音質に拘ったmicroSDXC

高級オーディオの世界は時々深すぎてよくわからない事がある。

デジタルなのに変化する

高級オーディオの世界では、デジタルデータの記録においても何故かその品質で音に影響する、という風潮がある。
決してそれが間違っているとは言わないし、事実そうなのかもしれないが、単純な頭で考えるとデジタルという“0”と“1”しかないデータの羅列を記録する事そのものにどれほどの差があるのか? という事がどうしても理解できない。
何故なら、どのような形で記録されていても、それを読み出した際にメモリにそのデータが書き込まれれば、あとはメモリからデータを読み込んだ半導体が処理するのだから、変わりようがない、という考えだからである。
実際、このデータの流れは間違っていないとは思うのだが、それでも高級オーディオの世界ではCD-Rへの書き込み時の安定書き込みやメモリカードへの安定記録(両方とも記録品質という意味では同じ)で音質に差が出る、という話が当たり前のように出てくる。
まぁ、この“安定記録”という所に意味があるのだろう、とは思う。大まかな記録そのものは同じでも、そこにノイズ成分のデータが載ってしまって再生時に補正をかけなければならなくなれば、そこで音質に差が出てしまう、という事がそのまま音質に影響するのかもしれない。
その考えならば、確かにノイズなく記録しないと良い音は得られないという考え方も納得はできる…が、それでもそれが完全に影響するとも思えないが。
とにかく、記録そのものを安定品質で記録し、読み出しの際も安定品質でデータを送出する媒体が良い音を生み出す媒体、という事になりそうである。

時代は光ディスクからNANDメモリへ

以前はCD-Rへの書き込みというのがオーディオデータの中心軸の考え方だったが、今はもうCD-Rは過去のものとなりつつある。
PCオーディオという言葉が使われはじめた頃から、既に音楽データは光ディスクの上にあるものからNANDフラッシュメモリの上やHDDの磁気記録の上に存在するもの、と変化した。
だから、前述のような記録品質の向上を謳うならば、今はもうNANDメモリやHDDに注力するのが当たり前の前提であり、そこに着目したSonyは音質に拘ったmicroSDXCカードを開発した。
それが「SR-64HXA」というmicroSDXCカードであり、容量は64GBでClass 10に対応するSDカードである。これで変わるというのだからよく分からない…記録品質を上げる事を目的としたmicroSDXCカードではなく、あくまでも読み出し時に発生するノイズの低減を追求したmicroSDXCカードで、記録されたデータそのものが変わったりする事はない。

内蔵メモリは?

このような高品質microSDXCカードが登場すると、気になるのはウォークマンなどの内蔵メモリは音質的にどうなのさ? という事になる。
つまり、内蔵メモリは内蔵されているだけに音に改善の余地はないのか? という事である。
実はここで問題となるのがSDカードと内蔵メモリのデータアクセスアプローチの差である。
元々内蔵メモリとSDカード等記録メディアのデータアクセスアプローチは異なっている。
内蔵メモリは比較的デジタルデータを音データに変換する半導体の近くに存在していて、経由するコントローラーが少ないという特徴がある。一方SDカードのような記録メディアの場合は、最低限、記録メディアをコントロールするコントローラーを経由する事になる。つまり、デジタルデータが流れる経路が内蔵メモリより長いのである。そしてこの伝達経路が長ければ長いほど電気的ノイズを拾う事となり、品質が落ちると言われている。
つまり、元々内蔵メモリはSDカードなどからくらべてノイズが乗りにくい状態にある、という事である。
簡単にいえば、SR-64HXAを使えば内蔵メモリにより近いレベルのノイズに押さえられる、という考え方で理解すれば良いだろう。またSony側としては、場合によってはSR-64HXAを使った場合の方が内蔵メモリよりノイズを拾わない事もありうる、としている。あくまでも可能性という話ではあるが。

高級オーディオの世界では、このような微々たる差が大きな音質の差と捉えられ、日々、最善の音を追求する努力が続けられている。
そしてハイレゾという、より情報量の多い音の再生を主眼に捉えた今後の音楽世界では、より一層、このような小さな戦いが繰り広げられていくことになるだろう。
ハイレゾを意識しない一般の人からすると、そこまでする必要があるのか? と思うような事でも、その世界にいる技術者達は常にそういう戦いを繰り広げていく。
人種としてそういう人種が集まった世界、それが高級オーディオの世界なのである。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Share
アバター画像

武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントは承認待ちです。表示されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。

Desktop Version | Switch To Mobile Version