AMDとNVIDIA、どちらを採るか?

GPUメーカーとして絶対的な存在感を持つメーカーが2社あるが、私は今までNVIDIAを推してきた。
理由はPCゲームを動作させる上でメリットが大きかったからだが、今後はそうとも言えない状況になってきた。

PS4とXbox OneがAMDを選択した

自作PC市場はどんどん縮小してしまっているが、コンシューマ機の世界は縮小どころから拡大している。日本国内ばかり見ているとあまりそうは思わないかもしれないが、世界規模で言えば確実に拡大していて、PS4は昨年12月の段階で420万台、Xbox Oneは300万台を突破していて、今後まだ増えていく事は間違いなく、しかもこの数字にはまだ発売前の日本市場が含まれていない。
この2つのコンシューマ機は共にAMDのアーキテクチャを採用していて、しかもそれはほとんどPCに使用されるアーキテクチャと変わらない。つまり、ゲーム開発において言えば、AMDのテクノロジーが当たり前のように使われていくことを意味している。

今までNVIDIAはPCゲーム開発会社に対して相当なアプローチをしていたハズだが、ここに来てAMDが大きく前進してきた。しかもNVIDIAが頑張ってきた当時と違い、PCもPS4もXbox Oneも似たようなプログラムコードで動作する事を考えると、NVIDIA当時の状況より確実に強い親和性が得られる為、開発会社が軒並みAMDのアーキテクチャに傾いていく事は確実視と言っていい。
そうなれば、ゲームを動かすならAMDの方が有利に働くようになる事は予測できる事である。
今ならどちらが良いのだろうか?

MantleがDirectXを超える

そのAMDがゲーム分野で武器にしたいのは、おそらくMantleと呼ばれるAPIだと言える。AMDの次世代GPUであるGCN(Graphics Core Next)で利用可能なAPIで、ハードウェアを直接叩く事ができ、DirectXと比較してオーバーヘッドが小さく、より高速にグラフィックを動作させる事ができる。
このMantleを使用する事で、一部ゲームではそのパフォーマンスが45%向上したというのだから、ゲーマーとしてはかなり期待したいのがMantleではあるが、もちろん全ての開発会社がMantle版のゲームを作成するかはわからない。
だが、これから作られるゲームにおいて、Mantle版を用意する可能性は高い。圧倒的有利にパフォーマンスが得られるのであれば、その方がよりリッチなゲームを作る事ができるからだ。
まさにAMDとしてはNVIDIAを追い落とす絶好のチャンスといえる。
だからAMDは今後Mantleの利用率を高める活動をより強化していく事になると思う。
もし、それが現実となったとき、開発会社はMantle版とDirectX版の2種類のプログラムを用意する必要が生まれるが、Mantle APIの開発キットの作り方でそんなに負担なく用意する事ができるようになれば、ユーザーは大変大きな恩恵を受ける事になる。
もっとも、そうした開発キットが用意出来ないとなると、開発会社として負担を受け入れられないかもしれない。
今後のMantle対応状況は要チェックが必要だろう。

それでもマイナス面もある

MantleというAPIを得て、状況としてPS4やXbox Oneの勢いを得たAMDのGCNだが、問題もある。
それはNVIDIAのKeplerコアよりも省電力ではない、という事。
とにかく電力喰いなのである。という事は同時に発熱も多い事になるわけだが、これはチョイスする上で大きくマイナスと言わざるを得ない。
しかも、同じDirectX版で見ると、NVIDIA最高峰のGeForce GTX TitanとAMD最高峰のRadeon R9 290Xとで比較すると、パフォーマンスも消費電力も劣る結果に終わってしまっている。
この差は、おそらくRadeon R9 290Xの想定ライバルがGeForce GTX 780であり、Titanではないからだろうが、パフォーマンスは良いとしても消費電力の問題で言えばよりGeForce GTX 780と差が付く事になる。
これは純粋にNVIDIAの設計思想が絡んできている。NVIDIAはKeplerを開発する際にとにかくワットパフォーマンスを上げる事を目標としていた。これはモバイル系コアであるTegra K1にKeplerアーキテクチャのGPUが搭載されている事でもわかる。
この差が出たのか、他に理由があるのかはわからないが、現時点でRadeon系統は消費電力でNVIDIA製に水をあけられている。
ただ、導入の敷居はNVIDIAより低いのが唯一の救いとも言える。
コストはNVIDIAより安く導入できるため、ユーザーの敷居は低い。だが、発熱量が多いという事は純粋に排熱にかかるコストもあるわけで、この辺りをどう捉えるかはユーザーの考え方によるだろう。
ちなみに…冬の時期なら良いが、夏の時期になるとこの排熱問題はより顕著になる。

今すぐどちらかを選ぶ決断ならば?

自作PCを愛でる者として、今すぐどちらかのグラフィックボードを選べ、と言われた時、あなたならどちらを選ぶだろうか?
未来に希望あるAMDか?
それとも現時点でワットパフォーマンスに優れるNVIDIAか?
私なら、現時点であればNVIDIAを選択するだろう。
確かに未来にAMDのGCNはDirectXを超え、PCゲームの中では絶対的な存在になるかもしれない。そしてNVIDIAはその勢いに飲まれ、WindowsPCの世界ではAMDに勝てなくなるかもしれない。
だがそれは未来の話であって今の話ではない。
Mantleの対応状況も、最終的な動きはまだ解らないし、その明るいハズの未来が1年後の話なのか3年後の話なのか、或いは5年後の話なのかは今以てまだわからないのである。
だとしたら、私は今効率が良いNVIDIAを選び、現時点での快適さを求める事になる。
そしてMantle対応状況がこの先進み、タイミングとして良いと思える状況になったら、その時のRadeonを購入するだろう。
理由は明白。私が求めているのは効率であり、妥当性だからだ。
確かにRadeon系はコストは魅力的だ。同じレンジの製品ならNVIDIAより安い。
だが、その価格差が驚く程ではないのなら、効率を選ぶ方が良いと思っている。
Radeon系はもう少し熟成していく必要がある。
ドライバであるCatalystは昔から比べれば安定したようだが、パフォーマンスを引き出すのと同時に安定性を確立させる為にはまだ時間が必要だと考える。

これから自作する人に

私の考えは前述した通りだが、もし予算をそんなに投入できないというのなら、今、GCNを搭載したRadeon系ビデオカードを購入するのはアリだと思う。
少なくともGCNを搭載していればMantle APIには対応できるし、ここ数年の間はそんなに困る事はないと思う。
問題は自分がハードウェアをどれぐらいのタイミングで更新できるか? という事に密接に関係している。
1年に一度は見直す事ができるなら、NVIDIA系の方が良いかもしれないが、一度購入するとしばらくはそのまま使い続ける必要があるというのなら、未来を見据えた選択をした方がいい。
正直、NVIDIA系を選んでもRadeon系を選んでもあまり大きな違いにはならないかもしれない。
ただ、未来が一つの可能性を元に大きく変わろうとしている事実があって、今はまだその未来が事実に結び付いていないだけの事である。
もっとも…今、自作する人がこれぐらいのを事を理解していないとは思えないわけだが。

何はともあれ、コンシューマ機のシェアを獲得したAMDは、今後数年間、ゲーム系ソフトウェアでは圧倒的強い立場を得られるだろう。
NVIDIAはチョット違ったアプローチをしてくるかも知れないが、PS4とXbox OneがハードウェアとしてGCNを実装しているという事実は変えようがない。
このコンシューマ機の影響をPCゲーム分野に持ち込む事は非常に簡単で、AMDが意図しなくても波及する状況にある。
そうした派閥の流れを、今しばらく傍観し、自分に合わせた潮流を選んで渡りきっていきたいと思っている。

次は自作PCでないかも…とか自分で思っていたが、どうもそうならない可能性が高いなw

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. ruser より:

    ここ最近IntelとnVidiaに押されまくっていたAMDが元気を取り戻しつつありますね。
    やはり市場は競争してこそ盛り上がるので、歓迎したい流れです。
    話題のMantleですが、私のGPUもGCNアーキテクチャなんで期待してます。
    …が、まだまだ対応ソフトが無いので評価はずっと先になるでしょうねぇ。対応ソフトがFPSばかりで私には関係ないかもしれないし。

    個人的にはA10-7850のが気になってます。
    GCNのR7積んでるし、APUとしての魅力はかなりのものかと。
    FFXIVを最高品質で遊んでる今の環境から乗り替える気はしないけど、コスパは高そう。

    …とか、色々目移りしますが、やはり基本は「欲しいときに必要なもの」だと思うんで、現状だとIntel&nVidiaですかね?

    • アバター画像 武上 より:

      効率を優先すると、どうしてもIntel&NVIDIAになるでしょう。
      残念ながら、AMD系は消費電力がIntel&NVIDIAに比べてどうしても劣ってしまう事実があって、小型フォームファクタなどでは選びにくい状況です。
      APUもパフォーマンスそのものは良いのですが、やはり同じように消費電力で見ると劣ってしまう。
      Intelのように3Dトライゲート技術を採用してプロセスの微細化&リーク電流の削減ができれば、対抗できるのかもしれませんが、AMDがFin-FET(3Dトライゲートと同様の技術)を採用できるのはこれから先の話なので、まだまだこの部分では勝負にならないでしょう。

      ただ、ある程度の電力消費は仕方が無い、と割り切った先にあるAPUは、そのパフォーマンスとしてかなり魅力的ではないかと思います。
      少なくとも今回登場のA10-7850は、Corei5系と並ぶくらいになったので、パフォーマンスも満足できるものではないかと思います。

      今、中古でGeForce GTX 680とか買おうかなとか思ってたりします。
      200w以下で今よりパフォーマンスを上げようと思うと、手段がそれしかないというのもあるのですが、価格的に魅力的なら考えてみようかなぁ。

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