電力高効率CPU

ハイエンド志向といっても、必ずしも最高性能だけを追求するとは限らない。時にその性能バランスがハイレベルで整っているのなら、そこに注目する事だってあるのだ。

国内限定CPU

AMDが日本国内限定モデルとして「Ryzen9 3900」を単体販売する事となった。
Ryzen9のシリーズは「Ryzen9 3950X」「Ryzen9 3900XT」「Ryzen9 3900X」と発売されてきたが、ここにきて末弟の「Ryzen9 3900」が加わった事になる。
高電力効率CPU今までのRyzen9はすべてTDP 105wという設定で販売されていたが、今回加わったRyzen9 3900のTDPはなんと65wと、一段と低い値になっている。
これだけ低いTDPを可能にしている最大の理由は、その動作クロックが低い為と言えるが、それでもベースクロックで3.1GHz、Boost時で4.3GHzとなっているため、極端に遅いわけではない。
このTDPでありながら、12コア/24スレッド構成で、メモリはDDR4-3200に対応し、PCIeは4.0に対応するのだから、普通のRyzen9シリーズと何ら変わる所がない。
これだけを見ると、実に電力パフォーマンスの高いCPUのように感じるが、果たしてその性能はどの程度のものなのか?
それが気になる所である。

ベンチマーク

今回のRyzen9 3900のベンチマークを比較したサイトが以下である。

エルミタージュ秋葉原 撮って出しレビュー Vol.899
https://www.gdm.or.jp/review/2020/0810/357263

このサイトで調査したベンチマークテストを見る限り、全体的に従来のRyzen9シリーズ比較して88~90%程度の性能は出ているようで、処理が外付けGPUに依存するようなものであれば、数%の性能差しかないようである。
それでいて、消費電力は従来のRyzen9が245w超のところ、Ryzen9 3900は175w程度に収まっている。
性能差10%マイナスに対し、消費電力は70wも低くなっている事を考えると、その電力パフォーマンスの高さは異常である。
しかも、この従来のRyzen9シリーズに対して性能差-10%という性能は、他の10コアCPUや8コアCPUの性能と比較しても上を行く性能なのだから、10コア性能以上を欲しいと思った場合の選択肢にもなり得る。
これだけのパフォーマンスを見せるRyzen9 3900を見てみると、ある意味、従来のRyzen9シリーズも調整によってはもっと消費電力を抑えられるのではないか? とすら思える内容である。

Intelの優位性

ここ最近、AMDのCPU人気が高まり、Intel製CPUの人気が下火になっているように思える。もっとも、それは自作PCの世界だけの話かもしれないが、それでも全体的な市場シェアとしてAMD製CPUのシェアが高まっているのは紛れもない事実である。
そんなIntel製CPUだが、当のIntelはゲームなどのシングルスレッドでの処理に重きが置かれる処理に関してはIntel製CPUの方が優位である、と言い続けている。
実際、そのIntelの言葉に間違いは無く、マルチスレッド処理前提のソフトウェアでなければ、Intel製CPUの方がパフォーマンスは上、というケースがある。
この理由は実は単純なもので、Intel製CPUの方がクロックが引き上がりやすい事に起因している。
シングルスレッド性能は、やはりその動作クロックの速さが際立つ結果になりやすい。アーキテクチャでどんなに頑張っても、僅かしか性能は伸びずとも、クロックがちょっと上がっただけでも性能はぐんと上がる。
Ryzenに対し、IntelのCoreは動作クロックの引き上げは間違いなく簡単でより高く上がる。それがその性能に直結しているわけだが、これは逆を言うと消費電力の抑え込みに関してはAMDの方が抑えられているという言い方もできる。
対電力比性能で見た時どちらが優位なのか? それを重要とみると、Intelの言っている事が全て正しいとは言えなくなるのである。
こうなると、どちらを選ぶかは好みの問題。最終的な性能に特化させればIntel製CPUが優位になるし、最終的なバランス性能ならAMD製CPUという事になる。
なので、ハイエンドクラスのCPUではあるものの、好みによってIntel製かAMD製かを決めれば良いと私は思う。
ちなみに…性能を追求したいという人であるならば、私はもっと上のエンスージアストクラスのCPUを選ぶと思うし、そういう人達はそもそも考え方からして異なる。
私なら、ハイエンド~ミドルハイクラスなら、バランス優先で良いように思うが…。

というわけで、MacBook Proを購入したばかりの私が次のメインPCの話をするのはまだ早い時期ではあるものの、時期的には3年以上経過しているので、次を見据えていく必要がある。
PS5やXbox SeriesXが8コア/16スレッドのAPUと言われているので、できれば16コア32スレッドのCPUを搭載したモデルを次期メインPCとしたいところだが…価格はその時どうなっているのやら…。
それとも、今回のRyzen9 3900のように、バランスモデルで組み上げるか?
相変わらず、この手の予想は興味深いものがある。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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