SoftBankがIP商売を始める?
ARMを取り込んだSoftBank
SoftBankが英ARMを完全子会社化するという話が出た。
すでに買収は合意に達しており、その買収額は31億ドル前後(約3兆円)と伝えられている。
…孫社長、次は一体何をしようというのか?
まずARMという会社を知らない人の為にちょっとだけ説明しておく。
世の中の半導体はいろいろなメーカーの技術で作られたものが存在するが、おそらくモバイルという用途で使用される半導体の主力演算機は、その多くがARMの技術で作られたものが使われている。
例えばiPhoneのAシリーズと呼ばれるコアは、ARMのコアをベースにAppleが製造している。
例えばAndroidの各メーカーから発売されるコアは、ほとんどがARMである。Snapdragonと呼ばれる高性能コアも、その中身はARMである。
例えばニンテンドー3DSのコアも、実はARMテクノロジー製。これは3DSの前のDSもARMテクノロジー製コアだった。
例えばNVIDIAのモバイルゲーム機SHIELDも、ARMコアを採用している。
また、最近自動運転機能など進化がめざましい車の中に搭載するコンピュータのほとんどは、ARMコアをベースに作られたものである。
また家電の中に搭載されているマイコンも、そのベースがARMコアだったりする事も多い。
つまり、身近にあるコンピューティングコアのほとんどがARM製なのである。
もしモバイル機器の中でARM製でないコアがあるとすると、x86系のインテル製コアが存在するが、シェアから言えばARMが圧倒的である。
ARMは、製造工場を持たないファブレスのコンピューティングメーカーであり、その半導体の設計図を各メーカーに販売、そのライセンスでビジネスを成立させている。
だからARMは基本的に食いっぱぐれることはない。
最近はプロセスの微細化が著しいため、製造工場も限られてきていて、技術を維持するのも大変になってきているのだが、ARMはそんな技術維持は必要がない。ファブレスなんだから当たり前である。
そんなファブレスのコンピューティングメーカーが作り上げた技術が、世界のあらゆる所で利用されている。だから、イキナリこれらがなくなる事はあり得ないわけで、とても潰れる要素など見当たらない企業といえる。
だから、ARMは、仮に数年間、技術停滞をしたとしても、ビジネス上では損金を出すメーカーではあり得ない優良企業という事になる。
そんな企業をSoftBankが買収した。
SoftBankは、これから先、どこに向かって進んで行くというのだろうか?
10年20年先の投資
まぁ…こんな事私が言わなくても分かる話だが、SoftBankは単に10年先20年先の投資をしたに過ぎないと思う。
かつて、SoftBankというソフトウェアの流通企業を起業した孫社長が、通信事業に入り込み、またボーダフォンを買収した時も、莫大な金額を投じて未来に投資した。
今回もそれと同じものだと私は考えている。
ただ違うのは、ARMはIP(知的財産権)をビジネスモデルにしている、という事。
従来はインフラそのものだったりしたが、今回は全産業の原点に位置するところにビジネスの主体があるという事である。
ある意味、いろんな企業がその影響を受けるだろうし、その中にはSoftBankも含まれるだろう。
私が今回の報道で驚いたのは、ARMほどの企業が買えてしまうという事実である。
しかも日本の企業が、である。
MicrosoftやAppleが買うのではなく、日本の企業が買える…その事実こそが驚きである。
私が思うに、今の日本企業は巨大な電機メーカーですら海外の企業に買われてしまうぐらい弱体化した、と思っていたのだが、今回その逆の事が起きた。
その事をまずは喜ばしい事と受け止め、今までとは異なる視点でビジネスというものを見ていく必要がある時代に突入した、という事を感じずにはいられない。
今回のSoftBankの決断は、多分間違っていない。
今までと同じことをしていてもダメなのであり、違う視点で今のビジネスを捉えていく必要がある。SoftBankは、まずその最初のポイントに立ったのだろうと思う。
ま、私自身は別にSoftBankが好きなわけでもないのだが…こうした話が出てきた事そのものは、世界が大きく変わりそうで喜ばしい話だと思っている。
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