ニンテンドーの戦略とPS3が目指したもの

 ロサンゼルスで6月5日から世界最大のゲームショーであるE3 2012が開催される。
 それに合わせ、各社いろいろな事前発表が始まったが、その中で個人的に任天堂の発表が興味深い。
 任天堂は周知の通りWii Uを現在開発中で、そのWii Uはタブレット型コントローラーと言ってもいい液晶モニター付きのコントローラーを売りにしている。
 それ自体は単にタブレットをコントローラー代わりにすると考えれば、別に真新しい話ではない。
 それにWii Uが目指す方向性も実の所そんなに新しい事ではなく、以前にSCEのPS3が目指した環境と同じ事をタブレット型コントローラーで実現する、という所に向かっている。
 使用するデバイスが異なるから夢が実現できる…という事なのかもしれないが、新しさというところには何も響くものがない、というのが私の感想である。
 要するに、リビングの中枢となる機器を目指しているというコンセプトは、そのまんまPS3のソレである。
 違うのはコントローラーの液晶画面でWii Uが生成するリッチグラフィックスを遅延なく表示させ、その場にいる人達全てが同じような体験を可能にしている、という事に尽きる。
 まぁ、そういう事をさもスゴイ事に魅せるようにして情報公開するのが、ショーテクニックなワケだが、最近の任天堂はそういうショーテクニックを多用しているだけのような気がしてならない。
 横井軍平氏の“枯れた技術の水平思考”という名言とは些か方向性が違ってきている…最近そう思えてならない。

 また、このWii U以外に噂に出ているものに“ニンテンドー3DS LL”がある。
 日経新聞に掲載された情報のようだが、画面は現行モデルの約1.5倍となる4.3型の模様。
 発売時期は早ければ日米欧で今夏発売というから、結構前から検討されていた事なのかもしれない。
 ニンテンドー3DSは最初のスタートダッシュ以降、普及速度が急激に低下したものの、今年の5月の段階で国内販売台数は600万台を超えている。
 価格を15,000円にしてからの売れ行きは好調のようだが、同時に原価率はかなり下がったハズであり、利益に繋がりにくい体制である事に違いはない。
 ここにきてLLの投入は、そうした事情を省みない手法のようにも見えるが…その実態はどうなんだろうか?
 本体のバリエーションを増やす前にキラーソフトを多数揃える方が先なのではないかと思うのだが…LL投入はさらなる市場支配を強化する為の一投なのだろうか?



 この任天堂の動きにSCEがどういう動きをするのかが気になる所。
 PS VITAは完全に乗り遅れてしまっている。ソフトがないのが最大の問題であり、PS VITAそのものの技術的問題ではないはずだ。
 何しろ、PS VITAとPS3でWii Uと同じ事ができるのだ。それはPS VITAが登場したときにSCEが示した道の一つである。
 任天堂が派手にショーテクニックを駆使している今、SCEも負けてはいられないハズだが、どういう石を投げてくるのか、非常に気になる所である。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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