さらに低価格になった4Kモニター

PC用モニターで4Kモニターがもっと普及すればいいのに…と想い続けてはいるものの、今の所そうしたモニターを発売しているのはDELLなど海外メーカーだけだ。

日本メーカーの参入はまだまだ遠い?

今回DELLから発売が発表された機種は“P2815Q”で、直販価格69,980円と7万円を下回る価格設定で登場した。
低価格TNパネル4Kモニターこの低価格が可能なったのは、液晶パネルがTN方式であり、また3,840×2,160ドット表示時のフレームレートが最大30Hzという制約があるためと思われる。
今までの機種は、すべてIPS方式であり、またフレームレートも常に60Hz駆動だった事もあって、そのあたりをスペックダウンさせた事でパネル価格を抑えたものと思われる。
28型で解像度が3,840×2,160ドットという事でその画素ピッチは157ppi、輝度は300cd/平方m、コントラスト比は最大200万:1、表示色数が10億7,400万色、中間色応答速度が5ms、表面処理はノングレア、視野角が上下160度および左右170度、と、リフレッシュレート以外は至って標準的な仕様を持つ。
インターフェイスはDisplayPort 1.2、Mini DisplayPort、HDMI 1.4(MHL 2.0対応)とマルチメディア対応型モニターから比べると実に標準的なインターフェースだが、DisplayPort出力も備えるあたりがちょっと特殊である。
また、付属のスタンドは前5度、後22度のチルト性能を持ち、左右各45度のスイベルと115mmの高さ調整が可能だ。そして日本メーカー製にはあまり見られないピボットにも対応している。
こうしたスペックを読み解くと、ホントにパネル方式とリフレッシュレート以外は最近のDELL製品と変わらない。
しかもそうしたスペックだけでなく、良品先出しの翌営業日交換サービスや輝点ピクセルが1つでもあれば交換に応じるプレミアムパネル保証も価格に含まれていて既存製品と変わりがない。
そういう意味では、パネル方式とリフレッシュレートに拘らなければ“P2815Q”はアリな選択肢と言える。

目の事を考えるとちょっと悩む

ただ…ココからは私の思いだけで書く事なのだが、残念に思える部分が致命的。
この製品“P2815Q”はTN方式という事で残念ながらIPS方式よりも視野角が狭い。
視野角が狭い事は対した問題ではないのだが、目に優しいかどうかを考えるとちょっと問題が残る。
大きなディスプレイを見るという事は、一目しただけでは画面の全てを把握できないという事と同義と言える。実際、私も24インチに乗り換えた直後は、画面の隅々を一目で確認する事はできなかった。
これがテレビなら問題はないのだ。画面と自分の目の距離がそれなりに離れているのだから。しかしPCモニターはその置かれている距離が、自分の目と非常に近い位置にある。
私が液晶パネル方式に拘る最大の理由は、この目とパネルの距離から考えた総合的な見やすさの為である。
昔、SHARPのAVS液晶(これはIPSとかそういう方式とは別の意味だが)が良い、と言われていた理由も、見やすさからくるものである。PSPはこのAVS液晶の搭載に拘ったという経緯があるが、それは当時責任者だったSCEの久夛良木氏が見やすさを最優先する事を徹底した為だという。
話を戻す。
また今回の“P2815Q”は最大解像度である3,840×2,160ドット表示時はフレームレートが最大30Hzに制限される為、場合によってはちらつきを感じる事もあるかもしれない。マウスを操作している段階で、マウスの動きに違和感を感じる人も出てくる可能性がある。

もっとも、今の技術だとそうした心配はほとんどないのかもしれないが、それでもTN方式と聞くだけで私などは警戒してしまう。風評被害だとDELLは言うかも知れないが、過去から考えてもTN方式がIPS方式やVA方式と比較して品質で上回るというのは、表示速度くらいのもので、それ以外で優っていた試しがない。だが、今回は30Hzと表示速度の面でも犠牲にしている事実がある。
そう考えると、確かに“P2815Q”はコストに魅力はあるものの、私ならもう一つ上のグレードの“UP2414Q”を購入候補として考えたいところである。画面サイズは片や28型、片や24型と違いはあるのだが。

VAIO Duo 13で体験した事

昨年私が購入したVAIO Duo 13は13.3型でフルHDという表示解像度を持つ。
だが、実際にフルHD解像度で使用しているとしても、アイコンや文字の大きさは100%表示より大きい150%表示として使用している。
これはWindows8.1の機能でそれを実現しているワケだが、結局は今までのスケーリングで使おうと思ったら、どうしても全ての表示が小さくなってしまうという事。
だから、高精細という部分の利点はあっても、実用域で全てを高精細かつ広いデスクトップとして使用できるかというと、実はそうではない、と言わざるを得ない。
広い解像度=広いデスクトップと考えると、扱える絶対サイズから考えても無理があるため、全てが思い通りという事にはならない可能性がある事は知っておいた方がいいだろう。

こうしたVAIO Duo 13での体験を考えると、24インチクラスで言えばフルHD解像度でも十分だし、それ以上の解像度を求めるよりも、タッチパネル機能を搭載していて欲しいと感じる方が強いかも知れない。Windows8以降はタッチパネルのアリ、ナシは結構大きな問題と感じる事が多い。
Windows7使用だからタッチパネルはなくてもいい、と思う人もいるだろうが、遠くない内にWindows8以降のOSへと進んで行く事は大いに考えられる。今までのWindowsXPのようなOSの方が異常なのであり、3~4年周期のOS変更が必ず来ると考えれば、ハードウェアはなるべく先取りした機能を持たせて置いた方が良いと言える。

これからの4Kモニターに求めるもの

今回発売される“P2815Q”や、既発の“UP2414Q”なども、4Kモニターとしてはまだ駆け出しの製品と言えるが、これから先発売されるであろう4Kモニターに今後求めていきたいのは、前述したとおり、まずタッチ機能だと言える。
来年4月に登場すると言われているWindows9(仮)の詳細はまだわからないが、Windows8シリーズで搭載したModern UIをイキナリ切り捨ててくるとは思えない。
また、仮にもっとデスクトップ UIに力を入れたとしても、タッチパネル機能そのものはWindows8シリーズで身近になった以上、何かしらの形で使う方向が生まれるだろうと思われる。
であるならば、4Kモニターにタッチパネル機能を搭載した形がこれから先もっとも有力なスタイルになるのではないだろうか?
今は4Kサイズを表示する上でも、60Hzで全面をリフレッシュする事がスケーラチップの関係でできない、などの技術的な側面もあるため、まずはそうした所から整えていく必要があるのだが、4K/60Hzのスケーラチップは既にサンプル出荷はされているし、ビデオカードのディスプレイポートもver1.2以上が搭載されている。そしてビデオカードのドライバも対応ドライバが着実に登場しているため、表示する、という部分においては今年度内にはほぼ問題はなくなるだろう。
そこから次なる課題として、ノートPCで実現できているタッチ機能をいかにデスクトップに持ち込むか? という流れになると思う。
おそらく、このタッチ機能をデスクトップに持ち込む流れの中で、タブレットメーカーがまず最初に仕掛けを用意してくるように思う。以前は、液晶モニターそのものがタブレットになり、見たままの姿でタブレットを使用できる…つまり電子ペーパー然とした使い方ができるというモニターをタブレットメーカーが発売したが、あまりの価格の高さにそうそう普及しなかった。
しかし、ここ最近の4Kモニターの低価格化の波に合わせ、高精細モニターでタブレットとしても使用する事ができるモニターをタブレットメーカーが低価格で提供してくれば、デスクトップでのタッチパネルは加速すると考えられる。
OSがそういう仕様を普通に許容していて、なおかつノートPCで既にそうしたタッチ機能を普通に使う状況にきている以上、デスクトップだけが取り残されるというのは、ナンセンスな話ではないだろうか?

2014年もあと1ヶ月で第1四半期が過ぎていく。
第2四半期から第3四半期あたりの中で、スケーラチップがサンプル出荷から正式な出荷へと変化したならば、その段階でひょっとしたら日本メーカーからの本格的な4Kモニターの登場があるかもしれない。
もっといろんなメーカーから4Kモニターが出てこない事には、あらゆる要素で進化がないため、今はそうした進化を促す状況が生まれる事を期待したい。
その先駆けとして、今回の“P2815Q”が発売されたという事は意味として大きいだろうと思う。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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