有機ELの世界

 ディスプレイにもいろいろな方式がある。
 液晶もあればプラズマもあるし、そもそもブラウン管もその一つだ。
 だがいろんな方式もそれぞれ一長一短があり、たとえばプラズマは高輝度だが小型化が難しく、液晶は透過のために輝度の確保が難しく、さらに小型なものから始まって大型化が最近になって可能になった。
 ブラウン管は薄型化が難しいが高速書き換えが可能であり、輝度も高い。
 まさに一長一短である。
 そんな各方式の中でも弱点がかなり少ないパネルが存在する。それが有機ELディスプレイだ。
 だがその有機ELディスプレイの弱点はある意味致命的とも言える。
 長所が多いだけにその致命的な弱点さえ克服できれば…という思いの人も多い。それほどに有機ELパネルの画質は高画質であり、応答速度は高速なのである。

 そしてその致命的な弱点を持ちつつも、Sonyが11型の有機ELテレビを発売にこぎ着けた。
 来たるべく未来型テレビの始まりである。


 有機ELパネルの致命的弱点とは、その寿命である。
 今回、発売が発表となった有機ELパネル搭載テレビ“XEL-1”は、毎日10時間視聴して10年という寿命設定である(約3万時間)。
 これが決して長い寿命でない事は、言うまでもなくほとんどの人が理解できるはずである。
 なぜこんなにも寿命が短いのかといえば、それは有機ELパネルの有機EL材料にある。色の劣化が問題なのである。
 一応、有機EL材料も新しいものを採用し、新設計の回路を搭載したからこそ3万時間が確保できたわけだが、それでも他デバイスからみて短いと言わざるを得ないのが今の状況だ。
 発光体そのものが色を持っているため、色の再現性やコントラスト比は他デバイスから比べて圧倒的に有利である反面、その発光体がもつ色の劣化が自らの寿命を決定づけてしまっている。
 惜しい。あまりにも惜しい。
 もし、これが10万時間OKのパネルなら、液晶との戦いは今すぐでも可能だろう。
 コントラスト比100万:1以上と言われている有機ELディスプレイは、ホントの意味での黒を表現できるデバイスだ。
 しかも発光体そのものが色を持つため、液晶のようなカラーフィルタが必要なく、最終的なディスプレイの薄さを3mmにまで可能にした。
 これらの長所を持っているからこそ、寿命が致命的な欠点として浮かび上がる。
 もし寿命が今の3倍に伸びたなら、液晶と真っ向勝負できると私は考える。
 そして真っ向勝負ができるようになったなら、おそらく価格はもっと安くなる。
 有機ELディスプレイは、まさにそこからが勝負なんじゃないかと思う。
 技術的にはものすごい高技術なんだが…
 訴求力としてはまだ液晶には勝てないんだろうな…

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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