Snapdragon X Elite

Intelを超え、Appleを超えるというOryonの力はいかほどなのか?

新時代の幕開けか?

Qualcommが年次イベント「Snapdragon Summit 2023」をハワイのマウイ島で開催した。
ここでいくつかの新製品を発表したのだが、特に気になるのがPC向け最新SoC「Snapdragon X Elite」と呼ばれる製品である。
Intelの第13世代Core「Raptor Lake」に対して2倍の電力効率性能を発揮し、同性能であれば68%低消費電力で動作するとし、さらにApple M2との比較ではマルチスレッド処理で50%高速と謳う、ズパ抜けて電力効率の高いSoCである。
Qualcommは、2021年12月に「Snapdragon 8cx Gen 3」というPC向けのSoCを発表しているが、その後PC向けとしてのSoCを発表していなかった。今回の「Snapdragon X Elite」はコレの後継SoCとされ、用途としてはWindows/Chromebook向けとしている。
新時代の幕開けとなるのか?特徴としては、Oryonと呼ばれる自社設計CPUが採用されているという事。
従来、QualcommではARMが開発したCPU IPデザインとなるCortexシリーズを利用してきていたが、Cortex系はIntelのCoreシリーズ、AMDのRyzenシリーズ、AppleのMシリーズと比較すると性能的に見劣りしていた。
そこでQualcommはApple等でARM CPUの開発を行っていたジェラード・ウイリアムズ氏が創業したArm CPUを設計する企業「Nuvia」の買収を2021年に発表、このリソースを利用し、Oryonと称する自社開発CPUの開発に踏み切り、これを「Snapdragon X Elite」に採用した。
発表された「Snapdragon X Elite」には、このOryonを12コア搭載し、最大3.8GHzで動作するという。この12コアの内、2コアは最大で4.3GHzまでブーストするので、OS等は高速起動するという。また、SoC全体で42MBのキャッシュメモリを搭載するようで、これら大容量のキャッシュメモリも高速動作に寄与するようだ。
それと、もう一つ「Snapdragon X Elite」には従来コアと大きな違いがあるのだが、それはBigLITTLE構成ではない、という事。全てが高性能コア「Oryon」で構成されていて、十分な省電力性を持っているという。

CPUだけでなくGPUやNPUも

そして「Snapdragon X Elite」はCPUと謳わずにSoCと言っているのは、CPUだけの構成ではないという事が大きい。Qualcommが自社開発しているdreno GPUを搭載しており、さらに同社のHexagonブランドのNPUも内包している。
グラフィックスコアとAI推論処理プロセッサを内包している事でSoCとしているワケだが、これらの考え方はAppleのMシリーズと同様と言える。
グラフィックスコアの性能でいうと4.6TFLOPSの単精度浮動焦数点演算性能を持っているとし、NPUとしては45TOPs、SoC全体では75TOPsの性能を持つという。
さらに、Qualcommといえはモデムだが、5GモデムとしてSnapdragon X65 5G Modem-RF Systemも内蔵している。これは下りで最大10Gbps、上りで最大3.5Gbpsの通信が可能で、さらにWi-Fi/BluetoothのコントローラであるQualcomm FastConnect 7800 Systemを内蔵し、Wi-Fi 7/Bluetooth 5.4に標準で対応するという。
この他、USB4にも標準対応しており、USB4を最大3ポート、USB3.2 Gen2を2ポート、USB2を1ポート実装する事が可能だという。
これだけ聞いても、モバイル系x86系コアと真っ向勝負となってもワットパフォーマンスでは圧勝し、最高性能でもかなり肉薄するコアではないかと予想できる。

Oryon搭載製品は2024年

「Snapdragon X Elite」搭載のPCの予定は不明だが、Oryon CPUを搭載した製品は来年発表する予定の次世代Snapdragon 8シリーズにも採用するという。
同時に発表されたSnapdragon 8 Gen3には、まだ未搭載のようだが、今後発表される同シリーズSoCには搭載される事は間違いない。
Oryonの性能と省電力性を考えると、性能を重点に置くコアはCortex系から置き換える事になるだろうが、そのあたりはコアコストと相談という事になるのではないかと思う。
だが、少なくともスマホ向けのコアにOryonが搭載される事で、Androidスマホの性能が格段に上がる事は間違いない。
今後iPhoneが性能的優位性を保っていられるかは怪しいとみた方がよいように思う。

話題をぶつけるApple

ただ、Appleもただ「Snapdragon X Elite」の登場を見ているだけ、ではないようだ。
10月31日、Appleは発表会を開催すると通達してきている。
どのような製品を発表するのかは不明だが、新型のMacではないか、という噂がある。というのも、Apple公式サイトのイベントページを見ると、Macのファインダーとして描かれる顔が表示されている。そう考えれば新型Macの発表ではないか? と予想されても不思議ではない。
iMacがこのところ発表されていないので、案外iMacが発表されるのかもしれないし、Snapdragon X Elite対抗の為に新型MacBook Proが登場するのかもしれない。
また、MacではなくiPadシリーズの新型かもしれない。一説によるとiPad Miniの新型がそろそろ出のではないかという話もある。
Appleは技術的な話よりも製品にフォーカスした話題が得意なので、そうした製品で対抗してくるのかもしれない。
どちらにしても、Appleが話題を同時期にぶつけてくるという事はあまりないように思えるだけに、今回のSnapdragon X EliteはAppleとしても軽快すべきコアなのかもしれない。

さて…来年あたりからPC関係の勢力図が少しずつ変わってくるのかもしれない。
Windowsを動作させる環境も、x86だけでなくARMも順当に整ってきている。
今までのようなカタチに留まらない世の中になっていくだろう事は想像出来るので、その動きをしばらくは傍観したいところである。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Share
アバター画像

武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントは承認待ちです。表示されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。

Desktop Version | Switch To Mobile Version