世間がこの話題で持ちきりになっている。
この発見そのものも素晴らしいが、学ぶべき事はその逆転の発想にあるのではないかと思う。
まだ可能性の域でしかない
STAP細胞の凄いところは、iPS細胞と違って遺伝子操作の段階で核移植の必要がなく、その核移植の際に核にキズを付けてしまうとガン化するというプロセスそのものを行わなくても良いという所に尽きると思う。
このリスクがなくなるだけでも凄い事なのに、iPS細胞よりも生成確率が高く、今後発展していく可能性はiPS細胞よりも高いというから、確かに凄い発見ではないかと思う。
ただ、残念なのはまだヒトの細胞では確認が出来ていないという事。
マウス実験では良好な結果が得られている事から、ヒトでも“多分”問題ないだろうという憶測が立つのみである。
ただ、発見としてはヒトだろうとマウスだろうと凄い事であり、この事自体を評価する事は当然の事だと思う。
この発見を発表する事によって、今後の研究がより進むことが考えられる。可能性が高ければ高いほど、その話に乗る人が増えるのは当然の事であり、あらゆる所から支援や援助が届く可能性も増える。
今後の発展を祈りつつ、早期の医療現場投入へと漕ぎ着けて欲しいものである。
学ぶべきはその発想
そもそも、iPS細胞やSTAP細胞は何が凄いのかというと、どの細胞になるかどうかがまだ決まる前の初期の細胞を生み出す事によって、新たに細胞を分化させ欠落した部分等の細胞を再生させる事ができるという事である。
この、初期の細胞というのは、遺伝情報を初期化する事で生成させるのだが、体細胞でこの初期化を引き起こすには、未受精卵への核移植(これは通常クローン技術と言う)や未分化性を促進する転写因子と呼ばれるタンパク質を作らせる遺伝子を細胞へ導入する(これがiPS細胞技術)など、細胞核へ人為的な操作が必要になる。
通常、この分化の初期化は、動物細胞ではこのような人為的操作が必須で、自然には初期化されないとされてきた。動物細胞の分化状態は非可逆的とされてきたのだ。
一方、植物ではこの分化状態は可逆的と言われていて、自然界で未分化状態の塊を生成する。接ぎ木が出来たり、株分けができるのは、この分化状態が可逆的だからだ。
だが、今回のSTAP細胞は、この植物に可能だった可逆的分化状態を動物細胞で可能にした、というのである。
これは、一種常識を覆したに等しく、まさしく逆転の発想から生まれた新発見だったと言える。
そもそも、動物細胞での未分化状態細胞を生み出すには、核移植が必要とされてきたのは、一度遺伝情報を確定した細胞はその後変化をしないという固定概念があるからだと言える。つまり、外的要因を入れない限り未分化細胞を作る事はできない、というワケだ。
だが、その遺伝子操作そのものが、細胞に与える外的刺激だったとしたらどうだろうか? そしてその外的刺激によって、細胞が変化していたとしたらどうだろう?
植物の細胞も、あるべき組織が切断されたりする外的刺激によって、分化状態が可逆的になっているのだから、動物細胞も同じように外的刺激を与える事によって分化の初期化が行われるのではないか? と着目したのがSTAP細胞である。
細かい技術的な話は理化学研究所等のサイトに詳しいが、私はこの“逆転の発想”そのものが評価されて然るべき事ではないかと思う。
常識とは、人間が当たり前と決めた説にしか過ぎない。しかもその視点はすべて人間側のものである。
その視点をずらす事で、今まで見えなかったものが見えてくる。
今回の発見は、そうした逆転の発想がもたらしたものだ。
想像力とも言えるかも知れないが、今まで当たり前だった事がそうでなかったら? という想像が新たな道を切り開く。
この流れは、こうした理化学だけの事ではなく、特に企画と言われる分野では当たり前の事だ。しかし、実際はなかなか行われないのが実情だ。
言葉にすれば簡単な事だが、なかなかできない事。それが発想の逆転であり、真に活路を見出す手段ではないかと思う。
知りすぎる事の怖さ
発想の逆転は柔軟な思考から生まれるものだが、この柔軟な思考は時として知りすぎる事が弊害になる事がある。
ある常識を知っていたとして、その知っている常識が邪魔をして生まれるべき発想が止まってしまう事も多々ある。
ただ、人は専門分野に行けば行くほど、知識を持たないと事が進まない。
一番理想なのは、知った上で柔軟な思考を持つ事だが、中々それが両立できない。ある意味仕方のない事だが、時として好奇心やイタズラ心など、ある種コドモじみた思考が新たな発見を生み出す。
昔の人は言いました。
好きこそ物の上手なれ。
多分、こうした思考はその事が好きだからこそ生まれるものであり、まずは興味を持たない事には始まらない。
何事も、まずそれを第一歩として取り組まないといけない、という事なのだろうと思う。
今回の一件で学ぶべき事は、発想の逆転は興味を持たねば起きない、まさにこの一言に尽きる。
どんな業態、業務であれ、この事は変わらないだろうと思う。
理化学研究所 STAP細胞報道発表資料
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
何か、既に猿で実験が進んでいる模様。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140130-00000620-yom-sci
思った以上に展開が早い。
難病がこれで解決できるようになれば、世界はもっと明るくなるかも。
早期の実用化が望まれるだけに、日本のヘンなお役所仕事で遅れるなんてバカげた事になって欲しくないな。
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