鈴木銀一郎という人を知っているだろうか?
銀一郎氏、艦これをプレイする
4Gamer.netで、私からすると信じられないコラボレーション企画をやっていた。
ゲームデザイナーという言葉を日本で確立した、私からするとレジェンドのような人が艦これをプレイする、という企画である。
そのレジェンドとは鈴木銀一郎大先生である。
鈴木銀一郎氏を知らないという人も多いかも知れないが、この人は確実に今のゲームの基礎を築き上げた人である。
特にブラウザゲームの基本であるカードゲームの基礎は、この鈴木銀一郎氏が構築したシステムの発展系(或いは省略形)を採用していると言っても過言ではない。
昔、翔企画という会社で「モンスターメーカー」というカードゲームを作り、発売していたが、その作者である。
詳しい事はWikipedia等で調べて戴きたいが、電源無しゲームの世界では神様と呼ばれる存在であり、ウォーゲームを日本に広めた第一人者と言ってもいい人物。実際に「日本機動部隊」(現在は「激突!南太平洋」というタイトルで購入可能)というウォーゲームを発売していた。
そんなウォーゲームのデザインを手かげた鈴木銀一郎氏が艦これをプレイするとどうなるのか? というのが、この4Gamer.netの企画である。
見るべきポイントが普通じゃない
銀一郎氏が艦これをプレイする様は、4Gamer.netの記事を参照して戴くとして…その記事の中で触れている事についていくつか私が感じたことを書いていきたい。
銀一郎氏のインタビューの中で「戦闘で操作できない」という事がとても重要だと言っている所が実に流石だと私は感じた。
私などが前々職にいた時に、もし艦これを批評したなら、戦闘時にいろいろな操作を加えてより「戦術的な何か」を加えた方がいい、という判断をしたかもしれない。
だがこれはより高度にゲーム性を持たせる事によって、プレイできる人とできない人を分ける可能性がある。これは初心者にプレイの窓口を開いている艦これのスタンスでは、あまり喜ばしい改良とは言えない。
しかし「戦闘で操作できない」とする事で、このゲームの方向性は「戦術級」ではなく「戦略級」のゲームになる事を意味する。
要するに、戦闘に赴くまでの準備が要求されるゲームになるわけで、戦闘に勝つも負けるもその準備によって決まる、というワケである。よく「運」の問題もあるじゃないか、という人もいるが、本来戦略レベルの話でいえば、その運の要素を含めて勝利する事を計算し出撃するのが戦略なのである。
戦術での勝利というのは、用意された状況の中で勝利に導く過程を言うが、戦略とはその用意された状況を作る事を言う。有利な状況を作る事で戦う前に勝つというワケである。
艦これは「初心者」でもプレイできる事を売りにしているため、戦術級よりも戦略級の方が向いている、とデザイナーが判断したのかもしれない。
しかも、戦略的な試行錯誤をする時間に制限時間がない為、弱い艦隊を鍛錬する時間も取り放題である。
艦これとは、つまりそういうゲームであり、そこを的確に見抜いている所に、銀一郎氏の凄さが見て取れる。
鈴木銀一郎という人
ここからはオマケの話。
鈴木銀一郎氏の事を私が詳しく知ったのは、今から18年も前に発行されたある一冊の本である(正確に言えばもっと前から知っていたが)。
その本とは「おこんないでね」という田中としひさ氏が「LOGOUT」という雑誌に書いていた漫画であり、その漫画の中で鈴木銀一郎氏が登場する。
ゲームの神様という扱いは当時から変わらず、その凄まじいカリスマ性をマンガでは絶妙に描いている。
今から4年前に私もBlogでこの「おこんないでね」の事を書いている。
新品の本は買えないとは思うが、今でも「おこんないでね」という本は購入する事はできるだろう。
TRPGやボードゲームなどに興味のある人は、ぜひぜひ一度読んで欲しいマンガである。何がおもしろいか? というのは、もう読めばわかるというしか他にないぐらいの本である。
海外はもともとがTRPGやボードゲームからゲームが始まったが、日本にRPGが輸入された時、既にコンピュータ化されたものが広まり、そしてドラゴンクエストがその拡大の火を大きくした、と言える(これについては反論がある人もいるかもしれない)。
その後、日本ではコンピュータ上で展開するRPGが当たり前になったが、そもそもその元祖はTRPGであり、ゲーム本来の面白さという点ではコンピュータRPGはその劣化版に過ぎない。
プレイするためには、場所、人、コミュニケーションを必要とする為、現代ではなかなかハードルの高いジャンルではあるが、その真の面白さを知った時、コンピュータRPGの限界を感じる事になるだろう。そしてその限界の一つを突破したものがオンラインRPGである事を理解できるはずだ。但し、そのオンラインRPGにしても、TRPGの面白さには全く歯が立たないのだが。
何はともあれ、鈴木銀一郎氏の名前を見て「おこんないでね」がスッと頭に出てきたあたり、私も歴史が長いなと感じた。
はじめて銀一郎氏を知った人、おこんないでねを知らなかった人は、ぜひとも古き良き時代の情報を得て、TRPGやボードゲームの面白さを再確認して戴きたい。
きっと今より面白い何かが見えてくるだろう。
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