IEEE802.11nがようやく決まる

 多分、普通の人は意識した事はないかもしれない。
 無線LANにいくつかの規格があり、その規格によって速度や安定度が変わるというのは、無線LANのアクセスポイントを設置した事のある人であれば知っているかもしれないが、ノートパソコンに普通に装備されている無線LANをクライアントとして接続している人は、その規格の違いをそうそう意識した事はないのではないだろうか。
 今の世の中、殆どがIEEE802.11b、もしくはIEEE802.11gの規格で使用されているというのも関係あるかもしれない。
 しかし、実際にはIEEE802.11a(aは世界標準。電波法で日本では通信周波数が若干変更されているjが使われるケースもある)という規格もあれば、現在ドラフト版で搭載されているIEEE802.11nという規格もある。
 これらはその通信プロトコルの違いなどで安定度や速度が違う規格なのだが、それらを世界的に統括しているのが“Wi-Fi Alliance”という団体。
 この団体が802.11n(IEEEは以下略)規格のドラフト2.0として仮認定(Wi-Fi CERTIFIED 802.11n ドラフト2.0プログラム)したのが2007年6月の話。
 正直長すぎる期間を空けてしまったため、ドラフト2.0準拠製品が世界中に溢れてしまっている事を反映してか、9月にはそれらの機器も認定機器として、ようやく802.11n規格が本決まりになるそうである。


 今現在主力として使われているのは802.11bと802.11gという規格で、この両規格には互換性がある。
 802.11a(j)は802.11b規格よりも高速に通信できる高性能規格だが、互換性がなく、互換性を保ったまま802.11a(j)と同じ速度を実現するために作られたのが802.11gである。
 802.11a(j)は構造的にイキナリ54Mbpsという速度を得る事のできる規格だが、802.11gは802.11bの上位互換を持った規格で徐々に速度を上げていくタイプ。その代わり安定度が高い、ぐらいは知っておいてもいいのではないかと思う。
 この中で最も普及している規格は、間違いなく802.11b規格だ。
 このサイトを見ている人にもなじみのある機器は802.11b規格で、ニンテンドーDS(Lite含む)、PSPが搭載している。
 だが、実はこの802.11bはセキュリティに大きな問題を抱えている。いや、正確にいうなら、セキュリティ暗号化技術のWEPが問題なのである。ニンテンドーDS(Lite)はこのWEPしか搭載していない事が問題であり、この問題を根底から解決するためにニンテンドーDSiのが発売されたのではないかとすら言われた事がある。
 WEPは既にデコード可能と、どこだったかの大学が発表している事もあり、セキュリティとしては成立しないとまで言われている。
 ニンテンドーDSiはこの部分を考慮してか、802.11g規格を搭載し、暗号化技術も802.11iが策定しているWPA、WPA2を利用可能としている。ちなみにPSPは802.11bだがWPAには対応している。
 だが、こうしたセキュリティ問題を根底から変えて行くには、製品がアップデートされる際の搭載規格を変えていく必要がある。
 製品メーカーとしても通信速度が向上しているという理由があれば新製品を投入しやすいし、訴求できる。
 そこで策定が急がれたのが802.11nである。しかし諸々の問題で策定に時間がかかったのか、ドラフト2.0が発表され既に2年近く経ってしまった。
 802.11nは理論上の最大転送速度は600Mbpsで、実効速度で100Mbps以上を実現可能と言われている。有線では既にGigabit Ethernet(理論値1Gbps)が普通に使われるようになってきたため、スイッチングハブなどでは1000Base-Tが使われる事が多くなったが、有線でも未だに100Base-TX(理論値100Mbps)を利用しているところもまだあるだろうから、これで無線だから遅いという事は激減するのではないかと思われる。
 詳しい理論などはWikipediaで確認してほしい。
 Wi-Fiという言葉がドラクエ9で聞かれるようになり、私の周囲でもWi-Fiの事を知りたいと思っている人が増えたのではないかと思う。
 実際にWi-Fiで接続するには無線LANアクセスポイントが必要であり、当然そこには通信回線が必要になってくるのだが、とりあえずその規格と理論だけはある程度知っておいた方がいいと思って書いてみた。
 実際に接続する段階になると、それなりの機器が必要だが、手っ取り早いのはルーターを無線LAN対応のものにする事である。それができなければ、無線LANアクセスポイントを別で用意するという方法だが、もっとも安価で実現する方法は、インターネットに接続されたPCがあるのであればUSB接続の無線LANアダプタを準備する事ではないかと思う。そのタイプであればプラネックスやコレガなどのメーカーから3,000円未満くらいで発売されているタイプで十分ではないかと思う。
 ゲームの世界にネットワークが入り込んで既に数年経っているが、ここにきてようやく起爆剤のようなソフトが出た事で加速しそうな勢いである。
 ケータイが今の当たり前の機器になったように、Wi-Fiがこれからのデファクトスタンダードになるのも時間の問題と言える。
 家電にケータイ、モバイル機器が802.11nに対応していく事で、そうした幅はより広がり、利便性は上がっていく。
 これから802.11nがスタンダードになる日もそう遠い話ではないのかもしれない。
注意:ここでIEEE802.11系の話をいろいろ書いたが、正確なところはWikipediaを参照していただきたい。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. ruser より:

    ようやく802.11nがからドラフトが取れますか。
    ネットワーク系の資格を勉強した時には新技術として出ていましたが、また試験範囲が改定されるかも…(>_<)
    まぁ、それはさておき高速プロトコルが固まったのは今後の展開含めて楽しみです。
    …遅すぎだけどw

  2. 武上 より:

    802.11nが正式策定されたとしても…多分今とさほど状況は変わらないでしょう。
    何しろ、主要の通信チップはほとんどが802.11nドラフト2.0準拠で作られてるので、製品的にあまり変化がないのですから。
    それよりも2010年くらいから新機能とか盛り込むらしいので、盛り上がるのはそこからでしょうね。
    という事はPSP2は802.11n対応って事かw

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