かけるだけで近視を治す?

治療なのか? それとも抑制なのか? それで意味は大きく変わると思うが…。

クボタメガネ

窪田製薬ホールディングスが、100%子会社のクボタビジョン・インクが開発する近視治療・抑制デバイス「クボタメガネ」のプロトタイプが完成した事を発表した。
このクボタメガネは、近視の治療・抑制を目的としたウェアラブルデバイスで、2020年5月に卓上デバイス、8月にはウェアラブルデバイスを用いた臨床試験を行っており、被験者の網膜に1日数時間の網膜周辺部へのぼかした像の投影(これをmyopic defocus stimulationというらしい)で眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が対象眼と比較して短縮するという結果が得られたそうで、概念実証が確認されているものだという。
この臨床結果から、クボタメガネの商業化に向けてプロトタイプの開発を進め、今回はその初期型が完成したという事である。
これで治療ができるのならこんなに良い事はないこの技術はAR(Augmented Reality)のように網膜に人工的な光刺激(今回の場合は画像の投影)を与えて近視の進行の抑制・治療を目指すという独自技術になる。
説明だけを聞いていても、いよいよ近視治療が前進するかのように聞こえるのだが、私が気になるのは、効果として「抑制・治療」と書かれていることである。
近視が一定に進行した場合、既に抑制しなくてもそれ以上進行しない…正確には進行が極端に遅いという状態になれば、抑制ではあまり意味がない。あくまでも、ここは治療できるという技術が確立してくれると、世の中にどれだけの人が救われる事になるか…その影響は計り知れないというものである。
ただ、少なくとも抑制・治療できるといっている以上、今後この技術が進化し、治療効果に大きく貢献する事になれば、救われる人も多いのではないかと思う。私も大いに期待したい。
それと…近視だけでなく、乱視を治療できるようになると、世界的なトピックになると思うのだが、やはり乱視は根底からして違う原因なので、乱視治療というのは無理なのだろうか?

医療機器へ

話をクボタメガネに戻す。
クボタメガネと似たような製品は、既に米国FDA(Food and Drug Administration:日本の厚生労働省のような機関)で認可が下りているCooperVisionの「Proclear Multifocal」と「Biofinity Multifocal」という製品が存在している。こちらも近視抑制効果があるとしている。
これらの製品は、多焦点コンタクトレンズの仕組みを応用して、自然光をぼかして網膜周辺に刺激を与え、単焦点コンタクトレンズと比較して近視の進行を抑制する、という製品になる。
しかし、このクボタメガネは、この理論的根拠を元にしてはいるものの、ナノテクノロジーを使用してメガネに投影装置を組み込み、自然光をぼかす事なく、直接一番効果的な画像を網膜周辺部に投影する事を実現している。既に出回っている先行品よりも短時間の使用でより自然な見え方を維持しながら、高い近視抑制効果を実現させるという事を目指しているという。
今後は、人工的な光刺激を網膜に与える時間や期間を変更して眼軸長に与える影響を中長期的に検証し、改良をすすめて医療機器としての製造販売認証申請の為の臨床試験を行っていく予定という。
まだまだ臨床試験が必要というところだろうが、私が気になったのは「医療機器認証申請」だという事。これ「医療機器承認申請」じゃないの?
私は、仕事がら医療機器の薬事やQMSに携わっているので、この辺りの言葉に敏感に反応しているのだが、認証と承認では大きく異なる。
承認は厚生労働省が直に行うもので、認証となると第三者認証機関でも申請できる事になる。
先進的医療機器だけに、本当に認証機器として申請ができるのかちょっと疑問なのだが…。
ただ、人体に与える影響度等も関係してくるので、認証機器申請で良いのかも知れない。
どちらにしても、世の中に多い近視の治療に役立ってくれる事を祈りたい。

手術はあるが…

眼のトラブルの治療というのは、いろいろなものがあるが、レーシックは危険とか言われていたりして、何が最適解かがわかりにくい。
人によってそれぞれなので、最適解というのは人によるのかもしれないが、眼内の水晶体をレンズへと替えてしまう手術があったりと、この分野も随分と進化してきている。
ただ、保健適用になっていなかったりと、その治療費に関してはかなり高額になる事も多く、手が出せないという人も多いのではないかと思う。
私もどちらかというとその一人で、私はかなり以前から乱視と近視でずっとメガネ生活をしている。
眼を酷使している事がそもそも問題なんだろうと思うのだが、イマドキの日常生活では、これら近視や乱視から逃れる術はあまりないのではないかと思う。
となると、実際近視や乱視になったとき、どのようにしてそれらに対応していくかが問題。
私の世代ではもうメガネなりコンタクトレンズなりで矯正して生活していくのが当たり前の時代であったが、現在ではもちろんそうした矯正という手段もありつつも、少しずつ治療という方向にシフトできる時代になったと考えると、良い時代になったな、と思う。
ただ、この分野がもっと進化して定着していかないと、その治療費の問題で全ての人が恩恵を受けられないという状況は変わらないままになってしまう。保健適用ができる時代になると、その恩恵にあやかれる人がどれだけになるのやら…。

クボタメガネは、そうした治療の一環として今後の眼科治療の最先端をいくモノになるのかもしれない。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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