ST-90-05

アシダ音響のコスパ最強ヘッドフォン。

業務用を民生用に

ちょっと前くらいに、ネットで話題になったヘッドフォンがあった。
アシダ音響という創業70年を超える業務用音響機器を製造しているメーカーが、業務用であるヘッドフォン「ST-90」をベースに、音楽用の「ST-90-05」として製品化したヘッドフォンである。
コストパフォーマンス抜群の逸品
この「ST-90-05」の最大の特徴は、何と言っても国内製造品だという事。
恐ろしく堅実なその姿も、いかにも業務用といった赴きがあるが、それは使われているパーツなどを見てもよくわかる。
ケーブルは医療・産業用ケーブルメーカーのもののような高耐久のものを使用し、ヘッドバンドもあえて樹脂押しだし材を使用しているのも、PUレザーのように化学変化で材質が崩壊するのを防ぐため。とにかく使用後3年経過した時の製品品質を考えてデザインされている。
おそらく、原価率は相当低いと考えられる。利益度外視の製品ではないかと。
で、問題の音質だが…実にリファレンスな音がする。
低音が強めに出るが、オンイヤータイプなのでそういう仕様にしているのかもしれない。ただ、それが虚飾過ぎるかといえばそうでもない。
あくまでもイメージはリファレンスである。
シンプルなデザインでありながら、音もまさにシンプル。派手さはないが堅実性を感じられるのは、その見た目と同じ。そんなヘッドフォンである。

噂に騙されるな

ただ…この「ST-90-05」だが、ネットで評判を呼び、価格が急高騰したりもした製品だが、過大評価になっているのではないかと思わせるところもある。
というのは、独特のクセがあるのも事実で、音質という面でみれば、もっと高級品で良いものがあるのは事実である。
ただ、同じコストの製品と比較すれば「ST-90-05」は飛び抜けて良い音という事になる。
つまり、価格帯効果が高い製品であって、音質が最高の製品ではない、という事である。
「ST-90-05」の元々の価格は6,380円である。
この価格の他製品と比べれば、その音質も、製品品質も圧倒的である。
ただ、基準はあくまでも6,380円というところを中心に持ってきた時の品質である。
たとえば、私がメインで使用しているAKGのK702やその上位のK712の方が、音質でいえばより上を行くだろうが、価格は普通に1万円を超え、2万円を超えてくる。
基準をどこに持ってくるかで、評価が変わるので「ST-90-05」を過大評価してしまわない方が良いだろうと思う。

利用シーンを考える

また、実際に使う利用シーンを考えた時も「ST-90-05」は微妙かもしれない。
最近はワイヤレスの時代でもあり、外で利用するならまさしくケーブルレスの方が便利なわけだが「ST-90-05」は有線ヘッドフォンである。
だから音楽を聴くというシーンを有線で考えると、そこでは「ST-90-05」のような製品よりももっと音質に拘った製品を使って行くというシーンも想像できる。
音に拘ると、ヘッドフォンで1万円超えいうのは珍しい話ではない。有線ヘッドフォンではあれば、室内の、それも機材がある程度しっかりしている環境が考えられるので、その制約内で利用する製品なら、リケーブルできる高級ヘッドフォンを使う方が良いという事も十分考えられる。
「ST-90-05」の利用を最優先に考えられる環境というのも、結構特殊のように思える。
なので、絶対的に「ST-90-05」がオススメという製品とは言えない。
ただ、あくまでも価格帯効果の高い製品として考えるなら、コストパフォーマンスは異常に高い製品だと言える。
スマホで便利に使いたいならワイヤレスイヤフォンの方が良いかもしれないし、腰を据えて利用する場合なら、有線の本格的リファレンスヘッドフォンの方が良いかもしれない。「ST-90-05」を利用するという事は、そこにどれだけのコストをかけられるか、という事が加味された限定的選択肢から、と私は思った。

「ST-90-05」はコストパフォーマンスの面ではオススメできる製品だが、利用シーンで最善の製品かという事は別問題である。
そういった特定の基準で考えた時に光るヘッドフォン。それが「ST-90-05」だと思うので、価格を抑えつつ室内でリファレンス的に使いたい、という人にはぜひともお勧めしたい。
ただ…最近価格が高騰しているので、1万円近い価格になっている。それを許容できるかどうかはまた別問題と言える。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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