蒼の英雄 -Birds of Steel-

 3月8日に、KONAMIから最近珍しいPS3/Xbox360用ソフトが発売される。
 蒼の英雄-Birds of Steel-と名付けられたそのタイトルは、第二次世界大戦の空の戦いをモチーフにしたコンバットフライトシミュレータである。
 フライトシミュレータというジャンルすら、最近聞かなくなってしまったが、これほどストイックな作品はない、と私は思っている。
 最近欧米ではFPSが人気だが、FPSなんかよりもずっとその世界をリアルに体験できるハズだし、さらに比較するならドライブシミュレータよりもその世界はストイックだ。
 ドライブシミュレータはハンドルコントローラーで道路を走る事になるが、それはあくまでも平面上の事。もちろん、そこに横Gや慣性が働くため、平面といえどもその挙動がリアルであればシミュレータ然とするのは当たり前。しかしフライトシミュレータは、その動きがまるっきり3Dであり、360°の空間を自由に飛べる反面、自分の高度、位置、向き、速度などをちゃんと把握していなければ地面に激突という、ドライブシミュレータの道路横の壁に激突するクラッシュよりも遙かに把握しづらいアクシデントが起きる。
 問題なのは、視覚でそれら高度、位置、向き、速度を把握し、そこから生まれる慣性をコントロールするという、上手く操作できる事そのものが楽しいという、根本の面白さを味わえるのがフライトシミュレータである。
 この蒼の英雄-Birds of Steel-は、さらにそこに戦闘という要素が加わる。つまり、上手く操作しなければならない上に敵がいて、その中でミッションをこなしていかねばならないのである。

 時代背景が第二次世界大戦と、この部分も私好みである。


 この時代の作品となると、登場する戦闘機はほとんどがレシプロ機。
 ジェットエンジンにフライバイワイヤなど電子的サポートがある現代戦闘機と違い、この時代の戦闘機はパイロットの技量がまともに飛行に現れる。
 しかもこの蒼の英雄-Birds of Steel-は戦闘機だけでなく、攻撃機も扱える。
 つまり、戦闘は空中戦だけでなく、地上攻撃や雷撃などが可能である。
 雷撃は水面ギリギリを低空飛行し、艦船に向けて魚雷を撃ち込む戦闘だが、これが現代戦だと純粋にミサイルの性能によって可能になってしまう。これではつまらない。やるなら十字砲火の海面ギリギリを飛行し、狙いを定めて魚雷を投下…という流れが面白い。
 さらに急降下爆撃なんてのも現代戦ではほとんど考えられない話になった。しかしこの時代は確実にその特定ポイントを爆撃するには高度を上げて一気に急降下、そのまま垂直に爆弾を投下して攻撃という方法が主流だった。何しろ爆弾が勝手にターゲットを補足して攻撃してくれるワケではないのだ。コレこそパイロットの腕が要求される真の技術というものである。

 こうした、サポートがほとんどない操作を強いられるのが第二次世界大戦を背景としているコンバットフライトシミュレータの特徴である。現代戦闘機を背景としていればもちろんこの限りではないが、何度も言うとおり、操作する事そのものに面白さを追求するのがフライトシミュレータである。
 では蒼の英雄-Birds of Steel-は難しいゲームなのか?
 この辺りはちゃんと考えられていて、飛行特性は「アーケード」「シミュレータ」「リアル」の3つから選べるようになっている。この中の「アーケード」はいろいろなフライトアシストが付き、離着陸もいくつかの操作をしなくても済むようになっている。逆を言えば「リアル」などでは、着陸時にはちゃんとランディングギアを出したりしないといけない、という事である。
 ちなみに燃料や弾薬についても各難度で有無を決められる仕様になっている。

 最近、こうした第二次世界大戦をテーマにした作品が少なくなってきたように思う。
 戦争は良くない、という感情がそうさせているのかもしれないが、そもそもゲームなのである。時代背景が別ならOKというのは戦争反対の理由にならないと思う。
 歴史は歴史として受け入れ、ゲームはゲームとして考える事は別に何ら問題ないと私は思っている。
 むしろ、この歴史を薄っぺらい記憶にしないためにも、こういう戦争があった、という事を語り続ける必要があるように思う。ゲームはそうした媒体として非常に優秀な媒体ではないかと私は思っている。

 というわけで、今度は太平洋戦争をテーマとした海戦ゲームをどこか出してくれないだろうか?
 昔は光栄が“提督の決断”シリーズを出してくれていたが、最近はサッパリである。
 あまりにもこの分野が出てこないので、間違ってストライクウィチーズにハマりそうになる私を助けてくれ(爆)

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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