消費電力160wの普及ビデオカード

 NVIDIAがGeForce 9800 GTX+を発表した。米国での価格は229ドル。
 ハードウェア的には旧来のGeForce 9800 GTXと全く同じだが、コアクロックを675MHz → 738MHzに、SPクロックを1,688MHz → 1,836MHzに向上させたモノだという。
 つまり、このクロックアップモデルの登場で、性能的には2008年第1四半期に発売されていたシングルチップビデオカードの最高性能が、25,000円以下で買える事になる(1USドル=107.96円として換算。2008年6月19日現在)。
 もちろん、これから先の世界にはGT200シリーズや、RadeonHD 4800シリーズが控えているため、このGeForce 9800 GTX+は世代遅れビデオカードになってしまうワケだが、それでもその性能は今まで確実に評価されてきたものであり、普通に使っていく分にはこれから先2~3年は使って行けそうな性能である事に違いはない。


 しかし、気にしなければならないのはその消費電力だ。
 価格は25,000円でも消費電力は160w超になる。
 クロックアップ前のGeForce 9800 GTX(G92コア)で、消費電力は156w近くあったのだから、クロックアップされていれば160wは下らない。
 また、PCI Express電源の6ピンが2つ必要になる事も注意点だ。
 だが、どちらにしてもつい最近までのハイエンドビデオカードが2万円台半ばで買えるというのは、ちょっと魅力的ではある。
 なぜNVIDIAはこのタイミングでこのビデオカードを発表したのか?
 私が考えるに、それはおそらくAMDのRadeonHD 4800シリーズの登場と関係がある。
 AMDのビデオカード性能の基本的な考え方は、先日のBlogにも書いたが、ミドルレンジチップを複数使い、並列化させてハイエンドビデオカードを構成する。
 つまり最初のRadeonHD 4800シリーズは、ミドルレンジやバリュークラスという事になり、それはおそらくRadeonHD 4870もしくは4850という事になる。
 先日のAMDの記者会見での「来週に1TFLOPSの処理能力を持つATI Radeon HD 4850を出荷開始する」という言葉と、その価格が200ドル程度という言葉が嘘でなければ、NVIDIAにしてみれば驚異的以外のナニモノでもない。
 なぜなら、NVIDIAはハイエンドであるGeForce GTX 280ですら、1TFLOPSを若干下回る性能でしかないからだ。
 AMDのRadeonHD 4850が200ドル程度で1TFLOPSの処理能力を持っているとするならば、NVIDIAはハイエンドクラスだけでなく、普及価格帯でも敗北する可能性が濃厚になる。
 つまり、既存グラフィックスコアのGeForce 9800 GTXを普及価格帯に降ろすことで、シェアの縮小を少しでも食い止める作戦に出た…私はそう見ている。
 最終的にAMDのRadeonHD 4800シリーズがどれだけの演算性能を持っているのか、また実効性能がどの程度のものなのかが分からない今、消費者側はその情報が出てくるのを待つしかない。
 消費者としてはやはり未来につながるハードウェアを買いたいというのが本音であるし、それは絶対性能の優劣と必ずしも合致しない。
 つまり、いくらAMDのRadeonHD 4800シリーズが高性能だったとしても、最終的にNVIDIAのGeForceシリーズの方が効率よく使用する事ができる事になるかもしれない。
 どちらが本当の意味で優れているのかを判断するには、もう少し時間がかかるだろう。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. ruser より:

    また出るんか(^_^;)
    2万台で買えるなら…って思うけど、電源確認しないと使えるか分からないなぁ。
    ほんとはRADEONも使ってみたいんだけど、知ってる3Dのネトゲの大半がGeforce推奨なんで、実用性はやはりGeforceかなぁ。
    …まぁ、それ以前に買い換える金無いがw

  2. 武上 より:

     GeForce神話はひょっとしたら崩れるかもしれない。
     もっとも…
     先の事など誰もわからないのだが…

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