SIMロック解除義務化?

現在、総務省が有識者会合を行って、SIMロック解除の義務化やクーリング・オフ制度の導入などが方針として打ち出されている。

SIMロック解除は諸刃の剣

私個人の希望からすれば、SIMロック解除はぜひやるべきだと思っている。
だが、実は日本市場を見た時、このSIMロック解除が必ずしも正しい結果を招くとは言い難い話であったりする。
というのも、日本ではキャリアが行っているサービスが回線提供だけではなく、いろいろなサービスを行っている関係から、SIMを簡単に変えられる仕様にする事で、それらサービスを受けられなくなるなど、多種多様な問題が顕在化してくるからだ。
さらに、各キャリアがハードウェアを取り扱う事で、通信料で端末代金をある程度カバーしている関係で、意外なまでに格安で端末が提供されている実態があるが、SIMロック解除となる事でキャリア側は確実に通信料を徴収できない可能性から、そうした端末代金の割引サービスを提供できなくなる。
そうなれば、おそらく端末代金は1台あたり10万円弱くらいに跳ね上がる事になる。今のスマートフォンの原価等を考えれば、実の所それぐらいの価格になってしまうのである。

そうなると、全ての人がSIMロック解除を望むとは考えにくい。
日本国内では、いわゆる3大キャリアでは通話できないエリアが限りなく狭いため、SIMを切り替える事で使用可能エリアを広げたりする必要がない。
ところが海外ではSIMを切り替える事で利便性を上げる必要があったり、価格を抑えたりする必要がある為、SIMロック解除がとても大きな意味を持つ。
つまり、日本国内ではその必要性があまり大きくないのである。もしあるとするならば、キャリアを変えた時に同じ端末を継続使用できる、という事であり、もちろんそれにはコストという意味で意義はあるのだが、通常は乗り換え時に端末ごと変えてしまう為、必要性そのものがない、と考える事もできる。

もし義務化されるとしても…

そういう状況から考えるに、SIMロック解除が義務化されるにあたっては、いろいろな意見が出てくる事になるだろう。
例えば、SIMロックされた端末をユーザーが望むなら各種サービスを実装したSIMロック版を提供し、SIMロック解除された端末を望むユーザーにはSIMロック解除版を提供する、といった手法である。
また、一定期間はSIMロック状態にしておき、その期間が過ぎた段階でユーザーの任意でSIMロック解除を可能にする、という方法も考えられる。
単純に全てをSIMロック解除するのではなく、キャリアがビジネスを行う上でとてつもない損失を生まない形で、なおかつユーザーにもメリットのある方法が模索されれば、このSIMロック解除化は往々にして受け入れられるのではないかと思われる。

ちなみにクーリング・オフ制度の導入に関しては、今までそれが行われていなかった事の方が問題ではないかと考えられる。
ただ、明らかにクーリング・オフ制度を悪用するケースにはユーザー側のペナルティが必要だろう。これは何もスマートフォンに限った話ではないだろうし、そうしないとキャリアとして大きな損失を招くことになる事は言う迄も無い話である。

家電量販店の参入で価格は変わらない?

iPhoneを扱う業者の契約がどのようなものかにもよるが、もしSIMロック解除が何らかの形で実施され、またそれによってキャリアからいろいろな特典を受けられなくなる事態になった場合、私はiPhoneなどの端末は普通に家電と同じような取扱にすべきではないかと思っている。
つまり、家電量販店などで端末を売り、そのままキャリアと回線契約をする、という形である。
今とあまり変わらない…という人もいるかもしれないが、キャリアは端末本体に関して何ら関与しない、という立ち位置になる。なので、端末の割引等ついては家電を買うような形になり、SIMカードに関してはMVNOのカードのみの契約のようなスタイルになる感じである。
もし、このようなスタイルになった時、おそらく端末の総金額に関して言えば、家電量販店が大量に売りさばく事を前提に価格は大幅に上がらないかも知れない。
問題は売り方の変化をどのように受け入れ、展開していくか? という所に尽きるだろう。
もちろん、その問題はメーカーも販売店も同じである。

総務省の有識者会合はまだ続くだろうし、今後どのように変化していくかはまだわからない。
ただ、どんな形で決着が付くとしても、ユーザー視点で検討して戴きたいものである。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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