風を読む

風使いは風を読んで大空を舞う。

尾翼なしの飛行物体

スタジオジブリに登場するものを実際につくる…そういう人が日本全国に結構な数でいたりする。それがラジコンの場合もあればただの模型の場合もある。
一番多いのはもちろん模型で、それを商売にしているメーカーもある。たとえば魔女の宅急便に出てくるキキが居候するパン屋のペーパークラフトだったり、紅の豚に出てくるサボイアS-21という赤い飛空艇だったり、それこそ様々である。
ラジコンとかだと、完全オリジナルでラピュタに出てくるフラップターを制作した医師がいて、版権上の問題から発売はしていないものの、ちゃんと空を飛ぶフラップターが紹介されたりもした。
こんな状態の中、ナウシカに登場する風使いが乗る乗り物である「メーヴェ」を実際に乗れるものとして制作した人の話がある。
八谷和彦氏という人が実際に1/1メーヴェを制作し、実際に飛ばそうというプロジェクトが発足した。
「オープンスカイ」と名付けられたそのプロジェクトでは、小型ジェットエンジンを搭載して実際に人が乗り込んで空を飛ぼうというものになる。
このプロジェクトがどれだけ無理難題かというと、まずメーヴェには尾翼がないため、機体安定がとりにくいという事と、そもそも舵がないため、左右旋回は体重移動で行わなければならないという、パイロットにも相当な技量を要求するものである。
それでも、形状的に飛行可能な形をしていたという事で、映像作品よりは大型になったものの、同じ形状でメーヴェの制作が実際に行われ、数回の飛行テストを繰り返してきた。
このプロジェクトで制作されたメーヴェの飛行イベントが北海道滝川市のたきかわスカイパークで7月31日に行われる「サマースカイフェス2016」にて実施されたという。

飛行速度120km/h

この実物メーヴェ、プロジェクトの中で何度か制作されていて、既に数機が制作されているのだが、2007年に公開された情報によると、最高速度は120km/hにもなるという。
10Lのジェット燃料で約15分の飛行が可能というスペックのようだが、おそらくこのスペックで飛ぶという事は、グライダー的要素よりも飛行機的要素で飛んでいる、という感じではないかと思う。
作中では、ナウシカが風を読んで、その風に乗せてメーヴェで飛ぶという設定になっているが、現実に制作したメーヴェは、低空時の安定性向上の為に大きさも大きく制作しているため、風にのせて…なんて可愛らしい飛び方はしていないと考えられる。
ただ、そうは言ってもグライダー要素もないわけではないし、風の影響は多分に受けるという事だから、一定の空力の上で風の勢いは利用している可能性は高い。
そもそも飛行機は推進力から得た翼の揚力で浮かび上がり、推進力が続く限り重力に逆らい続ける。作中のメーヴェはエンジンを動作させないでも滑空しているので、空力特性が異様に高い乗り物と言えるが、実際には作中ほどの空力はないといえそうだ。
ただ、この形で飛べるという事を実証した事の意味は大きく、八谷和彦氏の活動は評価されるべき活動といえそうだ。

ちなみに、八谷和彦氏はあのピンクのクマがメールを運ぶという「ポストペット」の開発者でもある。レオナルド・ダ・ヴィンチもそうだったが、才能のある人というのは、分野にとらわれる事のない事をする、という事なのかもしれない。

オープンスカイプロジェクト公式
http://www.petworks.co.jp/~hachiya/works/OpenSky.html

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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