動きも変わる。
そして何より問題なのは、政府の外交問題である。この円高を政府レベルで何とかしないと、大手企業がこうしたコスト最優先に走るキッカケを作ってしまう。
今、日本の製造業はいろいろな側面から危機に直面している。
金属などの製鉄業もコスト的問題により海外で生産する事を検討・推進している。これは海外で材料を調達し、日本に持ってくるという事を意味するが、もっと効率的な考え方をすると海外で材料を生産するのなら現地で加工するのが最も安く上がるという意味でもある。
つまり、モノ作りの全てが海外依存になってしまうという事である。そこに技術はあるのか? という問題はあるにせよ、一定の品質が保たれるならあり得る話である。
これらが円高が進んだ事に起因しているとするならば、この円高を何とかしないと日本のモノ作りはあと数年で壊滅する事になる。
ただでさえ、後継者不足で悩む製造業である。仕事がなくなれば後継者とか言っている場合ではない。
日本は何を主力産業としてこれから進んで行くつもりなのか?
一市民でしかない私から考えても、これを危機と呼ばずして何というのか?
以上、一部類推できる企業名があるが、この話はあくまでも推測・憶測の話。
不確かな情報であり、私の見た側面からの話ではしかない。
実際はこれら問題に対し対策をしている可能性もあるし、提供される製品に問題があるという事ではない。そこを誤解しないようにお願いしたい。
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