音質に振り切った?

音響機器なんだから、音質に振り切るのは当たり前?

最近のワイヤレスイヤフォン

最近のワイヤレスイヤフォンは、その機能としてノイズキャンセリングが搭載されているケースが圧倒的に多い。
時代はノイズキャンセリングと言わんばかりの状況で、ノイズキャンセリング機能がない製品はイマドキの製品ではないとすら言われそうな感じである。
たしかにノイズキャンセリング機能があるとノイズが劇的に減る事もあって、本来の音楽が聴きやすいという側面もある。
だが、そのノイズを除去する為のシステムがイヤフォンのハウジング内で音楽を再生する為の機能を圧迫しているのも事実。音響機器としての方向性が、本来伸びていかなければならない方向とは違った方向に伸びているように思う。
その部分に着目したのが、音響チューニングで有名なジョン・モールトン氏が設立したNoble Audioである。新たに「カスタムIEMを無線化する」という発想から、新製品である完全ワイヤレスイヤフォン「FoKus PRO」を発表した。Noble Audioの次なる新作

IEMって?

Noble Audioの言う「カスタムIEMの無線化」という言葉にある、IEMとはそもそも何なのか?
これは「インイヤーモニター」という、ミュージシャンや音楽エンジニアが音響チェックやモニタリングなどに使用するイヤホンの事を言う。
それをカスタムしたものをカスタムIEMというのだが、具体的には何を言うかというと、耳型を取ってその人に合わせたチューニングを行ったイヤフォンという事になる。
物理的なものであるハズのカスタムIEMを無線化する…ちょっと想像できない感じかもしれないが、一つ思い浮かべられるとしたら、先日当Blogでも記事にした、FF14の360度音響アドインである「Immerse GAMEPACK」が、一つの答えになるかもしれない。
「Immerse GAMEPACK」は、右耳の画像をアップロードして画像診断からカスタムプロファイルを作成し、その耳に合わせたチューニングの再生環境を構築するという仕組みである。
「FoKus PRO」では、個人の耳型画像を使うかどうかは不明だが、専用アプリでユーザーの聴力測定を実施するパーソナルモードが搭載されているというので、おそらくはその機能でチューニングするのではないかと思われる。
また「FoKus PRO」には同社FALCONシリーズとは異なる、サイズや形の異なる独自イヤーピースを付属し、耳穴の形を問わないフィットしたイヤーピースを利用できるようにするようだ。

スペック等々

「FoKus PRO」の仕様は大凡以下。
ドライバーはKnowles製BA(バランスドアーマチュア)ドライバー×2基搭載し、低域用にはFALCON PROを上回るサイズとなる8.2mm径マグネシウム・アルミニウム合金製ドライバーを搭載する。
イヤフォンの形状はカスタムIEMの開発で蓄積した耳型のデータを元に設計し、多くの耳に適合したデザインを採用し、前述した独自のイヤーピースを多数同梱する。
BluetoothのコーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Adaptiveを採用し、96kHz/24bitのハイレゾ伝送も可能にしており、コントローラーはQualcommの最新世代チップ「QCC3040」を採用、左右のイヤフォンそれぞれにデータ伝送を行う「TrueWireless Mirroring」に対応する。また左右イヤフォンのロールスワッピング機能にも対応する事で、バッテリーの片減りを防止する。
なお、日本仕様の「FoKus PRO」は日本国内の複雑な電波状況を考慮してアンテナを追加した特別仕様になるという。
バッテリー持続時間は、イヤフォン本体で7.5時間、充電ケースで3~4回の充電が可能という事なので、最大30時間の再生が可能という事である。

音質に振り切る

前述したように、今のワイヤレスイヤフォンはほとんどがノイズキャンセリング前提というものが多い。
その中にあって、ノイズキャンセリングを止めてでも音質に振り切る製品を考えたNoble Audioは確かに差別化を図った製品を作ったと言える。
だが、私は思う。
ここまで音質に振り切るなら、何もイヤフォンである必要はないのでは? と。
正直、その製品の小ささに利便性を求める、外で使用する事を前提とした製品であるなら、如何にして周囲のノイズを消して音楽再生環境を作るか、という事に目を向けた方が使い勝手は良いと思う。
しかし、音質を最大限に突き詰めようと思ったなら、まず再生環境から考えて室内である事はとても大きなアドバンテージであり、そうであるなら何もイヤフォンでなくても良く、今回の「FoKus PRO」の意義はとても微妙なところにポイントがあるように思えてならない。
というか…差別化を図った結果、イヤフォンでも型破りなものができました、という事だろう。
コンセプトは悪くはないが、その技術力の高さはもっと違った製品で発揮して欲しい、そんなところではなかろうか。

そんな「FoKus PRO」が気になった人は、Noble Audioをチェックする事をお薦めする。

Noble Audio
https://nobleaudio.jp/
https://nobleaudio.jp/fokus-pro/

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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