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FILCOの左右分離型

エルゴノミクス…人に合わせた形にすると、最適解はコレなのか?

左右分離型キーボード

ダイヤテックがFILCOブランドで左右分離キーボード「Majestouch Xacro M10SP」を発売する。価格は23,100円からで、FILCOが採用するメカニカルキースイッチ(茶軸、青軸、赤軸、MX SILENT RED)によって価格は最大24,200円になる。
使いやすいだろうとは思うが、購入はなかなか踏み切れないところがあるMajestouchシリーズはFILCOブランドのキーボードの最高峰とされるが、左右分離型はシリーズ初になる。
通常、左右分離型はキーボードの丁度中心あたりをバッサリと分割し、ケーブル等で左右を繋げる形が通例だが「Majestouch Xacro M10SP」は単純に分割しただけのものと異なり、分割した端に各5個のマクロ専用キーを配置している。よって分離されたパーツを隣り合わせで合体させても、通常のキーボードと同じにはならない。
また、「ESC」と「E/J」、「Caps Lock」と「左Ctrl」、Fn/特殊キーの位置はDIPスイッチで切替えが可能で、専用ユーティリティ「FILCO Assist」上からDIPスイッチの状態や配列を確認できるようになっている。
また、そのDIPスイッチによってキー配列を変更する事ができ、QWERTY配列、Colemak配列、Dvorak配列、Colemak風日本語配列、ダイヤテックアレンジのWorkman風日本語配列、Mac風配列にする事ができる。
なお、配列を変えた場合の対応したキーキャップは1,980円で用意、別売りされる。
その他、ハードウェアマクロプログラミングが可能だったり、前述の「FILCO Assist」を使用したソフトウェアマクロプログラミングが可能だったりと、カスタマイズはユーティリティ上で最大8個までプロファイルを保存できようになっている。
他にもレイヤー機能を持ち、レイヤー2~4にユーザーが作成した3つのオリジナルプロファイルを設定可能で、そのレイヤー切替えは右端のRGB LEDの色で識別可能になっている。
左右分離型はその構造から特殊な使用状況になる事が多いのだが「Majestouch Xacro M10SP」は多くのカスタマイズ機能で、ユーザーに合わせたスタイルを可能にしていると言えるだろう。

私が左右分離型を買わない理由

ここまで本製品を紹介したにも拘わらず、私がこの製品を買うかと聞かれれば、おそらく購入する事はないと答えるだろう。
理由はテンキーがないから。
テンキーなんて数字を入力するだけのものじゃないか、と思われるかもしれないが、その数字を打ち込むだけのテンキーが私には必要なのである。
そもそも、数字なら最上段のキーで入力できると言われそうだが、ローマ字入力ならその考えに至っても何ら不思議はない。だが、私はカナ入力なので、数字入力は基本的にテンキーからの入力になるのである。
なので、私からするとキーボードはテンキー付がデフォルトであり、それ以外となるとどうしても異端なキーボードという認識になってしまう。ま、テンキーボードを別途接続して利用すればよいだけの事だが、非常に煩雑な取り合わせになってしまう。
それならば、スッパリとテンキー付のフルキーボードを利用する方がマシというものである。
そういう意味では、左右分離型は私からすると扱いにくいキーボードであり、一定のあこがれみたいなものは感じるものの、実際に自分で使うかと言われれば無理、というシロモノである。
逆を言えば、ローマ字入力が当たり前で、タッチタイプができる人であれば、左右分離型はまさに理想と言えるものではないかと思う。

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第3世代REALFORCE

東プレ製品といえば高級キーボードだが、その新型が発売される。

無線接続モデル登場

東プレといえば、静電容量無接点スイッチ採用の「REALFORCE」というキーボードが有名だが、その最新機「R3キーボード」が11月1日より発売される。
シリーズ初のワイヤレス対応モデルもラインナップには含まれていて、カラーバリエーション含めて全20機種が登場する。
この「R3キーボード」の登場により、既存の「R2」シリーズの日本語配列モデルは2021年10月29日をもって生産終了となる。

今度の「R3キーボード」は、Bluetooth5.0とUSBの2-Way接続に対応する「ハイブリッド」と、有線接続のみに対応する「USB」の2タイプに大別され、「ハイブリッド」タイプで静音仕様のスイッチを搭載する静音モデルはキー荷重が45g/変荷重/30gの3種あり、通常スイッチを搭載する標準モデルはキー荷重45gのみで構成される。
「USB」タイプはキー荷重45gのみのラインナップなので迷う事はない。
今の所、発売されるのは日本語配列のみの製品のみで、それぞれフルサイズとテンキーレス、ブラックとスーパーホワイトのカラーバリエーション2色となっており、これらのパターンで全20機種となる。
全20機種のラインナップそれと「R2」シリーズでは専用機種が存在していたAPC機能、つまりアクチュエーションポイントを調整できる機能に関しては、「R3キーボード」では全機種に標準搭載される。専用ソフトを使用して、0.8mm/1.5mm/2.2mm/3.0mmの4段階に設定を変更する事ができる。また全てのキーを対象とした「キーマップ入れ替え機能」も用意される。
その他、キーキャップはすべて熱や油分に強い高耐久なPBTを採用しており、昇華印刷またはレーザー印字で刻印されている。

東プレ REALFORCE公式サイト
https://www.realforce.co.jp/

気になる価格

今回の「R3キーボード」だが、東プレ製品なので当然安いキーボード、とは言えない。
価格には勿論それなりの理由があるワケだが、高級キーボードと言われるだけの価格が設定されている。
「ハイブリッド」タイプの静音フルキーボードで34,980円(税込)というのが一つの基準で「ハイブリッド」タイプの静音テンキーレスで34,540円(税込)、「ハイブリッド」タイプの通常フルキーボードで31,680円(税込)、「ハイブリッド」タイプの通常テンキーレスで31,240円(税込)、「USB」タイプの通常フルキーボードで24,420円(税込)、「USB」タイプの通常テンキーレスで23,980円(税込)というのが、公式ストアの価格になっている。
フルキーボードなら、34,980円か31,680円か23,980円、テンキーレスなら34,540円か31,240円か23,980円、という選択肢になる。
相変わらず、キーボードとしては相当な高級機ではないかと思う。
ゲーミングPCの影響で、インターフェースの価格も最近では高いものも増えたのは事実だが、それでもキーボードで3万円超えは高い部類ではないかと思う。
ま、REALFORCEの場合は、その品質から考えてこの価格でも売れてしまうという魅力があるので、メーカーが暴利をむさぼるような価格設定でなければ、納得して購入する人も多いのではないかと思う。

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予定より早く販売終了

富士通の親指シフトの販売がひっそりと終了していた。

40年の歴史の終焉

当Blogでも2020年5月に一度、親指シフトが消えるという記事を掲載した。
1980年5月に、富士通が発売した日本語ワードプロセッサ「OASYS100」で採用された親指シフトキーボードは、OASYSの生みの親である神田泰典氏が開発したキーボードで、おそらく日本語を入力する上では最強のデバイスである。
さらば、親指シフト…「親指キー」と呼ばれる独自のキーを搭載し、この「親指キー」と「他の文字キー」を同時打鍵する事で、直接日本語入力を可能にしており、キートップには上下2つのカナが表記されていた。上のカナを打つ場合はそのままキーを打鍵し、下のカナを打つ場合は「親指キー」と同時押しする事で1つのキーで2つのカナを打てるようにしていたのである。
また、濁音や半濁音の文字は、文字キーと反対側の手で親指キーを押せば入力されるため、文字キー上下3段のみで日本語のカナすべてを打つ事ができるのが最大の特徴で、このことでテンキーがなくとも最上段にある数字キーを入力できるというメリットが生まれる。
こうして内容をあらためて知ると、実に画期的な日本語入力システムだが、JIS配列キーボードがスタンダードとなった今、消えゆく運命だったのは親指シフトの方だった、というワケである。
その親指シフトのキーボードだが、前述したように2020年5月の段階で既に販売終了に向けたアナウンスが出ていた。当初は2021年3月に親指シフトキーボード搭載のLIFEBOOKの販売を終了し、外付けオプションの親指シフトキーボードを5月に販売終了する話だったのだが、前倒しして今年1月に販売を終了していた。
前倒しされた理由としては、もともと2020年5月のアナウンスにも「在庫消化の状況で販売終了時期が早まる可能性がある」としていたので、おそらく部材調達の関係で早まったのだろうと思われる。
ただ、外付けオプションの「親指シフトキーボード」に関しては、まだ販売パートナーを通じて在庫を購入する事ができる場合もあるようだ。
どうしても欲しい、という人はそういったルートへ確認する必要があるだろう。

入力インターフェース

ガジェットに対しての入力という行為を実現するデバイスは、過去からいろいろなものが考案されてきた。
スマートフォンが登場する前、ちょうど電子手帳などが流行った時期は、PDAと言ったが、その時にいかに入力キーを少なくし、かつ入力できるようにするか、という試行錯誤が幾度となく行われてきた。
Permというデバイスが登場したとき、ジェスチャー入力でそれらの入力を代替した事もあったし、似たようなアプローチでAppleもNewtonというデバイスを発売していた。
日本ではシャープがZaurusと呼ばれるPDAを作っていたが、その時はペン入力で文字を入力していたが、今のタブレットよりも文字認識レベルはずっと低かった。
その時代に小さなキーボードなどもいくつか考案されたが、結局生き残ったのはQWERTY配列のキーボードが主で、他はわずかに残ったか、消えていった。
入力という行為のしやすさとデバイスの大きさは常に反比例の関係にあり、入力しやすいとなるとある程度の大きさが必要で、小型化が求められるモバイル端末は、その入力のしやすさと常に戦い続けてきた。
モバイルの場合は、その端末の大きさからの制約だが、前述の親指シフトは日本語の文字数との制約で、英字キーボードとの差別化が課題だった。
26文字で成立する英字キーボードに対し、最低でも50音分のキーが必要な日本語では、そもそも同一デバイスで実現できると考える方がオカシイ話である。
親指シフトは、QWERTY配列キーボードで限りなく日本語入力が容易に可能な方法だっただろうと思う。これがスタンダードにならなかったのが残念ではあるが、やはり同時押しという所に何かしらの抵抗があったのと、1キーで2つのカナの位置を記憶するという慣れが難しいのが原因だったのかもしれない。

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FILCOのMINILA

キーボードメーカーのダイヤテックから、FILCOブランドの新キーボードが登場する。

コンパクトな無線キーボード

FILCOといえば、メカニカルキーを搭載したキーボードブランドとして、私も過去には使用していたキーボードである。
私が使用していたのは、Cherry MXのメカニカルキーを使用したMajestouchという製品だったが、FILCOは他にもいろんなキーボードを展開していた。
今回発売するのは、非常にコンパクトで、Bluetoothで複数ペアリングが可能なメカニカルキーボードで、一応ブランドとしてはMajestouchの仲間になる。
新しいMajestouch製品名は「Majestouch-MINILA-R-Convertible」で、ダイヤテックオンラインショップで予約を受け付けている。

ダイヤテックオンラインショップ
https://www.diatec.co.jp/shop/MINILA-R/

製品としては、日本語配列と英語配列の2種類が用意され、それに組み合わせるキースイッチとしてCherry MXの「茶軸」「青軸」「赤軸」「SILENT赤軸」を選ぶ事ができる。
おそらく一般の店頭販売も行われると思われるが、このダイヤテックオンラインのWeb限定として、英語配列の「黒軸」も存在するという。
軸の色によって、その特性が変わるというのは、Cherry MXというキーの特徴で、青軸はクリック感が強く音も派手に鳴り、赤軸はクリック感がなく徐々にスイッチが重くなるリニアストロークの静音キー、SILENT赤軸は通常の赤軸と特性は同じだがより静音化しており、茶軸はほどほどのクリック感とリニア感を持つキーになる。
このキーの色の特性は従来のものと同じなので、従来のCherry MX軸を知っている人であれば、色だけで特性はわかるだろう。
「Majestouch-MINILA-R-Convertible」の打鍵感は、従来製品とほぼ同等だが、特徴はその大きさと親指Fnキーにある。

小型だからこその使用感

「Majestouch-MINILA-R-Convertible」の本体サイズは、297×124×40mmになる。重量は680gで、思ったより軽い。Bluetooth5.1に対応しており、低消費電力で動作できるのも特徴となっている。

Bluetoothなので、当然電力が必要なわけだが、供給は単三形乾電池2本で動作する。USB接続も可能で、USBで接続した時はバスパワー駆動する。
キー配列はちょっと特殊で、キーが少ないポイントをFnキーを使用する事でカバーしている。
そのFnキーがスペースキーの両隣にあり、他社キーボードと操作感に大きな違いがある部分になる。但し、私はこの親指Fnキーは結構合理的だと思っている。
これらキーの使い勝手等は、以下のサイトを参考にすると良いだろう。

impress PC Watch HotHot REVIEW!
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/1269405.html

小型筐体だからこその変則的な使い方もあるが、その小ささは扱いやすさとは別次元の便利さがある。
「Majestouch-MINILA-R-Convertible」は、そうした別次元の便利さを追求した一つの形ではないかと思う。

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40年の歴史に幕

親指シフトが消える意味。

2021年中に終了

富士通が、親指シフトキーボード3製品、及び日本語ワープロソフト「OASYS V10.0」、日本語入力ソフト「Japanist 10」の販売を2021年中に終了し、2024年または2026年にサポートを終了すると発表した。
「親指シフト」と聞いて、すぐにピンと来た人は、古くからコンピュータやワープロに馴染みのある人ではないかと思うし、「OASYS」と聞いて懐かしいワープロシステムだと思った人は、多分まだPCというものが今のような全世界共通になる前からパソコンなどに馴染んできた方ではないかと思う。
PCが今のようなWindowsというOSを基準にしたものになる前、それこそ今では“レトロPC”と呼ばれるようなPC-9801やPC-8801、いや、もっと古くからあるパソコンは、各社独自のシステムで動作しており、互換性が問われ出したのはWindowsという統合環境が登場してからの話である。
富士通の「OASYS」は、そもそも日本語ワードプロセッサと呼ばれる、文章をタイプライターのようにコンピュータ上に打ち込み、それを内蔵プリンタで出力するような機械から始まった(この説明も随分と誤解がある説明だが)。
当時は、NECが「文豪」という名のワードプロセッサを発売していたし、シャープが「書院」という名のワードプロセッサを発売していたが、それこそ文字を打って紙に出力するというほぼ単機能の機械だった。
そのワープロの勃興から各社はもう少し汎用性の高いパソコンへと進化していき、併行するようにワープロも発売していたのだが、主流がパソコンになった頃、ほとんど機械としてのワープロは姿を消し、ソフトウェアという形で各社のパソコンソフトに姿を変えた。
その中でも特別異彩を放っていたのが、富士通の「OASYS」で、独自の親指シフトというキーボードで他社よりも早く日本語を打つ事ができる事を売りにしていた。
今でこそ、ほとんどの人がキーボードを打つ時は26文字の場所を覚えるだけでよいローマ字打ちを主流にしていると思うが、ワープロ全盛期の頃は、あえて50文字の場所を覚えてカナ打ちをしている人も多かった。だが、それよりも早く入力する為に、特殊キーを搭載してさらに早く日本語を打てるようにしたのが親指シフトキーボードで、富士通の「OASYS」がその親指シフトキーボードに対応していた。
詳細はWikipediaに譲るが、ワープロ検定の有段者の中でも選りすぐりの人達は、ほとんどが親指シフトキーボードだった。
つまり、親指シフトキーボードを使う人は、昔はそれなりの人数はいた、という事だが、徐々に廃れていったのは間違いない。
対応キーボードも細々と作られていたが、遂に終了宣言が下された、という事である。

富士通もかなりがんばった

元々、この親指シフトは、富士通が考案したキー配列なので、富士通は親指シフトが途絶えることなく、ずっと対応デバイスや環境を支え続けていた。
親指シフト元々は、独立した「シフト(左)/濁音」「シフト(右)/濁音」というキーが用意されていて、それに「無変換」と「変換」のキーが組み合わさって、濁音の入る言葉などをほぼ1入力(同時押しではあるが)で実現していた。
しかし、この独立キーがある事でノートPCなどではパーツ数が増えるなどいろいろな弊害があった事もあり、そのご、NICOLA規格と呼ばれる配列に進化し、「親指左/無変換」「親指右/変換」のキーにまとまり、キーの数の上ではノートPCでも配列できるものに変わった。
そうした変化を受入れつつ、独自規格による高騰化を何とか対策し、事業継続してきたのだが、タブレットやスマホの登場により、キー入力そのものが減り、ペン入力やフリック入力のデバイスが増えた反動もあって、ついに事業継続を断念せざるを得ない状況になったものと思われる。
親指シフトを使っている人に昔聞いた事があるのだが、親指シフトでタッチタイプができるようになると、頭で浮かんだ文字をそのまま何も考えずにタイプできるそうである。何しろ、濁音のある言葉であれ何であれ、1入力で1文字を確実に入力できるので、普通に会話している語音と同じ数だけタイプするだけなのである。
私もカナ打ちだが、タッチタイプできる事で頭で浮かんだ文字を特に考えずに入力できるが、それでも濁音が入ったりすれば、入力がワンテンポ遅れる事はある。
だが、親指シフトにはそれがほぼないのである。確かに滑らかな入力になるのは当たり前で、ある種、職人芸と言おうか、芸術的と言おうか、そんな感じである。

親指シフトがあと数年で消えるという事を考えると、何だかとても寂しい感じがする。
日本語入力の一つの雄が消えるというのは、グローバル化する今の世の中では起こり得る変化なのかもしれないが、残念な話ではある。

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