普通はこんな事までしない。
オーバークロック
IntelはKabylake世代のコアを既に発表こそしているが、デスクトップ版に関してはまだ未発売であり、発売そのものは来年になると言われている。
とりあえず1月6日にアキバでも姿が見られるのではないかという話もあるようだが、現時点ではまだ一般的に入手できないコアである事に違いはない。
そんなデスクトップ版のKabylakeで、7GHz超のオーバークロック報告がロシアで行われたらしい。上記画像は7GHz超を達成した最高値のデータではないが、大凡の方向性は見て取れる。
ベースクロック101.78MHz、倍率69倍、Vcore2.00Vという設定で7GHz超を達成したという事のようだが、その弊害として安定動作を確保するためにHyper-Threadingを無効にし、コア数も4コアから2コアを無効化するという特殊設定で達成に漕ぎ着けたようである。
つまり、このオーバークロックは、単純にどこまでクロックを上げられるか、という事の挑戦であり、その性能としてもシングルスレッド性能を目的としたものである事から、とてもではないが一般的な用途を想定したものではない事は間違いない。
ただ、このオーバークロックによって、動作6,989MHz時のSuperPiの3,200万桁を4分20秒で計算した記録が樹立され、現時点では総合最速記録となっている。
たしかにこれだけを見れば「スゴイな」とは思うが、正直言えばこんなのは使い勝手の悪いコアであり、普通にはとても使えない。
おそらく熱処理の為に液体窒素等を利用しているだろうから、メンテナンス的にも一般的とはとても言えない。
ただ、この記録から1つ明確にわかる事は、Kabylakeはがんばればオーバークロックで結構なところまでクロックが伸びるという事と、Skylakeの時のベンチマーク結果とクロックで比例しているという事である。つまり、IPC(クロックあたりの実行命令数)はSkylakeと変わらないという事であり、以前から出ている噂どおり、KabylakeはSkylakeよりもクロック向上しかできていないコアだろうという事である。
進化が止まった?
この結果からKabylakeは完全にSkylakeとアーキテクチャ的に変わりがない、と言い切れるかもしれない。
しかもプロセス世代も同じ14nm世代だから、製造における品質の安定からくるオーバークロック耐性の向上ぐらいしかメリットがないかもしれない。
Kabylakeの次に予定されているのは、10nmのCanonlakeと14nmのCoffeelakeが控えていて、さらにその次に10nmのIcelakeが控えている。このIcelakeの次が第3世代の10nm世代であるTigerlakeになるわけだが、Sandy Bridgeから延々と続いてきたアーキテクチャはこのTigerlakeまで続くと言われている。
つまり、この先にアーキテクチャ的に大きな変化が起きるのはまだ当分先という事であり、Intelのx86コアは後数年は大変革はこない事になる。
もしこの話が本当だとするならば、性能面でいえばAMDからすれば大きなチャンスであり、今こそ攻め時である。Zenコアおよびその進化版でかつてのAthlon時代の栄光を取り戻せるかも知れない。
しかし、今まで性能で独走してきたIntelがただAMDの進撃を見ているだけとも思えない。
何かしらのアプローチから今後の予定にテコ入れしてくるかもしれないし、いくつかの予定をキャンセルして新型投入という事もありうるかもしれない。
ただ、そのような舵取りをするにしても1~2年は変化は起きない。断言してもいい。
ここ1~2年の間にPCをアップグレードしようとか考えている人は、この辺りを念頭に置いてIntelをチョイスするか、AMDをチョイスするかを考えた方がいいだろう。
他デバイスの進化を待つ
CPUは既に一定の進化を遂げてしまっている感がある。というか、IT的なデバイスの中で一番進化してしまっていて、既にアタマ打ちになってきている。
むしろ進化が必要なのは他のデバイスであり、ちょっと前であればストレージやメモリの進化だったし、今だとディスプレイの進化待ちかもしれない。
というのは、世間でも最近はやたらと“HDR”という言葉が出ているが、4Kには対応こそしているものの、HDRに関してはまだまだという状況である。
2016年はVR元年と言われたが、結局ソフトウェアは追いついていないし、本当の普及が始まるのは2017年以降ではないかと思う。
メインのコアばかり進化してしまい、他が付いてきていないから結局できる事そのものはまだまだだというのが今…私にはそういう風に見えている。
それでも人間は進化を求め続けてしまう生き物なので、CPU単体の話をすると、どうしても更なる性能向上を求め、些細なベンチマークの変化を気にしてしまう。
ひょっとしたら、今私のようにCPUに拘り続けるような考え方というのは流行らないのかも知れない。
全体のパフォーマンスを見ていく事の方がより重要なのかもしれない。
私自身、そうだという事を理解しているハズなのだが…元パワーユーザーの性なのか、それが出来ずに、KabylakeやZenを待ち続けてしまった。
私のような考え方が一般的とは思わないが、PCの入れ替えを考えている人は、スペックに拘るよりはやりたい事がどの程度の速度で実現可能なのか? という指標で判断した方が幸せになれるだろう。
既にPCの進化は、その段階に入ってしまったという事なのかもしれない。
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