30億トランジスタで次世代を迎え撃つNVIDIA

 NVIDIAが次世代ビデオカード技術を発表した。
 “Fermi”と名付けられたその次世代GPUアーキテクチャは、そのトランジスタ数が30億に達し、単純に現世代のGT200との性能比較において2倍からそれ以上の処理能力があるだろうと思われる。
 というのも、従来SP(Streaming Processor)と呼ばれたコア(今回それはCUDA coreと呼ばれるようになった)は240基から512基と2倍以上増量され、またメモリ周りも従来GDDR3だったビデオメモリをGDDR5を採用、さらにGPU内にあるすべてのSM(Streaming Multi-processor)からアクセス可能な共有型のL2キャッシュを768KB備えている為である。
 この構成はGPUというよりは昨今のマルチコアCPUに近い感じで、従来より高速なメモリとインターフェースを実装した事で、より多数のコアが並列動作するGPUをフルサポートさせる構成と言える。
 
 しかし、40nmプロセスで30億トランジスタとなると、次のNVIDIA製品の価格はAMDのRadeon HD 5800シリーズよりも高額となる事はほぼ間違いないのではないかと思われる。


 現時点でRadeon HD 5800シリーズと単純に比較できないのは、NVIDIAが今回のFermiの明確なスペックを公開していないという事と、現在発表された製品がHPC向けのTesla製品しか披露していないからである。
 現段階で推測される性能は、所謂グラフィックボードであるQuadroやGeForceとは異なるハイエンドであり、この性能がそのまま民生に降りてくるかはまだ不明だ。
 だが、これに近い性能である事も考えられるため、性能比較で言えばRadeon HD 5800シリーズと真っ向勝負できるものがあるだろうと思われる。
 FermiとRadeon HD 5800シリーズが明確に違う部分を探すとするならば、その性能へのアプローチの仕方が全く異なるという事。
 今回のFermiはRadeon HD 5800シリーズよりもさらに進んだプロセッサ構成を採っている。
 特にメモリ周りは相当に進化している。Radeon HD 5800シリーズは、コアは倍増させたがそのほかの部分は従来の4800シリーズを踏襲している。
 逆を言えば、それでコストダウンと低消費電力を実現しているとも言えるのだが、NVIDIAはあくまでも性能重視かつ汎用コンピューティング重視というスタイルを貫き通した結果でFermiを構成している。
 おそらく、コストも高ければ消費電力も高いと思われる。
 パワーユーザーがどちらを支持するかは目に見えて分かる事だが、一般ユーザーから見た時はまた違ったバランスに見えることだろう。
 Fermiに関しての詳しい情報は下記で確認してもらいたい。
impress PC Watch「後藤弘茂のWeekly海外ニュース」
NVIDIAが次世代GPUアーキテクチャ「Fermi」を発表
 私は今回のFermiが対Radeon HD 5800を意識したものではないだろうと思っている。
 恐らく意識している仮想敵はIntelのLarrabeeではないだろうか。
 真の汎用コンピューティングプロセッサ対決は、もうしばらく後のターンでハッキリするのではないかと思っている。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. ruser より:

    遂に動きがありましたね。
    しかも思いっきりハイエンド仕様で。
    手が届く値段とは思えないので買うわけじゃないですが、今後の展開が楽しみなチップですね。
    物理演算が一般化しつつあるので、流れはまだAMDよりNVIDIAじゃないかと思います。
    やはり警戒すべきは王者Intelですかねー。

  2. 武上 より:

     物理演算に関してリードしているのはNVIDIAかもしれませんが、AMDも何もしていないというワケではないので、性能的には互角と言っても過言じゃないと思います。
     問題は、処理するハードにあるのではなく、物理演算させるコードにあると思われるので、如何に最適化されたプログラムを普及させるか、という所に焦点が定まるでしょう。
     そういう意味では確かにNVIDIAは一歩リードしているといえると思います。
     AMDの強みはGPU単体ではなく、CPUとGPUの合わせ技にあります。
     NVIDIAは残念ながらx86系CPUを持っていないので、その状態でIntelのLarrabeeと戦うためには、GPUをより汎用とするようなユニットをトランジスタとして載せなければならないという事です。
     この仕様があるからこそ、NVIDIAはAMDよりもダイサイズが大きくなってコストが上がる事を覚悟してFermiのような30億トランジスタなんてものを投入してるのだと思います。
     と言うことは、AMDはCPUとGPUを繋ぐバスの強化などができれば、同じような性能、もしくはそれ以上の事ができるのかもしれません。
     …まぁ、これから先どうなるかなんて私にはわかりませんがw

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