60fps動画再生

ゲームなどは60fpsが随分と浸透してきているが、動画ではまだまだな感じ。

滑らかに見える意味

動画撮影でも最近は60fpsという、秒間60コマの動画が撮影できる機材が取り上げられているが、提供されている動画ソースの大部分は秒間30コマ、つまり30fpsのものが多い。
最近の液晶モニターは、その最低駆動が60Hzになるわけだが、4Kモニターはその表示解像度の高さゆえに30fpsが限界という製品もあったりして、ここに来て秒間何コマの再生が可能かどうかの話が急浮上しているように見える。
そもそも、単位も異なるこれらの数値はどういう意味なのか? 知ってる人からすると常識な所もあるが、知っておくに越した事はない。
fpsというのはフレーム・パー・セコンド、つまりフレームを秒で割る、1秒あたりに何フレームなのか、という意味である。60fpsなら秒間60フレームという意味である。
Hz(ヘルツ)というのは周波数単位の事で、1秒間に周波、つまり振動する電圧や電流、音波などが方向を変える数を意味する。60Hzなら秒間あたり60回方向を変える、という事であり、モニターなどで使われる場合は、1秒間に何回画面を書き換えるか? という意味になる。
つまり、モニター全面を対象にした場合、このfpsとHzはほぼ同義という事になる。
動画データが60fpsで、モニターが60Hzなら、1秒間で60回のモニターの書き換えに対して60フレーム、つまり同じタイミングでモニターの書き換えとフレームの表示をしている、という事である。この場合、同期が取れているという言い方をしても良いかも知れない。
この意味が分かれば、通常の動画データの30fpsに対して、デジタルの液晶モニターの60Hz表示の場合、液晶モニターが2回画面を書き換える度に1回動画フレームが変更されている、という意味も分かると思う。
正直言えば、コレでも十分滑らかに表示されているとは思うのだが、人間というのは“慣れ”の生き物で、ずっと30fpsの動画を観ていた状況でふと60fpsの動画を観ると、それが恐ろしく滑らかに動いているように見えるのである。
おそらく、ほとんどの人が60fpsもあれば滑らかに動いている、と感じるのではないかと思う。

30fpsを60fpsへ

しかし、通常の動画の場合、動画そのものが30fpsで作られているため、それを滑らかに見ることはできない。
2回の画面書き換えで1フレームしか表示できない、つまり1フレーム足りないのだから仕方が無い。これを60fpsにするためには、1フレーム目と2フレーム目の真ん中に、存在しないハズの1.5フレーム目を作ってやるしかないのである。
当然、意味のないフレームを生成しても意味がないのだが、1フレーム目と2フレーム目の画像を比較して、その中間点の変化をもたらすフレームを生成できれば、それは通常より滑らかな映像となる。これがフレーム補完という仕組みである。
このフレーム補完を昔は専用のハードウェアを使って行っていたのだが、最近のCPUやGPUの発達によって、ソフトウェアで簡易的に行う事ができるようになった。それが巷に出回っているフリーウェアでも可能な時代が、今や現実となっている。
このフレーム補完したデータを保存する術もあるのだが、今回はとりあえずフレーム補完した映像をリアルタイムに再生する、という方向で、自分の環境を整えることができないか? という事を試してみた。
実は、とても簡単なのである。
SVP(Smooth Video Project)と呼ばれるプロジェクトがあり、そこでは従来複雑だった各フリーウェアの連携を自動でやってくれるソフトがあるのである。ソフト、といっても、インストールするソフトはいくつかのフリーウェアの集合体であり、一つのソフトをインストールすればOKというものではないのだが、基本的にSVPのサイトにあるインストーラを導入すればあとは勝手にやってくれる。
便利な時代になったものである。

問題もある

主として、このSVPが使用するフリーウェアは6つある。

・Media Player Classic Home Cinema
通称MPC-HCと呼ばれる再生プレーヤー。
・MadVR
ビデオカードに直接働きかけるレンダラ。
・LAV Filters
動画の映像と音声を分離処理するスプリッター。
映像と音声のデコーダも兼ねる万能デコーダでもある。
・Avisynth
倍速補完するコマ生成ソフト。かなり処理は重い。
OpenCLが使えるのでビデオカードが対応していれば問題ない。
・FFDSHOW Tryouts
AvisynthとMPC-HCとの橋渡しに必要となるソフト。
・RECLOCK
生成したフレームを割り込ませると音声がズレるが、そのズレを調整するソフト。
音声のアップサンプリングも可能。

と、これら6つのアプリの調整を行っているのがSVPという事になる。
但し、RECLOCKのみ音声デバイス指定は使用する環境で異なる為
手動設定が必要になるかもしれない。
ただ、概ねSVPをインストールするとそのまま何もせずに利用可能と言える。
これでMPC-HC上で動画を再生するとフレームが補完された動画が再生されるようになる。MPC-HCの表示メニューから「統計」を選んでみれば、今何フレームで再生しているかが解る為、見てみるといいだろう。

但し、使ってみて分かったが、問題ももちろんある。
ちゃんとフレーム補完してくれないケースもあるのだ。

専門的過ぎてよくわからない…

私が手持ちにある動画をいくつか再生してみたところ、いくつかのファイルはフレーム補完をしてくれないケースが存在した。
不思議なのは同じmp4データであっても、フレーム補完しないものもある、という事である。こればっかりは再生してみないと分からないため、どの方式がフレーム補完されないもの、と今の私には言う事ができないのだが、ちゃんと動作しないものもあるのだ。

また、これら6つのソフトとそれらをまとめ上げるSVPは、すべて32bit版だという事である。
MPC-HCなどは64bit版が存在しているし、FFDSHOW Tryoutsにしても64bit版が存在するのだが、手軽に行うには32bit版を使うしかない。
なんとかして一部ソフトを64bit化できないか、調べて見たりもしたのだが、上手くいかないようだ。
なのでフレーム補完した動画を観たい場合には、現時点では32bitアプリで動作させるしか方法がない。
今や64bit環境も随分と増えてきているだけに、ココは残念な部分である。
もうちょっと意味がわかりやすければ…64bit化はできない事はないかもしれない。

以上、動画の60fps化は簡単すぎるほど簡単である。
だが、ひとたびトラブルが起きると、それを修正するためにいろんな設定を触る事になるのだが、何をどう修正すれば良いのかが非常にわかりにくい。普通に使う分にはトラブルは起きないのだが、MPC-HCが最初からインストールされていたのに、後からSVPをインストールした事でエラーが出た、とかになると、もう全てアンインストールしてから再度SVPをインストールした方が手っ取り早いくらいである。
なので、試してみたい、という人はそれなりの人柱根性は必要かも知れない。
それを十分理解した上で、滑らか動画再生に挑戦してもらいたい。

私は…とりあえずインストールしたままにしているが、場合によっては元に戻すかもしれない。
全ての動画を安定して再生したい(60fps化よりも安定優先)と考えるなら、無理するよりは従来通りの方が良いと言える。
そこら辺をよく考えた上でやってもらいたい。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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