一つの節目

 私が3年前に実家に戻ってきた理由。
 それは、父が入院し、実家の会社が傾き、一家族が背負うにはちょっと厳しい借金が残ったという状況にある。
 もちろん、私が実家に戻ってきた事で借金返済の流れが好転したのかといえば、そう大きな変化はなく好転したりしない。
 地方の就職は厳しく、賃金設定も東京とはかけ離れているからだ。
 だから返済が好転するという理由で戻ってきたのではない。
 生活する場を一つにまとめ生活諸経費を一本化した方が、再就職時の給料が以前から比較して減額となっても、まだマシな結果だったからである。
 実家に戻ってきた初年度は就職もままならない状態で、安い労働賃金を覚悟で近くの総合病院の夜間受付をした。
 昼間、アルバイトでもしようかと考えたが、そのアルバイトも近所の学生たちが主役であり、私の入り込む余地はなかった。
 このままでは返済も滞ると限界を感じたとき、別の仕事を模索しなければと今の会社に何とか入り込んだ。
 以前やっていた仕事と比べ、自分のモチベーションもポテンシャルも最低だったが、生きていくというただそれだけのために自分を犠牲にした。
 実家に戻ってきた事で、私は持っていたものの9割以上を棄ててきた。
 そして実際に戻ってきて、その未来まで棄てる事を余儀なくされた。
 その棄てる事で成立してきた私の生活が、今ひとつの節目を迎えようとしている。


 今の我が家の財政状況で一番大きな負担は、実家が会社経営をしていたとき取引していた銀行からによる借金だった。
 月の返済額もかなりのものであり、まともに働ける人間が少ない我が家庭ではかなりの負担になっていた。
 実は、私が実家に戻る前、つまり3年前よりもう少し前、私は東京に居ながらにして実家の借金を多少なり負担していた。
 その負担がまさにこの銀行からの借り入れ返済だったわけだが、結局私が東京にいての返済では追いつかなかったため、私が実家に戻るという選択となった。
 つまるところ、もう5年以上もこの借金を返済していた事になるのだが、この借金が今月、最終返済を迎え終了した。
 ホントは途中で返済額を減らしてもらい、返済期限を延ばしてもらおうかという話も家族の中からは幾度となく出ていた。
 しかし、それでは埒があかないと私は今の返済額による返済を強行した。
 生活は最低だし、何一つ良いこともなく、辛い日々が続いたが、それでも今一つの返済が終了し、来月から他に残っている借金に注力する事となる。
 一つ、大きな返済額が無くなる事で、来月からは多少なり楽になるだろうとは思うが、そう甘い事を言ってもいられない。
 公的な借金はまだ他にもある。
 公的でない借金、私的、つまり親戚等に借りた借金を含めればまだまだ先は長い。
 私の戦いはまだまだ続くのだが、一つの節目を迎えたのは間違いない。
 あとは今後の私の仕事だ。
 一つの大きな返済額が無くなった事で、自分の道をもう一度見直すチャンスと向き合えるようになった。
 楽になったワケではないが、チャンスを逃さないように、じっくりと考えていこうと思っている。
 人の運命ほど流動的なものはない。
 ナニがどこで化けるのか?
 そんな事、知っているヤツなど此の世にいないのだから。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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