アナログ入力

東プレのRealforceでアナログ入力。

3万円のRealforce

通常版の東プレRealforceは、新品が大体2万円弱という価格で販売されている。東プレRealforceというキーボードのブランドだけで考えると、もっと高いイメージがあったが、実際には2万円しない価格で通常品を買う事ができるのだが、今回、アナログ入力が可能なRealforceが発売される事になり、そのアナログ入力可能Realforceは、店頭予想価格が3万円前後と、追加で1万円程度上乗せされるが、従来とは異なる機能を持つRealforceが発売される事になった。

そもそもこの「アナログ入力可能」という所に何の意味があるのか? という事なのだが、それを考える場合、このRealforceの構造をある程度知っておくと面白いかも知れない。
Realforceは、静電容量無接点方式という方式のキーボードで、これは静電容量の変化量でキー入力を検知している。
メカニカルなキースイッチを持っていない為、音も静かにできるし、押下圧力も小さくできるという利点がある。
特に東プレというメーカーは、コンビニなどに置かれているATMのテンキーも製造しているメーカーなので、東プレのキーボードのキーを押した感じがどんなものか、というのは、ATMでも体験する事ができるといえる。実際、実に入力しやすい事がわかるはずである。
話は戻るが、静電容量の変化量を検知しているという事は、そもそもその入力情報はオン/オフのデジタルだけの結果ではない。キーボードでこの方式を採用しているという場合、あえてオン/オフという結果だけを情報としてPCに送信しているだけで、実の所、その静電容量の変化量データはリニアなデータとして取得する事ができるはずである。
今回のアナログ入力可能なRealforceは、まさしくそのリニアなデータを扱うことができるようになったキーボードで、このアナログ入力が可能になる事で、タダのキーボードではできない入力が可能になる。

マウスとして使える

さて、このリニアな入力情報を利用出来るとなると、アナログデータを利用する事ができるデバイスと同じ事ができるようになる。例えばマウスと同じ動きをカーソルキーなどで利用する事ができる。実際にはカーソルキーでなくても良いのだが、今の設定ではカーソルキーに割り当てられている。
実際にはRealforceロゴキー(無変換キー)とF1キーでマウスモードに切り替えられ、そのモードでカーソルキーの入力を素早く強く行えばマスウカーソルが速く動き、弱く遅く押すとマウスカーソルがゆっくり動作する、というような感じになる。現在の設定では、マウスカーソルの動きはリアルタイムに変更しない仕様になっていて、最初に押した強さで速度が決まるようで、移動中に右ALTキーを押すことで移動速度を増加させる事ができ、また押下の深さによって加速度の加減が付くようになっているらしい。
他にも右CTRLキーで左クリック、右shiftキーで右クリック、ページアップキーで上スクロール、ページダウンキーで下スクロールと割り当てられていて、マウスでできる事はほぼ入力可能になっている。
個人的には、この機能を割り当てている事そのものは良いのだが、マウスカーソルの入力においては、リアルタイムに速度を変更できるようにして欲しかった所である。
というのは、カーソルキーを軽く入力してゆっくすマウスカーソルを動かしつつ、段々強く押し込んでいくことでマウスカーソルの移動が速くなるなどしてくれる、或いはその逆ができると、最近の広いデスクトップの上での利用が非常に便利になる。
手元にマウスがないとき、或いはマウスを置く場所がない場合など、この機能で代用できるケースはいろいろ想定できるが、マウスを普段使わない入力で業務を行っている人が、ふとマウスが必要になったときなどの救済的措置としては利用価値が高いように思う。

MIDIモード

RealforceロゴキーとF2キーで有効にできるMIDIモードは、結構画期的かもしれない。
昔、MIDIで作曲を楽しんでいた私の後輩がいたのだが、ソイツはキーボードを音楽用キーボードの鍵盤の機能をキーボードに割り当てて、演奏するという事をしていた。
この方法、結構昔から同じことをしていた人は多いかも知れないが、アナログ入力が可能になる事で、表現力は格段に増えることになる。
特に通常のキーボードでは、音階幅には限界があるため、必ずピッチを変える必要が出てくる。このピッチの上下をWindowsキーとALTキーで賄うわけだが、キーを押す深さによって音の高低をリアルタイムに変化させる事ができる。
他にもスペースキーでサステイン、変換キーでモジュレーションの機能が割り当てられているため、演奏の幅も広がるというものである。
もっとも、実際の音楽用鍵盤では、Realforceよりももっとキーの押下圧力は高いだろうし、そもそもRealforceはキーの押し始めから底付きまでの押下圧力は一定ではない為、感覚としては楽器とは大きく異なる。ただ、それでも表現力の幅が広がる事は間違いがなく、アナログ入力の可能性が感じられる使い方である。

ゲームモード

当然、この使い方も想定されている。
コントローラーのアナログ入力として利用するワケだが、そもそもWindowsには2種類のコントローラー互換モードが存在する。
Direct InputモードとXInputモードで、昔はDirect Inputしか存在していなかった。最近はXboxとWindowsが統合されるようになり、XInputモードが追加された。
なので、ゲームによってDirect InputモードなのかXInputモードなのかを選択する必要がある。RealforceロゴキーとF3キーならDirect Inputモード、F4キーならXInputモードとして利用できる。
XInputモードだと、アナログスティックが2つあるので、左アナログスティックがAWSD、右アナログスティックが;@:]になる。それらのキーの押込み量がリニアにアナログスティックの傾きとして入力される。FTGHはデジタルパッドの入力として利用でき、これらは押込み量無関係にオン/オフの入力で反応する。

FPSではAWSDキーによる移動というのが通例だが、そもそもそうした入力はアナログ入力を想定していないので、XInputモードの恩恵は得られない。
しかし、レーシングゲームなどでは、リニア入力は意味のあるものになる。ステアリングの左右の角度がリニア入力と連動できるし、アクセルやブレーキといった部分でもリニア入力が活用できる。上手く使えればPCゲームをより快適に操作できる事は間違いない。

総合的に考えて

アナログ入力が出来るという事は、従来のキー入力よりも多くのことが出来る様になるというのは、大体解って貰えたと思う。
だが、問題はそれが“使いやすいかどうか”という事である。
私の考えを言うと、多分「使えない」と思う。
ゲームはやはりジョイスティックとかパッドの方がやりやすいし、鍵盤も楽器鍵盤の方が使いやすいはずで、当然、マウスだって同じだ。
だが、専用ハードがなくても機能を使えるという意味では、このアナログ入力ができる事の意味は大きい。
これらアナログ入力を設定できる「REALStation Tool」が、もっと高機能になり、キーの押下量のコントロールやキーレイアウトなど、全ての面において細かく設定できるようになれば、自分好みに機能そのものを構築する事ができ、もっと使いやすくなるかも知れない。
しかし、それらをちゃんとやろうとしたならば、「REALStation Tool」のUpdateだけで済めばよいが、ひょっとしたら今のハードウェアでは無理で、ハードウェアのファームウェアをUpdateしなければならないかもしれないし、そもそもキーボードハードウェアそのものにも変更が必要かも知れない。
可能性を感じる事のできるアナログ入力機能だが、これに関してはまだまだ未知数、というのが今の段階なのかもしれない。

ただ、この未来に可能性を感じる機能を搭載したキーボードが発売される事は間違いない。
気になる人は、今からチェックを入れておくと良いかも知れない。
まぁ…そもそもRealforceを導入するという行為そのものが、インターフェースに拘りのある人の話だとは思うが。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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