やる気あるのか、この人?

 世間は祝日でも私は仕事。
 朝すれ違う通勤車がほとんどいない状況での通勤は、朝からやる気減衰の源のような気がする。
 ま、生きていくためには働かないといけないわけで、totoのBIGで6億当たったらこんな生活とはおさらばしてやると心に誓ったのはここだけの話。
 今日、朝からやる気がなかったのにはもう一つ理由がある。
 私が会社から命じられた管理システムの見直しに関する会議が本日行われるからだ。
 もちろん、この管理システムの見直しは新システム導入という可能性もあり、従来行われている業務の流れを一新する可能性がかなり高い。
 だからやるべき事のハードルは元々高いし、当然私一人での発案では無理なプロジェクトである。
 とりあえず、3日ほど前に管理に携わる者に現状の不満点を挙げてもらうよう提案シートを配ってある。今日はその提案シートをベースに問題点を列記し、そこから新しい業務の流れを検討する事になる。
 だが、物事はそう簡単には進まない。
 通常業務も併行して行われるからだ。


 会議は午後1時から始まった。
 私は管理に携わる者全てを集めたつもりだったが、一部の人から業務に差し支えが出るので参加できないという連絡がきた。
 …ある程度予測していた事ではあったが、やり方をもっと変えるべきだったかもしれない。
 とりあえず、私の考えでは業務の末端で実作業をしている人に集まって欲しかったというのがある。
 業務の問題は管理する人が知っているわけではなく、実作業に従事している人が一番知っているからだ。
 だが、やはりというべきか、その末端で実作業をしている人たちがまず集まらない。通常業務を併行しなければならないのだから仕方のない話ではあるのだが、管理システムを見直すのであれば、この時点で今回の会議は失敗である。
 会議が始まり、とりあえず各現場の問題点があらわになる。
 前々から分かっていたことだが、その問題点のほとんどが情報の共有化が出来ていないという事だ。
 これはある一定の規模の会社になるとどこでもぶつかる問題であり、従業員数30人未満のところではあまり起きない問題でもある。
 だが、それ以上になると情報がなかなか行き渡らない。戦場で軍隊を統率するのが難しいというのと似ている。
 とりあえずこの問題を何とかクリアできれば、プロジェクトの半分くらいは達成できるだろう事がわかった。
 そして会議がおわった後、何かいぶかしげな顔をした専務に呼び止められた。
 今回の会議に集まった人間をどういう基準で選んだのか?という事となぜ総務の人間を呼ばなかったのか?という事を尋ねられた。
 どういう基準かという事の答えは、前述したように管理に携わるもの全てである。だが、どうもそれが専務は気に入らないらしい。
 要するに、代表者だけで良かったんじゃないか?という事である。
 だが、私はその代表者の弁だけで問題点を洗い出したくない理由がある。
 それは一部の人間の意思しか反映しないからだ。
 そもそもこの会社が行ってきた従来の改善は、そうした代表者のみの意見で行われてきたおり、それが問題解決を妨げている原因である事は、私が入社してからの一年間で分かっていた。
 だから今回はその部分を徹底して排除したいという気持ちがあった。
 もちろん、その事を専務に話したが、どこまで納得したかは疑問である。
 そしてもう一つ、なぜ総務の人間を呼ばなかったのか?という事だが、別に呼んでいないワケではないのである。
 呼んだのだが、総務が出席しなかっただけの事である。
 だが専務は言う。総務は現場を知らない人間だから、現場の人間が言うところの問題に対して、その提示した問題が怠慢に起因する場合にハッキリと反対を指摘できる唯一の存在だと。
 たしかに問題が怠慢に起因しているのであれば、そうかもしれない。
 だが、業務の流れに問題が出ている事が分かり切ったこの状況で、それが怠慢によるものなのかどうかというのは、提示された問題を分析していけば結果は自ずと出るハズなのだ。
 今はその提示された問題を整理し、分析するまでの段階なのだ。
 つまり、今までの改善は、問題を提示する時点で人間の怠慢を指摘して問題そのものを潰すというやり方をしていたのではないかと思える。
 それでは、本当の改善にならないと思うのだが、この会社ではそれが通例だったようだ。
 その話を聞き、私は呆然とするしかなかった。
 専務という人を導かねばならない存在でありながら、こんなやり方が正しいと思っているところに問題があるという事を気が付かないのだろうか?
 それとも私が気づかせるべきなのだろうか?
 人はそもそも怠慢になるという前提で問題を解決しないと、業務の流れは良くならない。
 要するに、楽をしたいという気持ちが誰にでもあり、どこまで楽にできるかという所に改善の真意があるハズだ。
 苦しくなる改善は改善とは言わない。もちろん、人間のモチベーションを上げる事も必要だが、作業は簡素化・単純化するのが一番なのである。
 そういう意味も含めて、この人、やる気あるんだろうか?
 何はともあれ、管理システムの改善は始まったばかりだ。
 おそらく、上も下も含めて私にとっての抵抗勢力になるだろう。
 どこまで私の改善案が認められるか?
 その状況次第で、私と会社との勤続期間が決まりそうである。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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