MMORPGの幕引き

真・女神転生IMAGINEがサービス終了となる。

9年に幕引き

2007年4月4日からサービスが開始された真・女神転生IMAGINEというMMORPGが、今年5月24日11:00をもってサービス終了となる事が発表となった。
約9年間という長きに渡り一つのゲームサービスを継続するというのは、結構大変だったのではないかと思う。
普通に継続させるだけならそうでもないが、真・女神転生という看板を背負っての継続だけに、難しい問題など沢山あったのではないかと思われる。
というのも、真・女神転生は権利関係がとても複雑で、今サービスを運営していた会社が全ての権利を有しているわけではなかったため、何かイベントを企画するにしても、(おそらくだが)その一つ一つに対して権利元に確認を取ったりする必要があり、企画を作っては練り直し…の繰り返しが結構あったのではないかと予想される。
こういうのは、権利関係が発生する仕事をやった事がある人であれば容易に想像が付くが、そういうことの経験がない人からすると、まどろっこしい事抜きにして面白い事をしてくれればいいのに…と思ったりする所だろう。
だが、権利ビジネスで売上を上げているところは、この権利という特権が全てであり、ブランドを維持する意味でも、全てをコントロール下に置いておかねばならない関係から、一つの企画にしてもイロイロと制約を加えてきたりする事が多々ある。
もっとも、何ら問題がなければそのままスルーされたりするのだが、複数で権利を持つ場合などは、各社で思惑が異なったりする事もあったりするため、そうした権利を受けてサービスを行っているところは、その狭間に入って落とし所を探り続けなければならない。
そうした事を9年続けてきた、というだけでもスゴイ事である。まぁ…ひょっとしたら、権利確認がほとんどスルーされていたのなら、私が言うほど大変じゃなかったのかもしれないが。

終わりのないゲーム

オンラインゲームというのは、基本的に終わりがない。
というか、シナリオ的に終わりを作ってしまうと、そもそもサービスを継続出来ない為、一定のストーリーのエンドは作っても、すべてのエンドを作るなんて事はあり得ない。
だが、どうしても終わらせなければならない時が来る。
それは、登録プレイヤーから入ってくる売上が採算分岐点を下回り、運営費を圧迫しつづける場合である。事実上、運営不可能に陥れば、サービスを終了させるしかない。
真・女神転生IMAGINEも、そうした運営不可能に陥ったからこそ、サービス終了という運びになったのだと思うが、それはつまり、運営側が面白いコンテンツを継続して出し続ける事ができなくなった、という原因も一因にあるのだろうと思う。
もちろん、真・女神転生そのものの人気に陰りが出てきた…なんて事もあるかもしれない。最近は、派生であるPERSONAは比較的好評ではあるが、本家である真・女神転生シリーズは、ゲームはそれなりに売れているかも知れないが、コンテンツとしての魅力を新規ユーザーに開拓できているか? というと、少々苦戦しているように思えてならない。
私は昔から真・女神転生ファンではあるが、正直、真・女神転生はデビルサマナーシリーズのソウルハッカーズを頂点にして、その後面白さは失墜した、と思っている。
逆にPERSONAは新しい世界を開拓する事に成功したと思っている。
どちらも同じ神話を扱った作品ではあるが、その世界観に大きな明暗ができたのではないかと思う。
もし、今回のサービス終了が真・女神転生そのものの人気に陰りが出てきた事が理由だとしたら、それはこの真・女神転生IMAGINEのサービスを行っていたケイブだけの問題ではないだろう。
作品全体を盛り上げる為に、コンテンツ元が何か仕掛けを行っていかないと、再ブレイクというワケにはなかなかいかない。
逆に、ケイブ側として真・女神転生IMAGINE内で面白い試みが出来ていなかった事が原因だったとしたら、それは運営サイドとしての企画力の低さを露呈した事になる。
どっちにしても、あまり喜ばしい事とは言えない。

面白い時に幕引きできるか?

時々思うのだが、オンラインゲームで、内容が面白いと評価されているまさにその時にサービス終了という幕引きが可能なものだろうか?
前述した話とはまさに逆の事を言っているとは思うのだが、そもそもエンドのないゲームにあえてエンドを作り、オンラインゲームでありながら、メインストーリー中心に話を進めていき、クライマックス終了と共にサービス終了…という事が可能なのだろうか?
こんな試みを考えたメーカーが今まであるのだろうか? という疑問しか出てこない話ではあるのだが、個人的には強いコンテンツを作る一つの手法になるような気がしてならない。

これは、想像力というものに期待する一つの「逃げ」かもしれないのだが、コンテンツとして面白い時期に一つの終焉を与え、その後の話はユーザーの想像力に期待する、或いは、それを後押しするように、外伝と称して公式なストーリーを後付けしたりして、コンテンツを周辺から煽り立てる事ができたなら、或いはひょっとして…と思う時がある。
これは、映像作品の原作小説の方が、その映像作品より面白い、という人がいるという事の考え方に等しい。つまり、映像として一つの結論が出てしまっているよりも、受けての想像力の中に存在する原作小説の方が、その面白さは圧倒的に上、というる心理と同じ事である。
昨今は、スピンオフ作品などが当たり前に出てくる世の中になったため、メインコンテンツそのものをキッパリと人気のあるウチに〆てしまい、そこから派生作品を展開して煽っていく事によって、メインコンテンツの魅力をさらに引き上げたりする事が可能だったりする。
もちろん、全ての作品がこのような手法を可能とするわけではないし、スピンオフ作品の完成度のハードルを引き上げる事にもなるのだが、惰性でメインコンテンツを腐らせていくよりはずっと建設的なコンテンツ制作手法だと私は思う。
このようなやり方を、オンラインゲームでやってみたら、果たしてどうなるのか?
私の中では、非常に興味深いテーマである。
どこか採用してくれたりしないだろうか?

ゲーム業界そのものの今後

こんなのは、その業界で生きていく人が考えればよい事なのだが、私は今のゲーム業界そのものが良い方向に進んでいるとは思っていない。
大手ゲームメーカーが次々とソーシャルゲームの売上にひっぱられて、コンソール版ゲームから撤退をしたり、或いは鞍替えしたりしている現状は、ゲーム市場そのものを衰退化させているように思えてならない。
もっとも、最近のゲームは映画と同じで制作費がバカ高くなる傾向にあり、よりこぢんまりとしたソーシャルゲームで確実な利益を上げていく、あるいは失敗しても小さな失敗で済むというリスク回避の為にソーシャルゲームに向かうのかもしれないが、コンソールゲーム或いはPCゲームのような一定の規模を持つ作品を作らなくなるのは、自らの足切りに思えてならない。
詳しい話や細かい話を書き始めるとこれだけでとんでもない内容になってしまうため、これ以上深みにはまる事は書かないが、今は業界そのものがヘンな方向に向かっているように思える。
また、電機メーカーと同じように、面白い製品だから作ってみよう、というような挑戦的な試みが出来なくなってしまっているのかも知れない。
何をするにもリスクというのものが目の前をチラつくようになった為、結果面白いアイディアや製品に挑戦するよりも無難なものに落ち着いてしまうという兆候があるのかもしれない。
こうなると、前衛的な作品など生まれるハズもないし、新たな価値を消費者に見せる事などできようはずがない。
この問題は、オンラインゲームであろうとそうでなかろうと、全てにおいて共通の事だと思う。

少なくとも、いろいろな理由で真・女神転生IMAGINEはサービスを終了する。
真・女神転生IMAGINEをプレイしていた人たちは、今後どこに流れていくのか?
或いはゲーム業界から離れていくのか?
一つのサービスが終了するという事は、そこに参加していた人が何かしらの変化を強いられるという事である。
できるなら、そうした事が起きないで欲しいと思う所だが、ビジネスである以上、避けられないのもまた事実である。
ゲームメーカーは、ユーザーのお金と時間を占有するサービスを自らが提供しているという事を自覚し、より良いサービスを提供する事を考えて欲しいものである。
何より、自分達が面白いと思わないものを他人が面白いと思う訳がない。この点だけは外して欲しくないものである。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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