EGRET II mini

タイトーから卓上型レトロゲーム機が突如発売される事が発表された。

ミニアーケード筐体

タイトーが卓上ゲームセンター「EGRET II mini」(イーグレット2ミニ)を2022年3月2日に発売すると発表した。
価格は18,678円(税込)からで、本日6月4日より発売を開始している。
「EGRET II mini」は1996年に登場したアーケード筐体「EGRET II」を卓上サイズとして再現したもので、ちょぅどセガが2020年12月に発売したアストロシティミニのタイトー版といった感じのゲーム機になる(当時の記事はこちら)。
収録されるタイトルは、1978年発売の「スペースインベーダー」から1990年代にかけてゲームセンターに登場したゲーム40タイトルで、別売の拡張セットでさらに10タイトルを追加する事ができる。
現時点ではその収録タイトルの一部のみが発表されるに留まり、まだ全ての収録タイトルが発表されているわけではないのだが、こういった情報の出し方すらもセガのアストロシティミニの時と同じような展開である。

「EGRET II mini」は、アストロシティミニの時に各所で言われていた問題点をいろいろと解消したものになっていて、一番の特徴は画面を90度回転させる事ができるという事。つまり縦画面のゲームをちゃんと縦画面でプレイする事ができるようになっているのである。
画面を回せる!また、前述したようにタイトルを追加できるようにする為、SDカードスロットが搭載されているのも特徴。これによって、現在考えられている拡張セット以外の拡張セットの登場の可能性もあるわけである。
それと、これが一番ある意味意外だったのが、トラックボールとパドルが付いたコントローラーが別売されるという事。
タイトーのゲームには画面を回転させる為に回すパドルを操作系にしたゲームや、トラックボールを転がして自機を動かすゲームなどが存在するので、そうしたゲームをより本物のように操作するため、この特殊コントローラーが別売とはいえ、発売されるのはとても有りがたい事である。ちなみにコントローラーは先程説明した拡張セットとして発売されるのだが、つまるところ、その拡張セットで追加される10タイトルは、そうしたパドルやトラックボールで操作するタイトルとなっているわけである。
また、当然だが専用のジョイスティック(製品名はコントロールパネル)、専用のコントロールパッドも別売で用意される。
これらのセットを包括した特装版(初回限定)も2種発売される。この特装版には50タイトルのインストラクションカードが付いてくるのだが、その他の手段ではこのインストラクションカードは付いてこないので、マニアは注意が必要である。

一番の注目はサイバリオン

個人的に今回の「EGRET II mini」で一番の注目タイトルは拡張セットのサイバリオンである。
トラックボールで操作するゲームなのだが、このゲームの独創性は他社ゲームを圧倒する。自機はドラゴン型の宇宙船で、そのドラゴンをトラックボールを転がして操作する。攻撃ボタンは1つのみで、これを押すと炎を吐く。ボタンを押し続けていると炎をずっと吐き続けるのだが、時間経過で炎ゲージが短くなって炎は次第に短くなっていく。炎ゲージはボタンを離さないとチャージされないので、永遠に攻撃しつづける事はできない。面白いのは、自機のライフゲージが自機そのものになっていて、攻撃を受けると自機が尻尾の方から徐々に錆び付いていくので、見た目にダメージ度合いが見てわかるようになっている。
このサイバリオン、ステージの組合せでエンディングが100を超えるというのも特徴。ステージをクリアするとシナリオが表示され、そのシナリオは基本的にランダムで決まるのだが、シナリオの中には次ステージの条件などが描かれていたりするので、そのプレイ内容によって変化する時もある。同社作品のダライアスとも世界観を共有している事もあって、そうした関連のシナリオも登場する。コレ、あーゲードゲームにしては盛り込み過ぎだろ? と当時は思ったものである。
また、もう一つの名作と思っているのが「キャメルトライ」である。
画面の回転・拡大機能がハードウェア実装された時期に登場したゲームで、パドルを回すと画面全体が回る。その画面を回して中央にある玉をゴールにまで導いていくのがゲームの基本スタイルになる。玉は重力で画面下側へと転がるようになっているので、そこを上手くコントロールしながら画面を回していく。
これら2種は拡張セットのタイトルだが、本体収録の中にも名作はある。
バブルボブル、レインボーアイランドなどは、PS2等からいろいろ遺書されている名作中の名作である。ちなみにこれら2ゲームとサイバリオンは同一のデザイナー「三辻富貴朗」氏の手によるゲームである。1980年代を支えた名デザイナーだと私は思っている。

おっさんホイホイ

セガのアストロシティミニの時にも思ったが、こうしたアイテムは結局は「おっさんホイホイ」なんだろうな、と。
ある程度、お金を持っている独り身のおっさんをターゲットにして、昔やりたかったゲームを延々とできるようになりましたよ的な視点で商品化したものだろうと思う。
ただ、そうしたビジネス的側面もありつつ、レトロゲームのソフトウェア保存をしていく、という事そのものにも、私はそれなりの意味はあると思っている。
しかも、最近はいろんなメーカーがこうしたレトロゲームのミニ筐体を発売するようになった事で、比較的過去作がいろんなところで注目もされてきた。全てのタイトルではないが、今回の「EGRET II mini」のように、拡張セットでソフトを追加できるようにしてやれば、まだまだ復活させられるタイトルは多いと思う。今後に期待である。
私は、今一番懸念すべき状況と思っているのは、こうした昔のアーケードゲームではなく、日本がまだパソコンをマイコンとか読んでいたような時代、そしてそれと似たような時代に発売されてきた、パソコンソフトを保存すべき状況なのではないかと思っている。
一応は「Project Egg」がそういった昔のタイトルの配信ビジネスをしているのだが、権利の問題などいろいろな課題で上手く残せていないタイトルも数多いのではないかと思っている。

Project Egg
https://www.amusement-center.com/project/egg/

昔のゲームは、ハードウェア制限などの影響でプログラマが少ないメモリを極限まで使い切って再現しているようなタイトルもあったり、表示する色が少ない状況でありながら、ものすごく美しいCGを見せてきたりとか、職人魂の塊のような珠玉のタイトルが多い。
昨今のゲーム開発者は、3D表現などで限界に挑戦したりしているかもしれないが、ゲームそのものの開発難度は、昔からくらべて随分と低くなっているのではないかと思う。
日本の昔のゲームは、そうした今を生きるプログラマーの先輩たちを鍛え上げてきた作品達である。
こうした昔のタイトルを見て、今の人達は「粗い画面だなぁ」とか「しょぼい音楽だなぁ」とかいろいろ思うに違いない。
それは当たり前の事だが、それすらも当時のハードの限界に挑戦してきたプログラム的偉業がそこにはあるのである。
しかも、それは何もプログラム的な事だけでなく、表現的なもの、アイディア的もものを含めて、である。
メタルギアシリーズの小島監督は、どうしてステルスゲームを開発したかといえば、それはキャラを派手に戦わせる為には画面に多数の敵を表示しなければならないが、それが出来ないから見つからないようにして進んで行くゲームを開発した。このアイディアは、今のハードウェアが発達した時代であれば、ひょっとしたら出てこなかったアイディアかもしれない。
出来ないという制約の中で、何をすれば出来るのか、何が出来るのかを考えた結果、名作が生まれる事は多々ある。
昔のゲームタイトルは、そういう事を教えてくれる部分もある。
ぜひイマドキの人にも、そうした視点で見てもらいたいものである。

とりあえず、タイトーからもレトロゲーム筐体が発売される。
ナムコは依然として沈黙したままだが…そろそろ何か出しません?

 

 

 

 

 

 

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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2 Responses

  1. ruser より:

    メタルブラックが入ってるー!
    タイトー好きだったので、コレは惹かれる…けど、今のラインナップだけでは触s…食指は動かないですかね。
    でも、PS4のアーカイブス等に移植されていないサイバリオンとかはちょっと気になりますね。
    なんにせよ、「ゲームセンター」を知っている世代には刺さりそうですね。

    • アバター画像 武上 より:

      拡張セットが、もっと広範囲なタイトルをカバーしてくれると、この製品の魅力はグッと上がるんだけど、そもそも本体に収録されるタイトルの全てもまだ発表されていないので、本製品の魅力はまだ未知数ですね。
      ミッドナイトランディングとかトップランディングとか…大型筐体のゲームも欲しいけど、コイツに移植というのは筋違いか(爆)

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