錬金術という言葉をオカルト的に考えると、金以外の鉱物から金を作り出すという言葉になる。
これは、金は完全な金属であり、金以外のその他の金属は欠けているものがあるから金ではない…という考えから、その足りないものを補う事で他金属から金を作り出してしまおう、という夢のような技術を指している。
その補う物質の事をオリハルコンとか言うのだが…当然、これはオカルト的な話。
マトモに考えて錬金術という言葉を使うなら、それは金策という言葉に他ならない。
ところが、このオカルト的な錬金術という言葉と同義の事が、ある意味本当に行われそうな技術が今研究されている。
それがガソリン生成プロセスである。
2008年5月28日、米Sapphire Energyが世界で初めて藻からガソリンを精製する新技術を発表した。
これは日光と二酸化炭素、藻などの光合成微生物を利用する事で原油を産出し、オクタン価91(JIS規格ではレギュラーガソリンはオクタン価89以上と規定)のガソリンを精製するというものだ。
もちろんそのプロセスはあくまでも“画期的”と濁されているワケだが、バイオ燃料と呼ばれるトウモロコシによって作られる燃料が実際に存在している事を例にするならば、この技術によって生成できるとしても不思議ではない(もちろん立証されているハズではある)。
そして9月17日に、別プロセスによる原油生成技術が発表された。
米国立科学財団(NSF)が、2つの研究チームが農業廃棄物や非食用植物を由来とする砂糖の燃料への転換に成功したことを発表したのである。
2つの研究チームとはVirent Energy Systemsとウィスコンシン大学マディソン校の共同研究チームと、Dumesic laboratoryという研究チームだ。
両者ともに、砂糖と糖質を、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料などへと精製することに成功したというのである。
この研究の鍵となっているのが“aqueous phase reforming (水相改質)”と呼ばれる技術で、植物に由来する砂糖と糖質のスラリー(粉末状の固体と液体の混合物)を一連の“ある触媒”に通すと、炭素を内包した有機分子が分解され、原油から抽出されるものと同じ化合物を再形成するというのである。
藻から生成する技術もそうだが、この糖質から生成する技術も、まさに錬金術と言っても過言ではない技術だ。
化石燃料は何れ枯渇してなくなると言われているが、この2つの技術を基本としたプロセスでガソリンが生成する事ができるのであれば、それは枯渇する燃料という認識は覆されることになる。
たしかにガソリン車はエコに反しているという言い方ができるかもしれないが、ガソリン車が必ずしもクリーンではないとは言えない。
故本田宗一郎氏はガソリンの完全燃焼プロセスをずっと追い続けていたという。排気ガスをもっとクリーンにする事こそ、氏が長年研究してきたテーマであり、おそらく自動車業界が今もっとも必要としている技術のハズである。
バッテリーを搭載して電気自動車にする方向に流れているが、そもそも排気ガスがクリーンになれば電気自動車にする必要がない。
CO2問題がクリアされればガソリンを使用し続けても問題がないのだから、自動車メーカーは電気自動車を考える前にコッチの研究をして欲しいぐらいである。
電気を使うからエコ…という考え方は実はものすごく短絡的で、ではその電気を発電するためにエコでないプロセスを使用してしまったのなら、それは決してエコではないのである。
電気は太陽発電や風力発電があるため、比較的クリーンというイメージが強いが、未だ火力発電に頼っていて、原子力発電も環境に良いというものでもない。
また、完全燃焼プロセスを研究すると、ガソリンではなくディーゼルをクリーンエネルギーにする技術も併行する事になる。
電気自動車の開発に向かうより、ずっとエコではないかと思うのだが…。
何はともあれ、あと数十年もすればガソリンは枯渇する燃料というイメージは無くなるかもしれない。
バイオ燃料による食糧問題が今大きな問題になっているが、これら2つの技術によってそれらも解消されれば、今後の地球規模問題は収束に向かうかもしれない。
今後の技術開発に期待したい。
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