さらば、プリントゴッコ

 年末でもないし新年でもないこの時期にこんな話をするのも何だが、あの年賀状で威力を発揮したプリントゴッコが6月いっぱいで本体の販売を終了する事になった。
 プリントゴッコを知らない世代も…多分もういるんじゃないかと思うが、今ほどカラープリンタが当たり前でなかった時代、年賀状作成といえばプリントゴッコというぐらい、メジャーな商品だった。
 カラープリンタが今ぐらいメジャーになった最大の要因は、カラーインクジェットプリンタが登場したからだ。
 何しろその前まではインクリボン式のカラープリンタで、CMYK(C…シアン、M…マゼンタ、Y…イエロー、K…ブラック)の4版をプリントする関係上、1枚の紙を4回プリンタに通さないといけないという問題があった。
 ただ、インクリボン印刷は金色や銀色のプリントが可能だったり、インクジェット印刷より光や水に強いという特性もあり、実に綺麗な印刷が出来たのも事実。
 最後までインクリボン式の民生用カラープリンタを発売していたメーカーはアルプス電気というメーカー(多分間違いない)で、MD-4000Sは600dpiのスキャナも内蔵した名機中の名機であった。
 しかし、CannonやEPSONから安価で綺麗なカラーインクジェット(Cannonはバブルジェットと命名している)プリンタがどんどんと発売されると、次第に各家庭にカラーインクジェットプリンタが普及し、それと同時に年賀状作成もプリントゴッコを使う事がなくなっていったと思われる。
 それでもプリントゴッコは革命的な家庭印刷機だったと私は思う。
 印刷は印刷でも版画に近いもの(いや、そのものか…)ではあったが、自分で書いた(描いた)版下のラインを強烈な光で焼き、その上にインクを載せて量産するそのスタイルは、印刷というものがどんな感覚のものなのかを私に教えてくれた。
 思えば、DTPや印刷に興味を持ちだした最初のきっかけは、まさにプリントゴッコだったように思う。
 さらば、プリントゴッコ。
 現代印刷の民生化を推進した名機に乾杯。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. うめー より:

    プリントゴッコは使ったことなかったが
    生産終了ですか~。
    終わると言えばポラロイドも夏ごろを目処に終了だそうですね
    http://www.polaroid.co.jp/support/important.html
    ポラロイドもオイラは使ったこと無かったですけどね…。

  2. 武上 より:

     ポラロイドとプリントゴッコは似て非なる幕引きかと。
     というのは、ポラロイドは完全に消耗品が販売終了になるのに対し、プリントゴッコは本体のみ販売終了で消耗品は引き続き販売継続。
     この差は大きい。
     ちなみにプリントゴッコは消耗品がメーカーから発売されなくなっても、何とか市販品の同等電球と自作の版下シートで使い続けられそうな感じがする。
     ポラロイドのフィルムは…さすがに自作できる人はそうそういないような気がする。
     デジカメ全盛の今、銀塩というだけでも苦しい立場なだけにポラロイドは今まで継続できてた事の方がスゴイと思うよ…

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