新プラットフォーム

 次世代DVDという言葉はもう必要ないように思うが、標準フォーマットとなったBlu-rayはどう見てもDVDよりも浸透が遅いように思う。
 いや、実際にはDVDも登場から浸透するまでにかなりの時間がかかったわけだが、それでもPS2の発売と共にそのシェア拡大は凄まじい勢いで広がったのは間違いない。
 何故ならPS2の価格が従来のDVD再生機よりもずっと安かったからだ。
 ではBlu-rayはどうなのか?
 PS3が発売されたとき、誰もがその価格の高さに驚いたハズだ。
 そもそもPS3はゲーム機という枠組みで発売されなかった。もっと汎用的に使用できるように考えられた一つのプラットフォームとしての役割を背負っていたからだが、世間の人からすれば現状ゲームしかできない機械にホームサーバ的な役割を夢見る事など出来ようはずがない。
 かくしてHD DVDと正面切って戦う上での切り札だったPS3は、切り札としての役割は果たせなかったし、それだけでなく、何をする為の機械なのか?という疑問を逆に投げかけられたカタチとなった。
 それが去年の今頃の事だろうと思う。


 一年たった今、PS3は今頃になってちょっとずつ流れが良くなってきた。
 次世代DVDとしての標準フォーマットがBlu-rayになった事が追い風になっていることは間違いないし、不必要と判断された下位互換性を切り離し、コストを下げた事が功を奏したのかもしれない。
 おそらく、今年は夏頃あたりからBlu-rayはもっと本格的に動き始めるのではないかと私は見ている。
 家電だと日本市場ではレコーダが主を占めるため、海外のような展開とはまた違っているわけだが、気がつけばPCパーツのBlu-rayドライブの価格も4万円を切り始めていた。
 再生だけのドライブであれば2万円台というのもある。
 録再機ならば当然書き込みができるドライブでなければならないワケだが、PCドライブという一部のパーツの価格において4万円を切るぐらいの価格という事は、PS3がいかに安いかという事がわかるだろう。
 逆に言えば、夏頃までにピックアップまわりの量産がもっと順調になれば、価格はもっと下がってくる。
 私は今年中に1万円後半でPC用記録型Blu-rayドライブが登場するのではないかと見ているが、少なくとも2万円台の記録型Blu-rayドライブは間違いなく出てくると考えていいと思う。
 そうなると、レコーダ市場ももっとリーズナブルな機種が出てきて価格競争を始めるだろう。
 だが、ここに一つの問題点が浮上する。
 今、Blu-rayがもつ記録画素を表示できるディスプレイパネルはいったいどれだけの市場を得ているのか?という事だ。
 いわゆるフルHDと呼ばれる解像度が、Blu-rayがもつ解像度なわけだが、残念なことにほとんどの液晶パネルはまだフルHDに届いていない。
 いや、確かに一部はフルHD対応となっているが、問題はそのフルHDと呼ばれる解像度パネルがどれだけ一般家庭に浸透しているか?という事だ。
 しかもだ、実は本当に綺麗に見せようと思ったなら、フルHDよりさらに高解像度なパネルでないと見た目に綺麗にならない。
 どういう事かというと、フルHDの解像度と液晶の1ピクセルが1:1になるという事は、滑らかさがなくなるという事を意味するからだ。
 つまりシャープネスではあるが、ハッキリしすぎていて映像がギスギスするという事だ。
 DVDの時は見ているモニタがまだインターレース仕様だったりする家庭用テレビが多く、インターレースであるが故に滑らかさをそこで得られていたという背景がある。
 しかもインターレースでないプログレッシブモニタであっても、パネルの解像度がDVDの解像度より高い事もあって、いわゆるサブピクセルにアンチエイリアシングを載せる事が可能だったため、ギスギス感はなかった。
 DVDは何とも時代に上手くハマった感じだが、Blu-rayはその解像度とモニタパネルの解像度がちょうど同じ時代に入ってしまったが故に、クリアではあってもギスギス感があるという問題を背負っていくことになってしまったワケである。
 最近、2560×1600ドットというモニタがあるが、サブピクセルを有効に使おうと思ったらこれくらいの解像度が必要になるんじゃないかと思う。
 価格的にはぜんぜん追いつかない仕様だが、Blu-rayという解像度をより綺麗に見る場合には、フルHDでも追いついていないという事実を知る人はあまりいないように思う。
 フルHDだから綺麗…というのではなく、フルHDだからBlu-rayがシャープネスに映る、というのが真相だ。
 綺麗である事とシャープネスである事は同じではない。
 しかし、現実はそのシャープネスな解像度ですら市場で一般的でないのである。
 パネルメーカーはおそらく今まで以上に開発に追われる事になるだろう。
 今、世界では4K2Kという4098×2160ドット以上の解像度に期待がかけられている。
 主に映像関係の業務用途で使われる機材ばかりが対象なのだが、輪郭を滑らかに表示するには、これぐらいの解像度が欲しいという事なのだろう。
 いきなり4K2Kが家庭に降りてくる事はないだろうが、せめてフルHDを一般家庭に降ろしてこないことには、Blu-rayの本当の恩恵が得られない。
 問題は、表示する部分がその波についてこれるか?という所だ。
 DVDよりBlu-rayが浸透できない背景には、メディアだけの問題でなく、表示デバイスの問題がついて回っているからだ。
 メディアは今年中には広まるだろう。では表示パネルは?
 開発メーカーの努力に期待したい。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. 士之 より:

    今日、パーツ屋めぐっていたら、LiteONのドライブって、二万切ってましたねぇ。
    これぐらいなら、十分手が出ますなぁ。

  2. 武上 より:

     ROM専用なら2万円前後ってものがあるかもしれない。
     ただ、記録型はまだそんなに安くなってない。
     自分の用途がROMだけというのなら、そういう読込専用ドライブを購入してもいいかもしれない。
     どのみち、もうしばらくすれば記録型も安くなってくるとは思う。
     ただ、今の記録型DVDドライブと同じと考えることができるくらい安くなるのにはまだ時間はかかるんじゃないかと。

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