オーサグラフ世界地図

メルカトル図法を捨てる時がきたか?

世界地図

小学校の社会の時間で習う世界地図。
おそらく今でもその基本がメルカトル図法で書かれた世界地図なのではないかと思う。
メルカトル図法は1569年に現在のベルギー出身の地理学者ゲラルドゥス・メルカトルによって発表された地図に使われた投影法で、その性質と作成方法から「正角円筒図法」と呼ばれている。
円筒図法であるため、確かに紙に書きやすいという性質があるにはあるのだが、この投影法には一つ重大な問題がある。
それは緯度が高くなるにつれて距離や面積が拡大されるという事である。つまり、メルカトル図法で書かれた地図では、グリーンランドがオーストラリア大陸よりも大きく見えるが、実際はオーストラリア大陸の方がずっと大きいわけである。しかも地軸に対して芯を一致させての投影であるため、球体という事を意識していないことから、各地の方向や位置関係も本当の事実からはかけ離れたものとなるのである。
例えば、日本の東をそのまま真っ直ぐ東進した場合、メルカトル図法だと北アメリカにぶつかるが、本当の位置関係でいうと、日本の真東はメキシコ、さらには南アメリカへとぶつかる事になる。そう、完全に方位からして違うのである。
他にも、モルワイデ図法なんてのも習った記憶があると思う。
1805年にドイツの天文学者・数学者のカール・モルワイデが考案した投影法で、こちらは正積図法と呼ばれ、面積比を正しく投影する図法である。
しかし、この図法でも距離比が一定ではないため、分布図としては使われるが、それ以外の用途ではあまり使われる事はない。
他にもグード図法、サンソン図法、ボンヌ図法、ミラー図法など、いろいろな図法があるが、どれもが何かしらの問題を抱えた図法であり、それぞれの特徴を踏まえた上で、各分野で利用されているというのが現状である。
では各地域を限りなく歪みが少ない形と面積比率で表す事ができる世界地図というのは、存在しないのだろうか?

デジタル技術の産物

1999年、日本の建築家・構造家の鳴川 肇が率いる研究開発チームは、地球上の陸地の面積、形状をほぼ正確に四角形の平面に写し取る事ができる地図「オーサグラフ」を考案、発表した。
メルカトル図法と同じように、海にも切れ目がなく見やすいという利点を持ちながら、高緯度地方の面積表現も比較的正確で、方位に関してもほぼ問題なく再現でき、また特定の中心点を持たない事から、全体を平等に見渡す事も可能という、今の所欠点らしい欠点が見当たらない万能地図である。革命的世界地図オーサグラフによる地図の作成方法は、正球体の地球の表面を96等分し、表面比を保ったままその擬正球面を正四面体にデジタル変換し、その正四面体のそれぞれの面である正三角形の4面を切り離し、縦横の比が1:1.73の長方形に組み替えて作成する。まさにデジタル技術が可能にした、新時代の世界地図と言えよう。
このオーサグラフ世界地図が、2016年のグッドデザイン賞大賞に選ばれた。
選ばれるべくして選ばれた…私にはそう思えてならない、ある種一つの発明ではないかと思う。

これで、日本の教育はメルカトル図法を捨てる事ができるのか?
何事も正しい方向で進むべきと考えるとが…伝統と新事実、日本の教育は果たしてどちらを選択するのだろうか?

AuthaGraph株式会社
http://www.authagraph.com/top/?lang=ja

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Share
アバター画像

武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

You may also like...

2 Responses

  1. ruser より:

    おー、今はこんな図法があるんですね。
    距離や面積がおかしい地図や地球儀から剥がして貼ったようなあの世界地図に馴染みがあるものの、こっちの方が実用的。
    一般化するか気になりますね。

    • アバター画像 武上 より:

      オーサグラフが登場してから、もう17年経過しているんですよね。
      それでも未だ浸透せずに今に至ってたわけで、ココでグッドデザイン賞大賞を受賞した事でどれだけ普及が加速するか…正直、変わらないな、と思います。
      しかし、これが学校の教科書に使われると、途端に普及するんですよ。
      子供の頃に見た印象というのはそれだけ大きいという事がその理由なんですが、まず教える側と教わる側が認識を変えないと、こういうのは変わりようがないと思います。
      あとは、ニュース含めた情報番組が、世界を表す時にこの地図を使わないと、人々の意識の中にすり込まれていかないので、普及は難しいと言えます。
      オーサグラフは地図の中心をどこにでも持って行ける希有な地図なので、世界規模で浸透していけば絶対的地位は確立できると思います。
      ココでも日本の外交力が試されるかも…。

武上 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントは承認待ちです。表示されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。

Desktop Version | Switch To Mobile Version