PS3とWiiが同列に並ぶことができるのか?

 先日記事にも取り上げたPlayStation Moveモーションコントローラーについて、ちょっと考えてみた。
 と言っても、私が得られた情報の中から考えた事であるため、技術的な部分は結構度外視していて、どちらかというとこれから先普及していくのかどうかというところに論点を持っていっている。 
 PS3の新しい入力デバイスである“PlayStation Moveモーションコントローラー”だが、これを導入する事でWiiと同じような操作感覚を得られるというのは、よく分かる話だと言える。
 だが、実際にはPlayStation Moveモーションコントローラーの方が精度が高く、導入する上での技術的ハードルが低いというメリットをもってしても、実際にユーザーが使用するかどうかという問題は全く別の次元の話である。
 ハードウェアの仕組みを知れば知るほど、PlayStation MoveモーションコントローラーはPS3に向いているハードと言える。
 そもそも、画像認識処理で座標を拾うという時点で、Cell B.E.のSPU(SIMD演算に特化したプロセッサ)にはマッチングした手法である。そのSPUを1個使用するだけで最大4つのPlayStation Moveモーションコントローラーを処理できるというのだから、このデバイスが生まれたのはむしろ必然と言えたかも知れない。
 この必然性は、認識として使用するPlayStation Eyeの設計思想から考えても持ち得ていたと言える。カメラ側に処理プロセスを持たず、得た画像をそのままCell B.E.へと引き渡す事で、高速なプロセッサが画像を認識処理するというプロセスは、PlayStation Moveモーションコントローラーにとって理想的である。
 詰まるところ、最初からその利用方法を想定していたデバイスがPlayStation Moveモーションコントローラーであり、それが今ようやく形になろうとしているという事である。


 だが、こうした必然から生まれたPlayStation Moveモーションコントローラーも、前述したようにユーザーが利用するかどうかは必然とは全く別のベクトルの話。
 Wiiはその登場当初からリモコンによる操作という事を全面に展開していたため、ユーザーに訴求しやすかった。
 だが、PS3は当初は非ゲーム機、途中リッチなゲーム機というスタイルでユーザーに訴求しており、そのインターフェースは従来からのゲーム機と同じというスタイルを崩していない。つまり、このPlayStation Moveモーションコントローラーで新たなユーザーを獲得するための動きを展開しなければならない。
 それは、ある意味Wiiが開拓した一般層にPS3を売り込む事に近い。
 PS3の価格をどう見るかで、それらが決まるような気がするのは多分私だけではないと思う。
 たしかにスリム版のPS3は従来機から比べて随分とコストダウンできている。
 だが、Wiiと比べてどうか? となると、そのコストダウンですらまだ訴求力が足りない可能性がある。
 確かにPS3はいろんな事が出来る。
 Blu-rayソフトを見る事もできれば、torneを接続して地デジも視聴できる。しかもそのtorneの地デジ画質は、PS3の画像アップコンバート機能とノイズリダクション機能で通常のHD画質からさらに上の画質へと調整されるというオマケがある(らしい。詳しくはコチラ)事を考えると、この追加要素は大きい。
 また現在は汎用OSのインストールができなくなってしまっているが、もともとLinuxが動作する強みもあった。
 それらの汎用性と拡張性がある事がWiiとの差別化になるのは間違いないが、コスト差を埋める要素になるか? となるとユーザーからすれば複雑な心理ではないかと思う。そのユーザーが一般層に多いライトユーザーであればあるほど、コスト差は埋めにくいはずだ。
 正直、このPlayStation MoveモーションコントローラーがPS3の発売当初から存在していたなら、私はPS3はWiiと比較してここまで普及台数に差は生まれなかったように思う。
 たしかにコストは高かったが、購入層のWiiへのリモコン操作に対する興味は薄れていたように思う。
 私が知る限り、Wiiのデバイスへの興味は、その購入を明らかに促したと思うし、コントローラーという一般には受け入れがたいデバイスからの脱却に大きな意味を持たせたと思う。
 もし、コスト的に受け入れられなかったとしても、PS3が同じ要素を持っていたならば、Wiiの斬新性は際立たず、次世代ゲーム機の標準デバイスとして新しい局面が来た事を世間に知らしめるという要素へと切り替わっていたように思う。
 SCEはPS2の頃からカメラを利用したゲームというものを開発していた。もちろん国内ではそのアピールに失敗し、うまく普及しなかったという事実があるが、任天堂よりも先んじてPlayStation Moveモーションコントローラーに繋がる技術に着手していた。
 日本での失敗に問題があったのか、それとも他に要因があったのかは分からないが、結果的にPS3の登場時にはPlayStation Moveモーションコントローラーの話は全く出ていなかった。
 このタイミングの悪さがPS3の運命を決定づけたようにすら思う。いわば、普及率No.1のWiiの懐を脅かす武器を持っていながら、それをちらつかせる事すらできなかったのだから。
 結果として、PS3登場から3年、ようなくPlayStation Moveモーションコントローラーが投入される。
 日本国内での展開はまだ分からないところが多いが、Wiiと同等、もしくはそれ以上の事ができるようになるデバイスの登場で、PS3がこれから先どう変わっていくのか?
 すでにPS4の話が出ているが、ハード的にはそんなに拡張・拡大の傾向にはないといわれている。事はすでにハードウェアの話ではなく、コンテンツとして新しい展開をどう切り開いていくかというところに論点がズレはじめている。
 PlayStation Moveモーションコントローラーはその新しい展開を握る一つのデバイスと言える。
 今後の展開を楽しみにしつつ、SCEの次なる一手に期待したい。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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