事故は起こるべくして起こる

 今日は朝から最悪のスタートを切った。
 まず起床。
 起きたら家の人間が誰もまだ起きていないという状況。
 一瞬、何だこりゃ状態。
 家中の人間が慌ただしく動く中、私だけが日常通りの状況を開始。
 だが、家中が慌ただしい為、私も落ち着くことができない。
 そして何とか出勤すると、今度は予想を超える雪景色。
 車移動が憂鬱になるが、もともと雪上を走るのは慣れているため、いつも通りの道を警戒走行していた。
 ところが…。
 ここからが最も最悪の出来事の始まりだった。


 いつもの道を雪道という事もあってゆっくりと時速20km未満程度で走行していたところ、いきなり左前方から急に飛び出す車が現れた。
 私は普通にブレーキを踏んだが、雪道だから滑って…というと普通の雪道の話になるのだが、今回はあまりにもゆっくり走っていたためか、ABSすら動作しない程度の速度なのに止まれず、そのまま相手の車の運転席側に追突した。
 カンの良い人ならこの文章で分かると思うが、タイヤはロックして滑ったワケではなく、純粋にブレーキを踏んでから制動するまでのタイムラグによる追突である。
 その証拠に私はハンドルを切って避けるという動作すらまともに出来ていないのである。
 この左から飛び出てきた車が走っていた道は側道であり、またちょっとした上り坂である。そしてその上り坂を滑らずに登り切る為に速度を出して走ったと考えられる。まぁ、考えられるだけでなく、実際に当人がそう言ったのだから多分間違いない話。
 つまり、私からすると前方約3m先の左の道路からいきなり車が乗り出してきて、それにぶつかった、という事になる。
 だが、当然の事ながら、相手側はそれを納得する事はない。
 とっさに私の車を見て、タイヤがノーマルタイヤだった事に相手が付け込んできた。
「5m先に私の車が来たのを見て、それで途中で車を止めて走ってきた車(つまり私の車)が止まるのを待った」
 そう言い出したのである。
 つまり、私のタイヤが滑って止まれなかった、という事だ。
 しかし、これはおかしい話。5m先で私の車が見えていたのに、なぜこの人は道路の真ん中過ぎまで車を進めてきているのだろうか?
 坂道を滑らずに登る為に、アクセルを踏んでいた、という事になるのだが、それは側道を走っている側の言い分としてはあまりにもお粗末。だが側道であっても、滑る状況下で登る為にはアクセルふかさないと登れないでしょ? というのが言い分なのである。
 まぁ、よくそれだけ自分に有利な情報だけをあたかも正当だと言うように抽出するなと思ったが、こういう時は自分達で解決するのは愚策もいいところ。
 なので、私は即座に警察の介入を進言し、実際110番通報したのである。


 警察到着後、警察は状況を確認するが、相手はよくまぁしゃべる事しゃべる事。
 しかしそこは警察である。相手の言い分を聞きながら、私の言い分を聞き始めたので、私は端的に「とてもそんな悠長な時間内で起きた事ではない」とだけ言った。
 官憲側もその主旨は言わずとも分かったようで、私のタイヤを確認する事すらしなかった。
 そもそも本道を走っていたのは私で、相手は側道である。この時点で主導権がどちらにあるのかは一目瞭然であり、またぶつかった程度を見た段階で、私がスピードを出していたという事が認められない以上、どちらが悪いのかという話になれば、基本的に側道を走っていた側が不利になる。単純な結論である。
 ただ、こういう出会い頭の事故というのは、確実にどちらか一方が悪いという事にはならず、必ず配分で決まる為、警察は処理を事務的に行う事にしたようであった。
 とりあえず事故証明が発行されるという事であったため、あとは任意保険の担当者同士の割合による損害補償の問題へと進んだ。
 私は警察が来る前に自宅に電話し、保険担当者に連絡するように言っておいた為、警察の事情聴取が終わったタイミングで担当者がやってきた。
 保険担当者はこういうときの対応に慣れている為、私はほぼ一任という形で傍観者となった。担当者は相手の言い分を聞いてはいたが、それに対する回答も実に適確で、言っている事が成立するしないをハッキリ言い分けていた。その上で、先方の保険担当者に説明してくれと言う。そうなれば完全に保険屋同士の話し合いである。


 とりあえず、この先は完全に保険屋同士の話であり、もし必要があれば状況を検証する事になるという。なのでこれから何が行われるかと言うところに私の興味は移るのである。
 何せ今まで事故と全く無縁である。何が行われ、どう展開していくか興味津々である。
 …不謹慎だが、全くそちらの方ばかりに気を取られている。
 これも人身事故でなかったからの話だが、何事も経験なのかという事を痛感した。


 ちなみに。
 雪道なのにノーマルタイヤなんてあり得ない! と思う人もいるだろう。
 実はノーマルタイヤなのではなくオールシーズンタイヤなのである。
 というのも、私の車は4WDなので走り出す事自体に大きな問題はないのである。現に今朝も止まる時ですらABSが動作したのは衝突するまでたった1回しかなかった。
 なので、危険と感じた時に速度さえ出さなければ止まれる自信はあったし、現に止まっていた。ぶつかった相手が「この坂登ってみろ、おまえの車でも滑るハズだ」と言った坂に他車を避けるために入ったが、結局滑る事なく登り切った。しかも勢いを付ける為に速度も出すわけでもなく、である。まぁ、その私の姿を見て相手は何も言わなくなったが。


 この事故の帰り際、私はとりあえず相手に「ご迷惑をおかけしました」とだけ言っておいた。これは何も私の敗北宣言ではなく、あくまでも礼儀としての事である。
 その際、私は相手側の謝罪を期待したのだが、結局それは一切無かった。
 礼を以て応える事の重要さを理解しない相手だったと割り切ってはいるが、私より一回り以上年上の男が、礼すらできないとは何とも嘆かわしい話である。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Share
アバター画像

武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントは承認待ちです。表示されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。

Desktop Version | Switch To Mobile Version